Audible版-凪良ゆう著「流浪の月」感想
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総合的なレビュー評価は高いけれど,少し読んでみると,べた褒めとこき下ろしが2分,まさに賛否両論の本である。
少女誘拐事件の本人(少女)と誘拐した人物(この人物はロリコンと思われている)とが大人になって再会し一緒に過ごすというストーリーである。
この紹介だけ読むと理解できな〜い!
という感じになるだろうけど,上の事件というか流れは彼女たち本人の視点を無視した第三者(外野)の視点であり,実際は誘拐事件当時の女性(当時9歳)は一緒に住んでいたいとこ(になるのかな?)に夜な夜な性的なイタズラをされており,その家(父は他界,母は捨てて出ていって,叔母の家に住んでいた)へ帰りたくなく,自分から誘拐した人物(当時19歳,大学生一人暮らし)へ彼の家に行くと言ってついていく……というものであった。
つまり,少女誘拐事件ではなく少女保護にあたるわけだけど……。
ここあたりがこの物語の核心で,一度きちんとした説明ができず(されず)「ロリコン野郎の少女誘拐事件」として立証,刑罰が決まってしまい,世の中にインターネット等デジタルタトゥーとしていつでも当時の様子に戻れる今,少女誘拐事件の当事者として周囲は見る。
だから,この2人が一緒にいる事自体,他者から見ると考えられないことで,「またなにかしでかすのではないか」「少女は洗脳されている」「ストックホルム症候群という症状があるんだよ」のような少女の近くにいる人間としては理解はしてくれないけれども「優しい声」をかけてくるわけだ……。
レビューを読むと,このあたりの設定はともかく,主人公の少女の態度にイライラするらしく,だったらもっとその都度その都度,もっとうまい対応の仕方,生き方があるだろう……と書いている人たちが一定数いる。
わたしも,読んでて(聞いてて)ここでちゃんと心の声を実際の声として出せばなんとかなるんじゃないか,とか,このときにどうして◯◯という行動を起こさないのだろうと思うところはある。
まぁね,でも,やっぱりそれって他人だからなんだと思う。
わたしは,このような事件に巻き込まれたことないけれど,ある事柄で,自分の心の中でああでもないこうでもない……といろいろと悩むことはあるし,それって,他の人はもっと簡単に解決してしまうのかなとか,他の人とわたしの考え方や対応の仕方って違うのかなとかいろいろと思ってしまう。
他人に対しては,そんなこと◯◯だよ,決まってるじゃんと言いながらだ。
難しいよね。
わたしとしては,この主人公たちの生き方考え方にイライラするかモヤモヤするかということ以上に,周りのほとんどがAだと思っている状態で,当事者たちがBだと思っていることの差異というか,とてつもなくどうしていいかわからない感じに興味関心を抱きつつ最後まで読んだ(聞いた)。
当事者双方が,ずっと同じような感覚を持っていたからこその,ラブストーリーを超えたラブストーリーになっているような感じだけど,ここの感覚がずれていたら本当に同しようもないな。レビューに少女漫画チックと書いていた人がいたけれど,この部分が少女漫画的なのかもしれない。