踊る案山子亭
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名前の由来
それは数十年前。まだカムデンが今ほど貿易が栄えていなかった頃の話。 頭のネジはゆるいが正直者だった男が、昼寝をしていた所、畑の案山子がこちらをみて踊りだした。 気になった男が近づいてみると、「ここから都に踊りを覚えにいきたいが、靴がないので譲ってくれないか」と尋ねた。
男は二つ返事でこれを了承し、ただひとつ持っている靴の片方を案山子に渡した。案山子は大喜びで男にお礼を言うと、「今から三年後、踊りを覚えて帰ってくる。その日自分が立っている場所を掘り起こせ。それがお礼だ」と話すと、都へと文字通り飛び跳ねて行ってしまった。
それから三年。男はいつものように昼寝をしていると、夢にあの案山子が出てきて、踊りながら言った。「約束通り、自分の真下を掘ってくれ」
男が目を覚ますと、昼寝をしていた丘のはずれに、それまで無かった案山子が立っていた。それも三年前、靴を貸したあの案山子だった。間違えるはずはない。なぜならその案山子は、ボロボロになってはいたが、男が貸してやった靴を履いていたからだ。
男はその案山子の立っているところを無我夢中で掘ってみると、麻でできた袋一杯に、大量の金貨が詰まっていた。 男はそれを元手に土地を買い、宿屋を始めることにした。これがこの「踊る案山子亭」の由来である。それが本当の話かは今の亭主を含め、誰も知らない。しかし宿の梁には、古ぼけた奇妙な靴が一足ぶら下がっている。
片方だけ底が抜け、ボロボロになった奇妙な靴が。