冬のオペラ
北村薫
所収:『冬のオペラ』(角川文庫)
「最後に──握手していただけますか」
先生はゆっくりと答えた。
「いや、それは止めておきましょう。──わたしは探偵で、あなたは犯人です」
《名探偵》巫弓彦と彼の記録者を務める姫宮とが遭遇する事件──その連作の最後を飾るのが中篇「冬のオペラ」。
巫は、名探偵とは《存在であり意志》だと云う。彼はただ推理によって犯人を云い当てるのではない。彼には見えてしまうのだ──真実が。
犯人は《鬼》と形容される。しかしそれを云うなら、探偵もまた《鬼》だろう。