28. An Obligation to Forget / David Matheson
1. 道徳的に義務付けられた認識的活動
エージェントが、自分自身の認識状態をある状態にするために行う活動を認識的活動(epistemic activity)と呼ぶことにすると、学習する、覚えておく、敢えて学ばない、そして「忘れるようにする」も認識的活動に含まれる。
知るべきではないことを知ってしまったシナリオでは、「忘れるようにする義務」が生じるといえる。
2.忘れる義務は現実的か
穏当な方法で忘れることができると想定するのは非現実的なのではないか、という批判がある
しかしself-deceptionやdirected forgettingの研究からは、現在知っていることを忘れる方法はいくつもあることが示唆される
多くは想起抑制(retrieval-inhibition)を伴う
3. 他のエージェントのセンシティブな情報を忘れる義務
センシティブな情報を打ち明けられたケース、偶然知ってしまったケースはどうか
他者についての情報を忘れる義務はいつ生じるか? 筆者の暫定的な3つの条件
1)自分の認識的活動によって得た情報であること
2)当人が自らプライバシーを投げ出したケースではないこと
3)認識的活動として穏当な方法で忘れることが可能であること
以上の義務は法人にも適用できると考えられる。
4. 「忘れられる権利」への批判について
「忘れられる権利」:2014年、欧州司法裁判所による判決を契機として、2014 年 5 月に欧州連合(EU)で制定
これに対して、いくつかの批判がある。
「ナンセンス批判」…記憶という心の状態について義務を課すのはナンセンスである
筆者の立場:この批判は、心の状態と、心の状態について何かをすることを混同している。忘れる努力に対しては義務を課すことができる。
「許容できないコンフリクトからの批判」:表現の自由や出版の自由に抵触するから、という理由での批判。
前節の1)~3)を当てはめることができれば、これも当たらない。