感想:東畑開人著「居るのはつらいよ〜ケアとセラピーについての覚書〜(医学書院,2019)
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本川良さんが書かれた読書感想()を知ってしまい、つい、Amazonにポチッとしてしまった本。 「大感動のスペクタル学術書!」
と書いてある。
小説仕立て、自伝仕立て、で「沖縄の精神科デイケア施設」の日常を語っていくが、その所々に、しっかりとその状況や背景、その時の考え方、に関して研究書、学術書等々の引用と解説があり、なるほどそういうことかと思ったり、自分の考え方と比較したりしながらわかり役読み進めることができる本。
「学術書」の定義まで深く踏み込むと私自身、わからなくなってしまうけれど、こうした「社会(世の中)」と「学術」をわかりやすくつなぐ方法として優れた書き方と思う。それなりの厚さがあり(347ページ)書かれている内容は重い内容であるが(書き方は、とっても軽く書くようにしていて重さを感じないようにしているところが、筆者の筆力があるということなのだろうけど)、さらりと読めてしまう。
「ケア」と「セラピー」の考え方や接し方の違い等々を、話の中心となる「デイケア施設」に出入りする人々とのエピソードを中心に書かれている。そして、最後の章はもう一つ一段大きな視座から「ケア」と「セラピー」を見る書き方をしている。
ものすごいなぁ。
最後の章は、文章の書き方は今までと同じではあるが、とんでもなく大きな「社会」とか「世の中の仕組み」のようなところに触れているので、ここを詳しく取り上げるとその前までの「人間臭さ」を前面に出した本書の別な魅力が伝わらないかもしれないが、最後に書いてあり、もしかしたらなんだかんだいって前の章までの個々のエピソードもここにつながっていくのであれば、ちょっと誤解をされてもいいかなぁと思って以下書いてみる。
どんな人間も生きる上で「ケア」が必要にもかかわらず、経済効果があまり期待されないケアは、貨幣経済、資本主義経済での価値観が変わらない限り、なかなか大変だということにこの本を読んでやっと気づいた。ここに最近はエビデンスがどの分野でも高らかに叫ばれている。難しいなぁ。エビデンスを語っていいところ、語るべきところ、エビデンスで語る必要のないところ、語らないほうがいいところ、いろいろとあると思う。
この本のような書き方ができることに、尊敬を覚えるが、教育関係でこういうものって書けないものかと思う。
「小説」だが、教師、授業、学力、学習集団というところで、内部のことをよく掴んで書いているなぁと思ったものに、石田衣良さんの「5年3組リョウタ組 (角川文庫)」がある。教師が子供たち集団を信頼し、任せることで子供たち一人ひとりの力がついていくこと、そして、それが当たり前になった時のちょっとした怖さも書いてあり、当時、よく書けているなぁと思って読んでいた。 学習集団を信頼し、任せてみることに興味関心ある、(特に)教師は一読してみたら良いのではないかと思う。
今回、本川良さんの読書感想に、とびついて読んでしまったわけだけど、わたしの興味関心のいくつかに「ケア」というものがあるのは確かなのだ。読んだけど、いまいち、内容がピンときていない本として以下がある。 わたしの読む力がないのだなぁと思いつつ、また、わたし自身の仕事や生活に何か直接結びついているのかと言われるとすぐに答えられるわけでもない。ここに興味関心があるわたしは、何を求めているのだろうか……。このあたり、自分の心に「ただ、いるだけ」の時間にでも尋ねてみたいと思った。