Audible感想@吉川英梨著「雨に消えた向日葵」
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再生時間: 12 時間 22 分
Amazonのレビューで以下が目に飛び込んできた。
高村薫の警察小説を超えるようなストーリーだった。恐らく、警察活動、捜査活動というのは、こういった地味で、市井の人々ではおよそ思いもつかないようなところに端緒を見出し、地味で針の穴を通すような膨大な作業を通じて為しえるのだろうと思う。全国にいる奈良刑事さんと奈良刑事さんを支える家族や同僚等の警察の役職員の地道で慈愛のある活動が、我が国の治安を支えているのだなと思える。
Audibleで次に何を聞こうかなと迷っていたところ,このレビューを読んで,この作品を読むことに決めた。
わたしとしては,貪るように聴き,とてもよい作品だと思ったのだが,Audibleには下のようなレビューもあった。
謎解きもないし、般若の心理を深掘りするでもなく、どんでん返しもない。
実際の事件のルポであれば問題ない内容だが、フィクションでここまで平坦な筋立てで語る意味が分からない。
著書の名前からすると女性の作家なのかと思うが、被害者の少女の心情も描けていない。
無駄なエピソードの挿入も多く完成度があまりにも低い。まだまだ伸びしろのある作家だと思った。
なるほど,と思う。
上のレビューは評価が極端だが,作品を聴いた後は,どちらの言いたいこともわかる。
あとは,その人々の求める作品であり,感覚であり,感性なのだと思う。
わたしとしては,最初のレビューワーの感覚に近い。
それぞれの登場人物の,読んでいくとあらわれるような「強い関係性(絆やしがらみ)」や「意外な関係性(絆やしがらみ)」はない。こういうものがあって,よりドラマチックになるのだろうと思う。
しかし,あまりにもそれが強かったりすると,「そんなことありますかねぇ,ふつう……」と興ざめしてしまうところがある。このあたりの興ざめしない程度にうまく意外性等々を持ってくるところが一流作家の腕の見せ所なのかもしれない。
しかし,とはいっても,この「うまくいきすぎる,うんぬんかんぬん」に疲れてしまっている自分もいる。
そういう意味では,この作品,一番上のレビューアーが書かれているような,事件が起きたときの警察の,当事者の日常を淡々と書き記したような作品(とはいっても,小説なのでなんだかんだと盛られていたり,創作されているところがあるだろうが)がいい感じだった。
一つ,主人公の刑事(埼玉の奈良さん)の家族の背景と事件とにドラマ性をもたせたのだろうけれど,そういうエピソードもあっていいのかな。