世界便
世界便〈セグメント〉
淡く虹色に光る封筒と便せん。連絡手段を越えて現実改変手段の域にまで達した此岸の手紙。 此岸は身体のどこかに数えきれないほどの封筒・便せんを収納している(この収納が世界便そのものの効果に基づいた収納なのか、世界便とは別の【仮称】よくある収納スキルに基づいているものなのかは不明)。この便せんに此岸が文章を書き、身近にある物体に向けて投擲、あるいは封筒に入れて異世界に送付することによって、世界便の効果が発動する。便せんを投擲された物体は事実として便せんに書かれた通りの特性を持つようになり、手紙が届いた世界では便せんに書かれた内容がすべて事実となる。ここで、『便せんに書かれた内容が事実となる』といっているのは、ただ客観的に事実であるだけでなく、便せんに書かれた内容に触れた人間が事実であることを疑うことすらできなくなるということを意味している。つまり、世界便の便せんに書かれた文章は誤りを絶対に含まず、なおかつ誤読や無視をされる可能性もないということになる。 世界便が持つ以上のような効果は、世界を構成している命題を直接書き換える効果であるとも言い換えられる。ユニークスキルとしての真の名前は命題切片〈プロポジションセグメント〉。本質開示定型文は第50話。
そもそも、ある一つの世界とは、それが真であるような命題の集合としてもとらえられる。例えば、この現実世界で真であるような命題……『2024年現在、日本の首都は東京である』とか『坂本龍馬は幕末期に生きた人物である』とか『2024年現在フランスは共和制である』とかいった命題を余さずすべて集めれば、その集合は我々が暮らすこの現実世界そのものと完全に対応する。ある意味では、命題の集合が世界であるといってもいい。
世界便の投擲や送付によって行われるのは、このように世界を構成している命題の一部を直接書き換えるという行為である。そのため、正確には、世界便に書かれた内容に応じて非-事実が事実へと変化するのではなく、世界便に書かれた内容が“事実とはいかなる状態か”を決定するのである。
ただ、命題を書き換えるというその発動機構のために世界便が不得手としているタイプの現実改変もある。例として、能力者である此岸自身を異世界転移させる類の現実改変は『此岸がある特定の世界に存在している』といった命題を書き換える必要があるため、非常に難しい。
なお、此岸が具体的にはどのような手続きによって世界便を異世界へと送付しているのかは不明。また、送付先として任意の異世界を選択できるのか、送付先に制限があるのかは不明。