感想「火車」
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いつものように、Audibleで上越と実家(福島)の移動ドライブで聴いた。 片道4時間のドライブを苦痛に思わず、それなりに楽しく移動できているのは確実に、Audibleがあるからと言える。
それなりにどの作品も楽しんできたが、現時点(2019/11/14現在)でもしかしたら一番の作品がこれかなと思う。 わたし、宮部みゆきさんの作品は読んだことがなく、実は感想を書いていないが同じAudibleで「理由」を聴いたことが一度あるだけだった。「理由」はバブル景気に湧く日本を後の祭り的に描き出し、高層マンションをストーリーの象徴かつ中心に書いていく重厚な物語だったが、最後の最後、なんとな〜く、突然ポツンと終わったような感じがしてうーん。という感じだった(もちろん、悪い感想を持ったのではなく、とても印象に残る作品ではあるのだが、話の全てが見えてしまうと……それぞれの人物がとっても薄いように感じてしまわれたのだった。……なーんて。自分の人生も日々薄いくせにね) それに比べて、この「火車」。
いやぁ、すごかった。
随分前の作品なので、時代の切実感はもしかしたら、ちょっと薄れるのかもしれないけれど……。カード地獄、自己破産、これらをうまく絡ませて登場人物の人生をどんどん深堀りしていく。しかも、その中心人物の心や行動は全て「想像」でしか語ることができないしくみになっている……。なんとも、すごい作品だ。
今回新たに、今更ながらにAudibleのよさを発見してしまった。それは、ナレーターである。
この作品は俳優の三浦友和さんがずっと一人で読み聞かせ(ナレーション)してくれるのだが、これが実に良かった。
俳優=グッドナレーション
というわけではないのだろうけれど、とにかくすばらしい。主人公は休職中の刑事なのだが、その刑事と三浦友和さんの声がうまく重なってどんどん作品の中に引き込まれた。
お金に振り回される人生って……一体何なんだろう……
あんなそんなことを考える人に、おすすめの本である。