ヤスオ:物語「破滅への道」
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まだ俺が幼い頃、兄にこう訊ねられたことがある。「風は逃げるのか、それとも追うのか?」
長い間、俺は背中にまとわりつく死から逃げてきた。追ってくるのは、かつて俺のことを「友」と呼んでいた連中だ。今では刀を手に、俺を「人殺し」と呼ぶ。
追手は次々に現れる。最初の追手はアイオニア全土に知られる剛腕の剣士だった。若い頃、そいつが太刀を振るって木を真っ二つにするのを見たことがある。 だが、風を真っ二つにすることは出来ぬ。
二人目の追手は素早く優雅な戦士だった。森の中で賢い狐を出し抜き先回りできるほど、俊敏にして狡猾な女。
だが、風よりも先回りすることは出来ぬ。
三人目の追手は憐れみを知る男だった。思い上がった小童に、忍耐の心を教えてくれた男。
我が道しるべ。我が友。
…我が兄。
あとどれくらい走り続けられるだろうか?どれほど強い風もいつかは止む。
だが、その日が訪れるまで俺は止まらぬ。真実を追い求め、風にこの太刀を委ね、真の人殺しのもとへ導いてもらうとしよう。この手を血で汚させた者のもとへと。