感想「天上の葦」上下
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熱しやすく冷めやすいわたしは,熱した時は,周りを見ずにのめり込みます。
これも,傑作でした。
よくぞ,「犯罪者(上・下)でも,「幻夏」,そして本書と,推理小説,犯罪小説の形を取りながら,社会思想や政治的なパッケージをうまく物語の1本の筋に絡みながら進められるものだと,感心(……というのは,上から目線ですね)というかなんと書けばいいのでしょうか,圧倒されます。 推理小説,事件小説,犯罪小説の形をとって,今の日本が戦時中の日本のような状態に向かっているのではないか?と警鐘を投げかけているように感じるストーリー。
(これ以上書くと,完全にネタバレになるのでこのあたりで止めておきます。)
現在と過去を行ったり来たりしながら,人の心の奥深いところをえぐり出していく手法は,「犯罪者(上・下)でも,「幻夏」でも見られた感じ。たぶん,この作者の得意とするところなのだろうと思う。この得意とする書き方が,存分に,過去の作品以上に効果的に使われたのが本書。ただし,このあたり(過去の描写を),興味深く読んだけれど,飽きる方,イメージできない方も多いかもしれない。もちろん,私だってどの程度イメージできるのかというと心もとないけれど。 推理小説には,珍しく,読んだあと,自分の生き方や考え方を正そうという心がけが働きそうになる本。