アナモルフォーシス
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定義
特定の視点や器具(鏡など)を通して見たときにだけ正しい像に見えるよう、意図的に歪めて描かれた図像、およびその技法。 語源はギリシャ語の ana(再び)+ morphē(形)で「形を作り直す/再形成」。
用語「anamorphosis」の初出はイエズス会士 Gaspar Schott(1608–1666)の『Magia universalis』(1657–59)とされる。技法そのものはそれ以前から存在し、名が後から与えられた。
2つの型
遠近法的(斜投影/oblique):画面を極端な斜め方向から見ると像が立ち上がる。遠近法の応用。 鏡像的(catoptric):平面上の歪んだ像を円筒鏡・円錐鏡に映すと正しく見える。
ニセロンはさらに optical(水平に見る)/anoptric(見上げる)/catoptric(鏡)に分類した。
歴史
デューラーの弟子 Erhard Schön が16世紀前半のニュルンベルクで精緻な作例を制作。
Minim会修道士で数学者の Jean-François Niceron が『La Perspective curieuse』(1638)で理論を体系化。印刷物として最初の本格的論考。
17世紀には宗教的含意が薄れ「科学的な驚異/余興」として流行。イエズス会経由で清の康熙帝にも伝わった(1669–1685)。
思想的な射程
ジャック・ラカンは《大使たち》の骸骨を「まなざし」「対象a」の例として論じた(セミネール11)。像が成立する「正しい視点」がただ一点に限定される=見る主体の位置そのものが問われる、という点が核心。 見る者が特定の一点に立たない限り像が結ばない。つまり「見ること」は受動的な受容ではなく、位置と身体に依存する能動的な行為だと露わにする技法でもある。
現代の展開
Georges Rousse、Julian Beever(路上3Dチョークアート)、Edgar Müller。
道路の路面標示(自転車マーク・徐行表示など):低い運転視点で正しく読めるよう縦に引き伸ばした実用アナモルフォーシス。
日本では福田繁雄が影や集積オブジェを使ったアナモルフォーシス的作品を手がけた。 用語の注意:映画の「アナモルフィック」
撮影用語のアナモルフィックレンズ(シネマスコープ等)は、横方向を光学的に圧縮して撮り、上映時に引き伸ばして戻す方式。語源は同じだが、視点依存の歪像である上記の美術技法とは別系統の用法。混同しないこと。 出典