相対主義
絶対的な真理、知識、価値は存在せず、すべての事柄は、それが語られる特定の文脈(文化、歴史、言語、個人など)との関係においてのみ意味を持つ、とする思想的立場。
「〜に対して相対的(relative to)」という形をとるのが特徴。
相対主義いろいろ
認識論的相対主義
真理や知識が、文化や言語、あるいは理論的枠組みに相対的であると考える。
例えば、クーンのパラダイム論。
科学的真理が、その時代の支配的な科学の枠組み(パラダイム)に相対的であることを示唆しました。
文化的相対主義
文化的な慣習や価値観に絶対的な優劣はなく、それぞれの文化の文脈の中で理解・評価されるべきだとする考えです。文化人類学の基本的な姿勢の一つです。
道徳的相対主義
「善」や「正しさ」といった道徳的価値が、文化や個人の信念に相対的であると考える立場です。
魅力と危険
相対主義は魅力がある。
他者や他文化への寛容さを促し、自らの立場を絶対視する独善(エスノセントリズム)、西洋中心主義を戒める、批判的な視点を提供します。
日本も、他のアジア諸国に対してオリエンタリズム(サイード)の持ちがちである点は注意せねばならないでしょう(その方角はthe Orientではありませんが)。
相対主義は危険。
「何でもあり anything goes」という結論に陥りやすい点に注意が必要です。
例えば「あの文化圏では人権侵害が『文化』だから、それはそれで良い」といった、外部からの倫理的批判や、普遍的な基準に基づく対話を不可能にしてしまう危険性を孕んでいます。
また、「全ての真理は相対的である」という主張自体が、それ自体を絶対的な真理として主張してしまっている、という自己矛盾の批判に常に晒されます。