読書「かがみの孤城」感想
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最近読む本といえば、「対話関係」だったり、「これからの教育」に目を向けたものばかりでしたが、久しぶりに小説を手に取ってしまい、不覚ながら一気に読んでしまいました。この時期にこんなことをしていいのでしょうか(苦笑)。 この本を読んだ経緯はちょっとしたことです。
今年、わたしの学部ゼミに入ってくれた学部2年の方と、ちょっとしたデータのやりとりでメールの交換をしたとき、わたしがメールの最後に、軽く下の一文をつけて送ってしまいました。 「〇〇さんは、読書が好きなんですってね。わたしも数少ない趣味の一つが読書なんです。いつか、機会あるときに読書談義ができるといいですね」
と書いたところ、その学生さんは、
「最近、読んだ本で面白かったのが〜」
と紹介してくれたのが、上の本だったのです。つい読んでしまった理由が下の3つです。
かわいい学部2年に勧められた本を読むことで、今後よりよいコミュニケーションをとりたいと思ったこと ※ ちなみに、わたし、読書のほとんどはKindleです。最初にKindleで出ているかどうかを調べて、出ていないときにしかたなく紙の本を買います。 いやあ、引き込まれました。わたしよりも若いので、当たり前ですけど、若い感性、若い設定なのですが、「若い方が書いた文学」という感じがします。鏡の向こうの世界と現実世界とをうまく混合して書いていく中で、主人公の心の動きをうまく表しているなあと思いました。
特に、わたし自身、教育にも関わっているので(著者の辻村深月さんは千葉大学教育学部出身らしいじゃないですか)、この話の中心となっている「学校に登校できなくなってしまった子どもたち」のあり方、そして、関係、そして、心の動きが、もうズドーンとわたしに飛び込んできました。ここには(このような小説によくあるとは思いますけれど)、学校に行けなくなっている子どもたちからの目線の「大人」の振る舞いを描写しているところが出てきます。「物わかりよくあろうとする大人」「とにかく目の前のことを都合良く収束させようとする大人」「表面だけ受け取って効率よく収束させようとする大人」などなど……。なんだか、自分自身の過去、そして、今(例えば、息子に対して行っていること)を指摘されているようで苦しいです。 最後の最後、7人の登場人物が絡み合わない感じでおかしいと感じ始める(つまり、パラレルワールドではないかと思い始める)ことに関しては、読みながら、ちょっとちょっと……一つ、重要なことをこの7人は確認し忘れているでしょう。どうして、そこを確認しないの?と思いながら読み進めていました。それが、ビンゴ!でちょっとスッキリはしましたが、まぁ、読者は自分が「たぶんこうだろう」と思ったものがそうだとわかるとうれしいわけで、途中、わたしがそういうようなことを思うだろうなぁということも、想定済みなのかもしれません。
人と人とが関わること、相手を思いやること、若者がどんな感覚で生きているのか、……のようなものに触れてみたい人にとっては、とてもいい本と思います。
この著者の本って、他にどんな感じのものがあるのでしょうか。あと、数冊、手にしてみたいと思いました。
後日、学生とこの本に関して盛り上がるのが楽しみです。