専門チームの責務は観点の民主化と実行のサービス化
ある企業で専門チームとして位置づけられている『デザインチーム』を例に考える
デザイニングのスキルやナレッジ、遂行のためのワークフローは専門的知見を必要とする
i. UIデザインの実装において、フロントエンド技術を理解しデザイニングツールを活用する ii. UIデザインの設計において、ユースケースと離脱ケースを把握し視覚原理を元に情報設計する iii. UXデザインの設計において、ユーザーに憑依し望ましい行動とプロダクト価値をアラインする デザインチーム内のみで知見を貯め頼られることで、いくつかの避けたいシナリオが発生する
a. 特定のリードデザイナーに実行スキル・暗黙知・任せられる業務が集中し属人性が高まる
b. デザイニングにおける普遍的観点を持たないメンバーからの依頼により、知見を必要としない業務に時間を取られる
c. b. の業務にリードデザイナー以外のリソースが奪われ、知見が新たに貯まらなくなりa. を助長する
UXデザインのような汎用的観点を、チーム外を含めた全関係者が把握できるようにする(観点の民主化)
業務遂行におけるデザインプロセスを、デザインチーム外が効率よく依頼できるようにする(実行のサービス化)
専門職(=専門的知見を必要とする職務)はバッドシナリオに陥りやすい
専門職の特徴は大きく3つある
①ベテランとジュニアで、個人のパフォーマンスおよび創出成果が大きく異なる(習熟曲線の非連続性)
②組織全体で、専門領域に対する共通の前提認識が一定ラインを担保されて初めてワークする(共通観点の必要性)
③知見が高度に詳細化/組織化され、ワークフローを知らなくてもアウトプットが保証される(プロセスの秘匿性)
3つの特徴がバッドシナリオを誘発する
①を満たすために知見を溜めスキルを磨くために時間をかけたいが、
②が満たされずチーム外の依頼者と調整にコストがかかり、スキルは溜まらないが調整だけがうまくなってしまい、
③を都合よく解釈したチーム外メンバーの「適当に頼めばよしなにやってくれるチームである」との認識が強化する
あるべき状態を達成するための漸進的改善ロードマップを設計する
徐々にグッドシナリオへ近づける
無駄な調整コミュニケーションが膨らみ妥協的な決断を促すコストを避けることで、専門職としてワークできる
https://netprotections.gyazo.com/aad797ee83e6a3bfe00a9e6038c3d218
「観点の民主化」と「実行のサービス化」により、直接的・間接的にパフォーマンスに貢献できる
https://netprotections.gyazo.com/c36d7da83800b682e41bfcc8153bd5e5
すぐに達成できるものではない
コミュニケーションコストを急に減らすことは難しく、組織の認識を変えつつ整備するには時間と労力がかかる
まずはコミュニケーターを専門チーム内外で増やす
内:知見を持ちつつ、スペシャリストとしてのプレイングより業務遂行上のアラインメントを優先する 専門チーム内から知見を必要としない業務を減らしつつ、専門チームへ依頼する機構へのエヴァンジェリストとなる 外:専門的観点を持ち、自身の業務へ当てはめて専門職を自律的に活用し、品質保証を徹底する 専門チームのワークフローを呼び出す側の責務を果たし、パフォーマンスにつなげるロールモデルとなる 徐々に成果と知見を広げ、生まれた余剰で「観点の民主化」と「実行のサービス化」を進める
成果を生んだプロセスを組織全体の形式知として展開し、生産性の高いコミュニケーションの再現性を高める 専門チームは知見の蓄積とスキルの発揮に時間をかけられ、組織全体は成果最大化の思考に時間をかけられるようになる
memo.icon「知見の蓄積」「スキルの発揮」そのものはかなり間接的な要因のため、明確な責務とは呼ばない
参考資料