夕暮れの屋上で
所収:『記憶の中の誘拐――赤い博物館』(文春文庫)
「わたし、先輩のことが好きなんです。ずっと、ずっと一緒にいたいんです。だめでしょうか」
卒業式前日。屋上の告白は、殺人と云う結末に至った。彼女は誰に告白しようとしていたのか?
スマートにして大胆な犯人当て。手練れなら犯人を見抜けるだろうけれど、犯人だけ当てられても痛くも痒くもないと云わんばかりに、構図の転換がパキッと決まったあとに導かれる限定条件のユニークな魅力はなお褪せない。
心理の軽重と云うか、犯人の人物像だけ分厚すぎる点は気にならないではない。