読書感想「何者」
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購入:2013年12月15日 1,575円
読了:2013年12月15日
で、その健さんの話し相手に出てきたのが若手新進気鋭の哲学者、古市さん。彼の主張は誰もが心の底で思っているようなことをポーンと言ってくれる気持ち良さがある。また、パッと気づかないような問題解決案を提案してくれるのがいい。
もう一人が、朝井リョウさん。確かに何度か「桐島部活やめるんだってよ」というなんだか、小説のタイトルに似つかわしくない小説や映画名を聞いたことがあるが、このタイトルの響きからわたしの好みではないと勝手に判断していた。
しかし、佐藤健さんの友達ということを知っただけで、その瞬間、すごく気になる作家になってしまった。どうしようかと思いながら、すぐに、わたしが最近、すぐに検索する電子ブックストア「Book Live」で調べた。うれしいことに、電子本として販売されている。すぐに、購入。iPadに入れる。
日曜日、羽田までの新幹線の往復で読み切った。
読んだ本は「何者」。
読み終わる頃、「何者」というタイトルの理由がはっきりする。ただ、それ以外のところでも「自分は何者なのか、いや、何者でもない」というニュアンスの描写だったり、状況だったりが書かれてあるのでここでもタイトルが重なる。
この本は、就活の様子を描いた本だ。中心に描かれるのは4人。そこにその4人の周辺の人物も加わる。この就活に関する状況やら、あせりやら、それぞれの考えやら、人間関係やら、恋愛感情やらが交錯する。
まず単純なのが、自分の意思で就職するのかしないのか。就職は企業という自分の力でどうしようもないものに服従するのではないか。人生、そんなことをしていいのか。ライターだったり、歌手だったり、演劇だったり、もっと自由に創作できる人間であることはできないのか?これを選ぶ人間、選ばない人間。
就職するにしても、それに対する姿勢。それがさまざま。夢中にのめり込む人間。斜に構えていようとする者。これらの人間模様が、Twitterをうまく使って描写している。
人間の裏の気持ちをTwitterというツールを使ってあぶり出している手法はおもしろい。
人間は多かれ少なかれ、いろいろと裏表をかかえて生きているはず。だから、なんとなく主人公の気持ちがわかる。
この本の書き方がうまいのは、物語のほとんどを主人公の目線で書いていることだ。主人公の目線で書くということは、主人公の主観で書くということになる。これが、最後の最後、別の人間から見ていた主人公観がばくろされる。そうか、あたりまえだけど、誰から何を見るかで、見られ方、見え方が全く異なるのだということに気づいた。
これを面白いと思うか、別に…、だから…?と思うかは人それぞれだろうな。
書き手とは歳が離れており、若者との人間関係という部分に関してはよくわからないのだが、面白く読めた。もう1冊くらい手にしてみようかな。