読書記録「サラバ!」
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誰かが書いていたけれども、この世にAudibleがあってよかった!と思う作品。
読み終わって(正確には聴き終わって)、深い感動に浸っているけれども、これ、書籍という形で文字を追っていったら読めていただろうか不安である。
また、ナレーターが松坂桃李さんということが秀逸。人気若手俳優だからということではない。人気若手俳優であっても、もし、読み方や録音の仕方等がまずかったら、いや、Audibleという「声」だけで勝負しなければならないからこそ、批判の的になりやすい。しかし、とても素晴らしい声、表現力、これだけでも松坂桃李さんという俳優を好きになってしまいそう。
内容は、なんとも不思議な話。
主人公「歩」という男性の半生を丁寧に描く大河小説。
「歩」は歴史上の人物でもなんでもなくて、著者が考えた(であろう)一人の男性。あまり目立たなく、努力等をしなくてもそこそこに生きていける、美味しい生活をしていく(経済的に心配する必要がなく、外面的にもきれいな顔をしていて女性にモテる……など、羨ましい限り)わけだが、主人公を取り巻く家族がとても特徴的である。あくまでも地球の中心は自分であるという感じで生活していく母、それに輪をかけたような姉、家族全員を包み込む心を持ち続ける父。家族を客観的に見ながらも結局は努力せずなんとなく楽しい生活をしつづけられればいいという感じの主人公。
主人公を中心に、エピソードをその時に主人公がどのように感じてどのような行動をとったかを事細かく書いていく。
文章を読んでいたらたぶん途中に疲れ切って放り投げていただろうであろう作品を松坂桃李さんの素敵な声でドライブ中に聴き続けることができたからこそ最後まで聴き続けることができた作品。
後半部分は、主人公が谷底に落ちて、あれほどまでに自分だけでなく世の中の迷惑だと感じていた姉の言葉や振る舞いに助けられていく様子を描いていくさまはなんと言っていいのだろう。
たぶん、主人公の生き様が自分に共通点があるゆえに聴き続けることができた。
あまり努力せず、世の中をなんとなく自分の中で心地よい感じで生きていくことができないか……というところ。
さすがに主人公のような極端な家族や知り合いはいなかったけれども。ただ、この極端な家族や知り合いも主人公にとってこのように見えただけでわたしの周辺と変わりないかもしれない。わたしは、主人公と違ってあまり周りを見ないから。
こういう小説ってどうやって書いていくのだろう。自分に物語が憑依するのだろうか。
想像つかない。
感想を書いていて、Scrapboxに「西加奈子」さんのリンクが表示された。
そういえば、過去に西加奈子さんの本を読んでいたらしい。
そうだった、読んでいたのだった。
この本(「iアイ」)もめちゃくちゃ独特だった。わたしが過去に読んだ本には類を見ない内容であり、表現方法であった。
心が揺さぶられるというよりも、感情が、性が、ナマナマしいものが揺さぶられる感じ。
この原因はなんだろう。