2022年の履歴
発表履歴
01月04日 年始休み
01月11日 17:30-19:00 横田裕輔(東大)
01月18日 17:30-19:00 木下陽平(筑波大)
01月25日 17:30-19:00 林健太郎(農研機構)
02月01日 17:30-19:00 鈴木和良(JAMSTEC)
02月08日 17:30-19:00 小出大(国環研)
02月15日 17:30-19:00 澤田洋平(東大)
02月22日 17:30-19:00 小畑建太(愛知県立大)
03月01日 18:00-19:00* 土居秀幸(兵庫県立大)
03月08日 17:30-19:00 テリゲル(筑波大)
03月15日 17:30-19:00 入江光輝(宮崎大)
03月22日 17:30-19:00 市井和仁(千葉大)
03月29日 お休み
04月05日 お休み
04月12日 お休み
04月19日 お休み
04月26日 18:00-19:00 嶌田将貴(東大)
05月03日 祝日休み
05月10日 お休み
05月17日 お休み
05月24日 17:30-19:00 森下瑞貴(農研機構)
05月31日 17:30-19:00 栗原純一(北海道情報大学)
06月07日 17:30-19:00 平田晶子(森林総研)
06月14日 お休み
06月21日 17:30-19:00 大西信徳(京都大学)
06月28日 17:30-19:00 清野友規(国立環境研究所)
07月05日 お休み
07月12日 お休み
07月19日 お休み
07月26日 お休み
08月02日 お休み
08月09日 お休み
08月16日 お盆休み
08月23日 お休み
08月30日 お休み
09月06日 お休み
09月13日 お休み
09月20日 お休み
09月27日 お休み
10月04日 お休み
10月11日 お休み
10月18日 お休み
10月25日 お休み
11月01日 お休み
11月08日 お休み
11月15日 お休み
11月22日 お休み
11月29日 リモセン学会@三重に合流
12月06日 17:30-19:00 両角友喜(国立環境研究所)
12月13日 17:30-19:00 林浩希(木更津高専)
12月20日 お休み
12月27日 年末休み
2022年12月13日
発表者:林浩希(木更津工業高等専門学校 専攻科 環境建設工学専攻)
タイトル:UAV写真測量と物体検出手法による露地野菜の個体位置推定に関する基礎検討
概要:圃場での露地栽培において,生育不良株の早期検出や収穫量の早期予測などを個体単位で実現するためには植物個体の精密な位置データが不可欠となる.植物個体の位置を高い正解率で推定する手法のひとつとして,深層学習に基づく物体検出が挙げられる.ただし,物体検出は,学習データの整備に要するコストと達成される検出性能はトレードオフの関係にあるため,高精度かつ効率的に個体位置の特定を行うためには学習データの整備量に関する判断基準が必要となる.本研究では,ブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)を対象として,無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle;UAV)により取得した高空間分解能1cm未満のオルソモザイク画像と物体検出手法YOLOv5を用いて,植物個体の精密な位置データの特定を行い,学習データの整備量に応じた検出性能の変動を調査した.その結果,ブロッコリー株の個体間に大きな生育差がなく,適切な管理が施されている圃場においては,約200株を学習データとして整備することで,検証サイト内(7836株)の約99%を位置誤差5cm未満で検出可能となる結果を得た.この成果は,学習データの整備に要するコストと達成される検出性能との妥協点を見出すためのガイドラインとして活用できる.
