マーガレット・ハミルトン
NASAの技術者で、「ソフトウェア工学」という概念の発明者
AGC(アポロ誘導コンピュータ)のソフトウェア開発チームのリーダーをつとめ、アポロを月まで導いた
幼い娘のローレンを毎日職場(そう、NASAだよ)に連れてきていた
ハミルトンがコードを書いている最中、ローレンはオフィスに転がっていたDSKY(AGCのディスプレイとキーボード)で遊んでいた
ローレンはたまたま通常ではありえない手順でプログラムを起動して、AGCをクラッシュさせた
これは訓練された宇宙飛行士であれば絶対にとらないとされている手順だった
これを見たハミルトンは「エラー処理」という概念を思いつき、アポロ宇宙船の安全性を高められると上層部に提案した
提案は却下されたが、アポロ8号のミッションの最中に船長のジム・ラヴェルが誤ってプログラムを起動し、AGCは深刻なエラーに陥り、ハミルトンの想定が正しかったことが明らかになった
しかし「こんなきともあろうかと」準備していたハミルトンらは、飛行中のAGCを地上から復旧することに成功した
この一連の母娘エピソードは、エリクトがルブリスを起動したシーンに通じるものがある もう少しマニアックな読み解き(ページわけたほうがいいかも)
映画「アポロ13」を観るとわかるように、当時の宇宙飛行士というのは空軍のテストパイロット出身の「男の中の男」だった
彼らはミスをしない
当時の飛行機や宇宙船は大量の計器やスイッチが並び、それらを「ミスをしない」「男の中の男」が「完璧に支配する」ことを前提にしていた
以下「完璧な男」とする
一方で、大気中を飛ぶどんな航空機よりも複雑な操縦が必要なアポロ宇宙船では、世界初の「フライバイワイヤ」が採用されていた
操縦桿と舵(スラスタ)の間にAGCが介在し、人間の操縦をサポートする
つまりAGCはただの航法コンピュータではなく、制御コンピュータでもあった
ハミルトンは、「AGCが人間の飛行士と「対話」し、人間のミスをカヴァーする」という可能性に気付いていた
これは「ミスをしない完璧な男が機械を完全に支配する」という価値観からすると異端な発想だった
しかし、アポロ計画のような困難なミッションの中では、「完璧な男」のひとりであるジム・ラヴェルもミスを犯した
現在では、「人間はミスを犯すし、コンピュータはそれをカヴァーできる」は、あらゆるメカトロニクス製品の設計で採用される価値観になっている
「フライバイワイヤ」も現代の戦闘機や旅客機で当たり前に採用される技術となった
「計画」とそれを完璧にこなす「完璧な男」に支配される「下僕としての機械」から、「少し自分で考えて、人間と対話し、人間とともに歩む機械」への人間-機械観の転換の背景には、ハミルトンやサッチマンら「魔女」たちの隠れた活躍があったのではないか?
スレッタのエアリアルに対する接し方(エアリアルは家族です, 対話しながらの操縦など)は「魔女」のスタンスそのものだと言えるかも?
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