猫じゃ猫じゃ
所収:北村薫=編『謎の部屋──謎のギャラリー』(ちくま文庫) そして、三木と云う名前の連想だけで、彼がその話を思い浮かべたのなら、「猫じゃ猫じゃ」の話は、黒田殺害の方法と密着しなかったかも知れない。重要なのは、三木草茂氏が探偵小説の大家で、同時に医学を研究する大学教授だという事実だった。探偵小説家という事が、先ず暗中模索する彼の犯罪計画と結びつき、その計画は大学教授森茂博士と結びついて、いよいよ信憑性を得た。
汚職に手を染めていた銀行の支店長は、とある奸計に嵌って窮地に陥る。逆転を目論んだ彼は、黒幕と思われる人物の殺害を決意するが。
松本清張やその辺りの、社会人のリアルな汚職を題材にした倒叙ミステリ──と思って読み進めると、だんだん、あれれ、となる。
真面目に書いてしまうからこそ笑える黒いユーモア。
「黒田」と「黒幕」と云った連想の積み重ねが無茶な犯罪実行を導き、結末に繋がる。