対比の暗示
【制限用法と非制限用法】
制限用法は対比を暗示する。「〜する方の」
Mr. Parker has two daughters who work for a bank
「パーカー氏には銀行勤めをしている方の娘さんが二人います」
非制限用法は対比の暗示はない。非制限用法は先行詞の名詞を補足説明しているに過ぎない。
Mr. Parker has two daughters, who work for a bank
「パーカー氏には娘さんが二人いて、ふたりとも銀行に勤めています」
日本訳文に対比を感じられるかどうかで英訳し分ける。
先行詞が固有名詞の時、関係詞の前のカンマは絶対に必要となる。固有名詞はこの世に1つしか存在しないものであり、対比概念はないためである。
The other day, I visited Kyoto, which was the capital of Japan for about 1000 years.
【限定用法の形容詞】
限定用法の形容詞は対比を暗示する。
形容詞が名詞の直接修飾する用法を限定用法と呼ぶ。
「白い雪」→「雪」はすべて白いのであって、「黒い雪」など無いからである。
対比概念がないものに関しては、限定用法は存在しないことになる
限定用法と呼ばれるものは、基本的には対比概念があるときに使う。
叙述用法の形容詞は単に主語や目的語を説明するだけで、対比概念までは暗示しない。
名詞を修飾せずに文法的に補語の役割をしている形容詞を叙述用法と呼ぶ。
【文末の副詞句】
文末の副詞句は通常、対比を暗示する。
「人でいっぱいだ」→The train is filled with people.とすると、be filled withとbe full ofは人間ではなく物でなければおかしい。ので×。
be crowded withはそもそも「人でいっぱいだ」という意味になるので、with peopleを付ける必要がない。敢えて付けてしまうと、「猿ではなく人間でいっぱいだ」という意味になりかねない。
仮にwith peopleと付けるとしたら、それは修飾語を伴い場合。The train was crowded with people who are going back to their hometown.
「人として恥ずかしいことをする」→do something wrong as a human beingとすると、「猿としてではなく、人として恥ずかしいことをする」という意味になってしまうので、「人として」は訳さない方が良い。
教訓:日本語と英語は常に1対1で対応するわけではなく、日本語に書いてあることを全て英語にすれば良いというものではない。
【It is ~ that ...の対比構文】
It is 〜 that...の構文を用いる一番の意義は「対比」することにある。
正確にはIt is not A but B that...の形を取り、「...なのはAではなくBだ」を表す。つまり、AとBを対比したいのだ。
It is 〜 that ...の構文の〜の部分には、どちらかと言うと旧情報である場合が多い。直前の文で〜のことに触れている場合がほとんど。
It is 〜 that...の〜が1つだけで、対比の語など欠かれていない場合もあるが、それは文脈上わかるから省略されているか、「他の何物でもなく〜」と言いたいときである。
対比を表す構文は他にもあり「What ... is not A but B」がその1つ。
情報構造的には新情報は文末に来るので、AとBの部分に焦点を当てたいのであれば、この構文が適切と言える。
【一般に人】
英語でweと言うとき、theyという言葉の対比概念として使っていることを認識しておく。
「我々は病気になって初めて健康のありがたみを知る」の「我々」をweで訳してしまうと、「あいつら(they)は病気になってもありがたみがわからない」といった意味になってしまう。
「我々vs我々以外」の構図を感じさせたくなければ、youを用いるべきである。
これが一般に「人」を表す「you」である。
ただし、「人」を表すyouも万能ではなく、特に You should/ must/ will〜という文で使うときは、特定の「あなた」の意味になることが多い。
weが使えるのは対比概念が存在するとき。
主に「人間(⇄動物)」、「現代人(⇄昔の人)」、「我々日本人(⇄日本人以外の外国人)」の3つ。