Audible「悪人」感想
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そこで、何を聴くか迷っていました。長距離運転をするので、なるべく、長編がいいのです。このAudibleのシリーズに東野圭吾さんの作品がアップされれば迷わず書い続けるのですけどね…。本の電子化に反対の意思を表明している東野さんの本は、Audibleはおろか、kindleでも発表される気配は今のところ無しです…。うーん、残念。東野さんちゃんとお金を出して書いますので、KindleやAudibleでも出してくださいまし。 さて、そんなこんなでAudibleのHPをずっとスクロールして眺めていたら、この「悪人」を見つけました。再生時間も14時間58分となかなか長時間楽しめそう。そして、遠い記憶では、映画でも話題になっていたような気がする…。Audible的には、朗読者の一人が女優の「田中麗奈」さん(しかも、わたしは好きな女優さんの一人)ということで、1コインで購入。しばらく自動車の中で聴いていました。そして、この正月。福島から上越へ向かう中で、めでたく完読(ではなくて、完聴!)。 読書と異なって、聴くという行為は、スイッチを入れて流しておけば必ず「聴き終える」ことができるということは面白いですね。「読み進める」ことが苦手で、でも、何かしら必ずその内容を読み終わらせなければならない時は、この「本を聴く」というのはよい方法かもしれません。
さて、内容の感想です。
わたしとしては、大変感激しました。
こういうテーマで、こういう主人公や登場人物に焦点を当てて物語を書くことができるのってすごいです。
登場する人物一人一人に、しっかりとした生まれ育った背景やエピソードを用意して、それを物語の中で一つ一つ語っていく(紹介していく)のが興味深く感じました。これは、わたしがもともとそういう描かれ方をする小説や漫画、映画等がすきだからです。
そして、それぞれの登場人物のエピソードが(言い方悪いけれど)本当に、どうでもいいような、つまらない、(言葉が悪いけれど)アホくさい、こだわり、出来事、やりとり、思いつきが書いてあるのです。描写の仕方は笑い話的ではなく、淡々と、重い感じで語られていきます。これが、また、なんともいい。主人公も含めて、エピソードが描かれる登場人物、登場人物、全員がパッとしないわけです。登場人物視点に立てば、脇役の人生、パッとしない人生、裏道を歩いてきた人生、ついていない人生、残念な人生…でしょうか。
わたし自身、まぶしく感じる人たちがいて、自分って本当にどうしようもないなぁと思う時大です。とはいっても、ここに登場する登場人物ほどの、人物ではないだろうと思っている(思いたい)ですけどね。
他者を見る時、自分よりも光が当たっていたり、成功者だったり、あこがれの人だったりに目線が行ってしまいます(これ、わたしだけでしょうか?)。でも、(これ、上から目線的な言い方になってしまいますか?)わたしがあまり考えたことのない状況を設定して、人の心の内面を描いてくれているこの作品はズドーンと心に残りました。
ありきたりな言葉で書いてしまうと、人はそれぞれに悩みを抱いて生きているということなのですけどね(あー、ありきたりすぎる)。
それぞれに、救えなくて、どうしようもなくて…。結局は「自分の中の納得」で生きていくしかないのかなぁなんて感じるわけです。