税金はなぜ必要なのか?
政府が好きなだけ通貨発行できるのであれば、なぜ税金を集める必要があるのだろうか?
そう考えると、実は答えは「インフレを防ぐため」しか存在しない。
「放漫財政を防ぐ」ということが言われるが、いくらでも通貨を発行して使って問題ないのであれば、使えばいいだけである。
実際にはそうすると通貨が市場にあふれて、通貨価値が下がりインフレになることが予想されるので、その歯止めがどこかに必要という話である。
実際には、さらに、貧富格差是正(再分配。金持ちになりすぎた人から税金でその権限を減らす)と、インセンティブ形成(やって欲しくないことに税金を掛ける)という役割が税金に与えられるだろう。
江戸時代などでは、税は物納が中心だった。この税は、役人の食料の確保、非常時の備蓄として扱われたものと考えられる。
この当時は経済規模が小さいのと、供給力が小さかったために、通貨を大量に発行すると、通貨価値が落ちやすかったと考えられる。
また、通貨は金や銀などの貴金属によるものになっていて、安易に増やすことができなかった。(通貨の資源価値≒通貨価値、商品通貨)
時々行われた改鋳により、通貨の資源価値を落として、通貨を増やして通貨発行益を出して対処をしていた。
現代では、金貨、銀貨のようなものに対して、兌換紙幣(金と交換可能として発行された紙幣)が使われるようになったが、発行量が増えすぎて、実際に所有する金の量より遥かに多くなってしまい、金の裏付けという意味を失ってしまった。(全員が金と交換しようとしても金が足りない)
これにより、金本位制が崩壊して一時期はパニックになったようだが、結局の所、通貨の発行量と十分な資源との間で価値が維持されてしまっているというのが現実で、通貨が無価値になるわけではなかった。
このため、現在のほとんどの国では管理通貨制度(政府が通貨の発行量を管理する)が採用されている。
この場合、「通貨の資源価値(生産費用)<<通貨価値」という関係になるので、その差額が通貨発行益として計算可能になる。電子化された現代では、台帳に書くだけのため、通貨の生産費用はほぼ0に等しい。
理屈では、この通貨発行益を使えば無限に通貨が発行できることになる。(実際には資源が不足することと、インフレが発生するために困難。)
通貨になぜ価値が付いているのか、その価値はどこで決まるのか、は諸説ある。
しかし、通貨の主要な使われ方を考えると、賃金(労働価値)と物に対する需給の釣り合いで決定される物価が通貨価値を決めていると考えるのが妥当であろう。
「中央銀行が通貨で購入した資産が通貨価値の裏付け」という説があるが、おそらく間違い。
(会計上、そう見えてしまうというだけの話と考えられる。そもそもその資産の「価値」はどうして決まるのか?)
税金として通貨での支払いが義務づけられているので、通貨価値が生まれるという説がある。ただ、そもそも税金の「値段」は市場での賃金水準、物価から決定されているわけで、主従が逆だと考えられる。
通貨を大量に発行して、その通貨が市場に出回るようになると、その通貨が需要を作り出していく。
金融市場に行ってしまうと、何らかの金融商品の値段が吊り上がって、誰かの口座にお金が入るだけ、ということになるが、それ以外の実需に向かう量はそれなりに存在するはずである。
(金融市場から実需への振り替えもある程度存在するはずである。逆も同様。どちらの方に流れるかは、何によって決定されるだろうか?)