13. Memory and Personal Identity / Shaun Nichols
1. 記憶と個人アイデンティティ
ジョン・ロックの考え方を下敷きにした、「個人アイデンティティの記憶基準(memory criterion of personal identity)」が知られる:
記憶基準:「時刻t2でのAさんは、時刻t1でのBさんの経験を第一人称的に想起できる場合に、AさんとBさんは同じ人である。」
記憶基準にはいくつかの反論がある。
①推移性の問題:t3の私がt2の記憶をもち、t2の私がt1の記憶をもてば、t1とt3の私は同じ人だといえるのではないか。
トマス・リード(Thomas Reid、1710年 - 1796年1)が出した例。
②循環性の問題:記憶を保持するためのはそもそも自己同一性が必要なのではないか。
③簡単すぎる基準の問題:一つの記憶を持っているだけで同一性を認めるのは緩すぎるのではないか。
記憶基準はさまざまに改訂されてきた。
Grice 1941 「total temporality mental state」 ※よくわからなかった
Parfit 1940  擬-記憶(quasi memory)…アイデンティティと必然的に結びつかない記憶
Parfitは記憶基準を「心理学的連続性」の基準に改訂した。
心理学的連続性には、記憶だけでなく、信念や欲求や性格なども含まれる。
「記憶はアイデンティティを構成するもの」という考え方をそもそも認めない議論も。リードなど。記憶は、アイデンティティを知るためのもの(証拠)である。
2. 記憶と、心理学的連続性の判断
心理学的連続性はどのように確認されるのか
健忘症患者は、エピソード記憶をもてなくても、意味記憶から自身のパーソナリティについて一貫した報告をすることがある。(暗黙的な自己知を持っている)
アンケート調査?などでは記憶よりも道徳的傾向moral traitのほうがアイデンティティにとって大事だという結果もある「
3.エピソード記憶と個人アイデンティティ
エピソード記憶には「私の」記憶だという特徴がある。cf. James, Reid
一方、エピソード記憶から自己感が抜ける精神疾患もある。離人症性障害。
前世に関わる信念。
心理学的連続性が絶たれるが、エピソード記憶がつながるケースもある。
例:患者HMは術後、モチベーションの低下など性格が変わったが、過去の記憶は保持していた
エピソード的展望(episodic prospection):私は将来こういう経験をするだろう、という見込みをもとに、未来の自分は心理学的特性が変わっているかもしれない未来の自分との連続性をもとに自己の表象が作られるという考え方も。