感想「ザリガニの鳴くところ」
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再生時間: 16 時間 52 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2020/05/15
言語: 日本語
せっかく、1コインで1作品を購入できるので、購入するのならできるだけ長い作品で、しかも、評価が高いものを購入するようにしている。
この作品は、ほぼ17時間の長時間であってそれなりに評価が高いということ、ナレーターが前回聴いたAudible作品で声の感覚が素敵だなと思った池澤春菜さんだということで、作品の内容もよさもわからないまま購入してみた。 どのように作品が展開していくのかをずっと気にしながら聴き進めることができ、飽きの来ない作品であった。
湿地で殺人なのかどうかわからない男の変死体が発見されるところから物語は始まる。これは推理小説なのかと思わせながら、時代を行き来しながら進む。過去に進むと本作品の主人公であるカイヤの話にフォーカスする。カイヤの登場は、自分の湿地にある「家」から母親が誰にも言わず黙って出ていく姿を窓から見送る場面から始まる。ここから、どんどんカイヤの家族、近くにいる人物はカイヤから離れていく。カイヤは文字が読めず数字も30以上の数を数えられない状態で湿地帯に一人で生きていく状態を描いていくわけだが……。
このカイヤの壮絶な成長していく物語と事件とが物語が進行していく中でシンクロしていく。
わたし自身、人と積極的に交流していくのが得意ではない。上手ではない。
そういう意味では、わたしの目からカイヤの考え方や行動を親近感を持って見つめることができた。もちろん、カイヤは自身が望んでそのような状態になったわけではないこと、わたしは、周りにたくさんの人がいて障害になるものや人はいなかったにもかかわらず自分から人に関わらないことというところでは随分距離があるけれども、結果的に「一人でいること」で安心感を覚えるところは一緒だ。
といいながら、人は本当の意味で一人では生きていくことはできない。
物を買ったり、売ったり、お世話になったり、お世話したりという「社会的つながり」はもちろんのこと、互いの考えを聞いてたり話したりする関係、会話がなくても近くにいてくれるだけで安心する……といった「生命的つながり」といっていいかどうか、つまり、生きていくのに必要な人ととの関わりがある。
カイヤもわたしも、少ないながらもこのような関わりは存在している。
わたしのような人間と日々関わってくれる友人、知人、がいるということで感謝である。
自分は、何の苦労も感じず、この歳(55歳)まで生きてくることができた。関わった人たち全てに感謝しつつ、自分は幸せものなんだなと思う。もちろん、わたしと日常的に関わってくれている家族に対して一番の感謝なのだけれども。
カイヤ……。
自分の一生をどう考えているか。
自分の生き方を問いながら、人生について、生き方について問い続けるのに素晴らしい本。