Audible感想「六人の嘘つきな大学生」浅倉秋成(著)
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ホームページで紹介されているあらすじを紹介すると以下になる。
ここにいる六人全員、とんでもないクズだった。
成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。
『教室が、ひとりになるまで』でミステリ界の話題をさらった浅倉秋成が仕掛ける、究極の心理戦。
特定の空間内で「言葉」で攻撃したり,防御したりするなどのちょっとした「密室劇」かなと思って聴いてみた。
結果,その構図を大きく超えるものであり,「小説」という形をとったからこそ,読者を騙すことができるような仕組みを取り入れるなど,いくつか読者をだますエピソードをいろいろと散りばめて,それらの伏線を最後に一気に回収するという読み手にとって非常に気持ち良いストーリーになっている。
それでいて,確かに人間ってそういう部分があるよなぁと読み手に納得させる仕組みにもなっていておもしろかった。
考えたこと,学んだことは大きく2つ。
以下である。
同じように見える出来事でも,見る人,見る角度,表現の仕方にとっては正反対の意味になる
最近ドラマなどでよく使われる言葉に,
「事実は一つ,真実は人の数だけある」
のような表現に出会う。
たしかにそう。
出来事の一部分を切り取り,どの角度から見るか,どの立場から見るか,どのように表現するか,場合によっては180度異なる「解釈」になるときがある。
おもしろい,そして,怖い。
当事者にとってはそのように受け取ってしまったことが真実なのだ。
わたしもある事象をわたしの真実として他の人と異なる解釈をしていること,たくさんあるのだろうなぁ。
善人,悪人について
完全な善人,完全な悪人はいない。(100%の善人,100%の悪人はいない)
24時間善人,24時間悪人はいない。
善と悪のように,2分割して考えることは極端だが,つまりは上のようなこと。
どんな人にとっても後ろめたいことはある。
また,自分に心当たりがなかったとしても「○○さん,あんなことしてたんだってぇ〜」と影で言われいるということを知ったら,「あんなこと」って自分は,「どんなこと」をしていたのだろう?と気になって仕方ないはずだ。
このあたりの
「だって人間だもの」
という部分をうまくこの本の主題に持ってきている。
小説をうなずきながら聴いてしまった。