ハイパーリアル
「本物よりもリアルなもの」という意味。
ハイパーリアルとは、もはや起源や現実との対応物を持たない、純粋なシミュレーションによって生み出された「現実」のこと。
現代社会は、オリジナル(現実)とそのコピー(イメージ)という区別が失われ、このハイパーリアルに覆い尽くされている、というのがボードリヤールの指摘でした。
シミュレーションの4つの段階
ボードリヤールは、イメージ(記号)と現実の関係が、歴史的に以下の4つの段階を経て変化してきたと論じます。 1. 忠実なコピーの段階
イメージは、紛れもない現実(オリジナル)を忠実に反映する「模倣」である。 例:写実的な肖像画
2. 現実を歪める段階
イメージは、現実を隠蔽し、歪めて表現するようになる。
3. 現実の不在を隠す段階
イメージは、もはや対応する現実が存在しないという事実を隠蔽する。
4. イメージそれ自体の現実(ハイパーリアル)の段階
最終的に、イメージは現実とのいかなる関係も断ち切り、それ自体が純粋な現実(シミュラークル)として機能し始める。私たちは、このモデル(シミュラークル)の方を、現実よりも「リアルなもの」として経験するようになる。 これがハイパーリアル。
シミュラークルとはフランス語で「まがいもの」「模造品」の意味です。
ハイパーリアルという概念は、メディアや情報、消費社会が私たちの現実認識をどのように作り変えているかを鋭く暴き出しました。 私たちは、ニュース映像やSNSで流通する「事件のイメージ」を、現実の事件そのものよりもリアルなものとして体験することが時にあります。 あるいは、広告が作り出す「理想のライフスタイル」のイメージを、現実の生活のモデルとして追い求めがちです。
「事件のイメージ」も「理想のライフスタイル」も、オリジナルのない実体(他の影響を受けず、それ自体で存在する)。この実体について想像するとき、私たちは「シミュレーション」することになるわけです。