ロトクラシー
Lottocracy
「くじ引き(抽選)」によって無作為に選出する統治システムのこと。
「くじ引き民主主義」とも訳される。
政治的な役職や意思決定の参加者を、選挙や能力評価にってだけ選出しない考え方。
歴史的起源は、古代アテナイの民主政
ロトクラシーの最も有名な歴史的実践例は、古代アテナイの民主政。
アテナイでは、民会の運営を行う「五百人評議会」のメンバーや、民衆裁判所の陪審員など、多くの公職者が市民の中からくじ引きで選ばれていました。
その目的は、一部の富裕層やエリート、あるいは弁論術に長けた人物が権力を独占することを防ぎ、全ての市民に政治参加の機会を平等に与えるため。
現代の政治理論において、ロトクラシーは、選挙を基盤とする代議制民主主義が抱える問題への対案として、再び注目を集めています。
政治的平等を実現するために
専門家や政治家ではない、ごく普通の人々の声を政治に反映させる。
党派性を克服する
選挙運動や政党間の対立から距離を置き、より中立的な議論の基盤を作る。
腐敗を防ぐ
買収や縁故主義といった、選挙に伴う腐敗のリスクに抗う。
世界各地で近年行われている気候市民会議などは、このロトクラシーの理念を応用し、一般市民の中から無作為抽出で選ばれたメンバーが、専門家の助言を得ながら重要な政策課題を議論する、という形で実践されています。
層化抽出 sortition
ロトクラシーは、「誰が最も統治にふさわしいか」という能力主義的な問いを、「いかにして市民の政治的平等を制度的に保障するか」という問いへと転換させる、ラディカルな民主主義の思想といえます。