Audible感想「正欲」
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再生時間: 13 時間 35 分
完全版 オーディオブック
感想記録
「多様性」をキーワードにした,問題作!?または意欲作!?
わたしは,(わたし目線でしか考えられないけれど)どの立場の人にも,しっかり受け取る気持ちで読めば「刺さる作品」なのではないかと感じた。
「謎解き」っぽい要素も含みながらも,「多様性を認めようとする人」「多様性ってなんだと思う人」「多様性で苦しむ人」「多様性にわかったつもりになっている人」「多様性が……」多様性にまつわるいろんな立場,考えの人からの考えや意見を吸い上げてストーリーにうまく組み込んでいるように感じた。
「多様性」って難しい。
というか,「一つのこと」をつきつめるって難しい。
「公平」などにも言えることなんだけど。
例えば,各自の状況を受け止め,受け入れることが公平の入口だと思う。ある人は8mmマスで文字を書いていくことができるとしてある人は20mmマスで書いていくことが適している。1分間に100文字書くことができる人がいるとして,がんばって1分間に50文字書くことができる人がいる。各々を受け入れると,「公平」というところを受け入れない人から「それは不平等だ」ということになる。
まわりが「公平」と思わなければ公平にならない。
そして,もちろん,1分間に50文字書くことは「がんばって」なのか「怠けて」なのかの区別も簡単なときもあれば難しいときもある……。
笑っちゃうのが,
平和主義を暴力的行為で推し進めようとすること
「いろんな意見が大切だから」と言っておいて,「いろんな意見に反対する意見」を否定すること。この「いろんな意見に反対する意見」も「いろんな意見の一つ」なんだけどね
でもでも,物事を進めようとする場合,困ることもあるわけで……。
なかなかに,わたしの立ち位置や心をえぐる本だった。
あらすじ・解説
第19回 本屋大賞ノミネート!
【第34回柴田錬三郎賞受賞作】
あってはならない感情なんて、この世にない。
それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ。
息子が不登校になった検事・啓喜。
初めての恋に気づいた女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。
しかしその繋がりは、"多様性を尊重する時代"にとって、
ひどく不都合なものだった――。
「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、
そりゃ気持ちいいよな」
これは共感を呼ぶ傑作か?
目を背けたくなる問題作か?
作家生活10周年記念作品・黒版。
あなたの想像力の外側を行く、気迫の書下ろし長篇。
©朝井リョウ/新潮社 (P)2022 Audible, Inc.