《ghostweaver》
永井歩
本作品は上映毎に遠隔地にある本物の量子コンピューターを用いて計算を行い、その結果によってシーンが分岐する、新しい形のインタラクティブ・フィクションです。
普通のコンピューターが扱うデータの最小単位をビットといい、必ず0か1の値をとります。それに対して量子ビットは、0と1が同時に存在する重ね合わせの状態を取ることができ、「観測」を行うことによって0か1のどちらかに決定されます。
量子力学には「なぜ私たちが観測する現実は、量子力学が予測する確率的な重ね合わせではなく、特定の一つの結果として現れるのか?」という問題があります。これに対して「結果が一つに収縮するのではなく、全ての可能な結果がそれぞれの世界で実現する」と考えるのが、多世界解釈です。
観測のたびに無数に分岐する世界の構造を模倣することによって、量子的な不確定性を内包する体験を設計し、現実の在り方について問いかけます。