他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論
概要
物語、つまりその語りを生み出す「解釈の枠組み」のこと
立場、役割、専門性によって生まれる
専門性、職業倫理、組織文化など
譲れないこと、大切にしていること
「べき」論
新しい関係を構築すること
一対一に思える対話のプロセスは、実は、関係性に働きかける行為であるということがお分かりいただけると思います。
したがって、相手をよく観察することは、相手の埋め込まれている関係性を理解するということを意味します。そして、それを解釈して介入するということは、関係性へ介入するということを意味するのです。
よいところ
また対話のよいところは、権限がない人でも取り組めるということです。私は軽戦略論や組織論を専門に研究していますが、多くの研究から見いだされる知見は、権限がないとなかなかできないものであることが多いです。
しかし、対話は権限がなくても、自分のナラティブを一度脇に置いて、観察ー解釈ー介入を地道にまわしていくことによって可能です。様々な観点から見て、対話の実践は有用であり、かつ、実現性の高い取り組みなのです。
対話の罠
気づくと迎合になっている
忖度している
橋を渡ったまま帰ってこない
それは、私たちが何を守るために、何を大切にしていくために、対話に挑んでいるのかを問い直すことによって可能になると私は革新しています。私達は、何者なのでしょうか。何のために頑張っているのでしょうか。そのことを見定めることによって、私たちは、困難の前にあって、常に挫かれ、改められることが必然である暫定的な理想を掲げ続け、歩むことが出来るはずです。
信頼出来る仲間と取り組む
孤独を大切にするためには、決して孤立してはならない
相手への押しつけになっている
押し付けない
相手との馴れ合いになる
橋が掛かった相手との間には、非常に強い結束が出来る一方で、その結果として、かえってこの関係性を大切にしたいという思いが必ず生じます。
つまり、この関係性を維持すべく、言いたいことが言えない「抑圧型」の適応課題が生じることを意味します。これは、ある意味で、とてもよい関係が気づけたことの裏返してもあるために、難しい問題でもあります。しかしはたと立ち止まると違和感が残ることはあるはずです。
他の集団から孤立する
うまくいっているように見えるがチーム外との溝を感じる
内部にも実は溝がある場合が多い
結果が出ずに徒労感に支配される
逃げるが勝ち
「私とそれ」
道具的な関係
「私とあなた」
固有の関係
私とは「私と私の環境」
対話とは結局、個人間の人間関係に終止してしまうのではないかと思った方もいるかもしれません。
これは哲学者オルテガ・イ・ガセットが示した考えで、個人とは「個人と個人の環境」によって作られているということに気付くと、理解がしやすいでしょう。つまり、「私」や「あなた(他者)」とは、果たして一対一の人間なのか、といことです。 越境
近年、越境が注目されるのも、関係性の構成を変えるための取り組みとして理解することが出来るでしょう。単に個人が変わるのではなく、その個人が埋め込まれている環境を変えることで関係性を変え、その結果として個人が変わるということを狙ったものなのです。
関係性の中で生じる問題
目の前の問題が技術的に解決が難しいときには適応課題があります。その適応課題に挑む上では、相手の物語をよく知らなければならないし、そのためには、こちらが相手をどのような存在として見るのか、こちらの物語をまず変えていかなければならない
4タイプ
ギャップ型
大切にしている「価値観」を実際の「行動」にギャップが生じるケース
対立型
互いの「コミットメント」が対立するケース
売上と品質みたいな
抑圧型
「言いにくいこと」を言わない
回避型
痛みや恐れを伴う本質的な問題を回避するために、逃げたり別の行動にすり替えたりする
適応課題を解決する4つのプロセス
準備
相手と自分のナラティブに溝(適応課題があること)に気付く
同じ物事でも捉え方が違う
納得できない出来事があったとしても、まず対話の準備段階として、今の自分のナラティブで解釈することを一度保留にしてみることです。
しかし、目の前で起きていることに腹を立てたりしているときは、なかなかその溝の存在を受け入れられないということもあります。
それでも一度、自分のナラティブを脇においてみることが必要です。そうでないと相手のナラティブは見えてこないのですから。もちろん自分のナラティブを捨てる必要はありません。大切なものです。あくまでもまずは一度、脇に置いてみるイメージです。
ナラティブを脇に置く
つまり、自分のナラティブを今までは疑うことなく生きてきたけれど、それとは違うナラティブがあるかもしれない、という可能性をここでは一度受け入れ、相手にも相手なりになにか事情があるのかな、見えている景色が違うのかな、と想像してみることです。
観察
相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティブを探る
よい観察は発見の連続である
解釈
溝を飛び越えて、橋がかけられそうな場所やかけ方を探る
1. 観察で分かってきたことを眺めて、そこから相手のナラティブを自分なりに構成してみる
2. 相手のナラティブの中に立って見て自分を眺めると、どう見えるかを知る
3. ナラティブの溝に架橋できるポイントを、協力者などのリソースを交えて考える
介入
実際に行動することで、橋(新しい関係性)を気付く
介入は次の観察の入り口、次のサイクルを回すことでより強固な橋(関係性)を築いていく
両者にとても正論を作る作業
妥協とは違う
妥協するということは自分も良くない状況に加担してしまっている
「の代わりに」を「に加えて」に変える
自分が正しいとしても、正論で平手打ちするのは嫌な感触
相手のナラティブも受け入れたうえで自分の意見を伝える
既知の知識・方法で解決出来る問題
問題や困難に直面すればするほど強くなる性質のこと
想定外のことは色々と組織の中でも、外でも起きますが、そうした想定外のことが起きたときに、対話の4つのプロセスを意識して回していくことで、想定外のことが起きれば起きるほど強くなる人と組織へと変化していくことが実現可能なのだと思います。
権限・権威
権限や権威にはそれそのものにナラティブの溝があることを意識しなくてはいけない
弱い立場ゆえの「正義のナラティブ」
立場が強い人間を悪とする逃げ道
多くの場合は、上司は上司でこちらが気づいていないリスクに気がついたり、その提案を受け入れることによってどんなメリットがあるのかと、上司なりに考えていたりするはずです。異なるナラティブの中にいて、見ている点が違うため、異なる判断を下しているのです。そうだとすれば、上司が一体どうしてその判断に至ったのかをよく観察すれば、打開策が見えてくる可能性があるのです。
相手のナラティブにもう一歩踏み込んで、自分が上司の立場だったならば、もしかすると同じように何とも言えない状況になったかもしれない、ということを受け入れると、避難するよりも、何か話を通すための介入のポイントが視野に入ってくるはずです。
人が育つということ
能力を得てただ発揮出来るというだけではない
その人が主体的に能力を発揮して主人公になるということ