2022年12月06日
発表者:両角友喜(国立環境研究所 衛星観測センター)
タイトル:太陽光誘起クロロフィル蛍光における林床の寄与 ~落葉広葉樹林の鉛直的な光合成機能を見る~
概要:太陽光誘起クロロフィル蛍光(SIF)は、光合成における生理的な要因を反映しており陸上生態系の一次生産量の変動を評価するために利用される。これまでの衛星観測やタワー観測では林冠上端からのシグナルが利用されているが、日本などの階層構造の発達する温帯林についてSIFによる光合成推定を理論的に行うには林内の情報が不可欠と考えられた。そこで本研究では森林の3点(8m, 14m, 18m)における鉛直的なSIFを初めて直接観測することで森林内部の光合成機能について明らかにした。CO2濃度や交換量との比較から、春と秋の林床SIFが常緑ササ林床の光合成に応答したことを示した。この結果は衛星観測や放射伝達モデルの検証としてSIF研究の発展に貢献すると期待する。加えて本研究の基盤となっていた昨年度までのSIF地上検証観測網プロジェクトの概要や今後の展望を話す。
2022年06月28日
発表者:清野友規(国立環境研究所 衛星観測センター)
タイトル:Google Earth Engine を用い た町丁目別緑被率オープンデー タ(全国版)の作成と評価
概要:緑被率は都市の緑量を評価する指標として最も一般的であり、データ整備が進んでいる北米や英国では、緑地がQOLや不動産価値に与える影響の評価などに利用されている。しかし日本では一部の大都市を除いて緑被率データは利用できない状況であった。そこで本研究では、大規模計算能力を持つクラウドGISであるGoogle Earth Engineを用いて、最新の光学衛星であるSentinel-2のデータから日本全国の緑被率を推定し、町丁目単位の緑被率オープンデータセットを作成・公開した。本発表では校正・検証の方法や、解析途中で発見した都市緑地の特徴、作成データを用いた解析に関する今後の展望などを話します。※町丁目単位の緑被率オープンデータセット:https://zenodo.org/record/5553516 2022年06月21日
発表者:大西信徳(京都大学熱帯林環境学研究室 博士研究員&DeepForest Technologies 株式会社 代表取締役)
タイトル:ドローンのデジタル画像とディープラーニングを用いた樹種識別の実用性とロバスト性について
概要:上空からの樹種識別は森林管理の効率化につながることからこれまで多くの研究が行われ、近年ではその方法の一つとしてドローンを用いた研究開発が行われている。特にディープラーニングを応用することでドローンのデジタル画像からでも樹種識別が可能であることが分かってきており、低コストな森林観測ツールとして期待されている。そこで本研究では日本各地でデータを集め、どの種の識別が可能なのか、また教師データと時空間的に異なるデータに対してどの程度識別精度を保つことができるのか検証した。ドローンには市販のphantom 4 pro を用い、暖温帯から冷温帯にかけて日本各地6カ所計58クラスのデータを用いて学習・識別を行った。結果、時空間的にほとんど同じ場合にKappa係数は0.97、空間的に異なるデータである教師データと別の樹冠画像では0.72、別のサイトで取得したデータに対しては0.47の精度が示された。精度が下がった中で、針葉樹や林相を代表する広葉樹の識別精度はある程度高く、ドローンのデジタル画像とディープラーニングを用いることで、いくつかの代表的な樹種の自動識別が可能であることが示された。本発表ではこの論文に関わるこれまでの研究成果や、実際にディープラーニングを用いた樹種識別が可能なソフトウェアであるDF Scannerについて紹介も行う。
2022年06月07日
発表者:平田晶子(森林総合研究所 生物多様性・気候変動研究拠点)
タイトル:気候ストレス指数の全球推定により森林の気候変動への応答を予測する
概要:気候変動にともなう気温や降水量の変化は、森林の分布域を広範囲にわたって変化させ、炭素隔離を含む森林の機能を変化させる可能性がある。しかし、気候ストレスに対する植物の応答についての知見は特定の種や分類群に限られており、気候の変化に対して森林分布が広域でどのように応答するのかを予測することは困難であった。そこで、植物の光合成活性に影響を与える気候因子(乾燥、日射、気温)を組み合わせた7種の気候ストレス指数を全球スケールで推定し、現在の森林分布との関係を機械学習によってモデル化することで、森林の分布限界を規定する気候ストレスを評価した。さらに、構築したモデルを用いて、気候変動による森林分布の変化予測を行った。解析の結果、気候変動にともなって、森林が気候的に成立可能な地域は高緯度地域では拡大し、中緯度の乾燥地周辺では縮小する可能性が示された。影響を受ける地域に地理的な偏りがあることから、気候変動が森林の生態系機能に与える影響を総合的に考える場合、全球規模での評価が重要であることが示唆された。参考:https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2022.153697 2022年05月31日
発表者:栗原純一(北海道情報大学)
タイトル:UAVハイパースペクトル観測によるオイルパームBSR病の早期検出
概要:植物油の中で最も生産量の多いパーム油は、主に熱帯で栽培されるギニアアブラヤシ(オイルパーム)の果実から搾油され、インドネシアとマレーシアの2か国が世界の生産量の80%以上を占める。これらの国々ではオイルパームのbasal stem rot (BSR)病による被害が拡大しており、持続可能な生産に深刻な影響を及ぼしている。本研究では、マレーシアのオイルパームプランテーションにおいてBSR病に感染したオイルパームを早期検出する手法を開発することを目的として、UAVからのハイパースペクトル観測を行い、樹冠に対する同心円状のセグメントごとの反射率スペクトルから機械学習を用いて発病程度を分類した。その結果、特定のセグメントにおけるレッドエッジ領域の数バンドのみから発病状態を分類できることが示された。
2022年05月24日
発表者:森下瑞貴(農研機構 農業環境研究部門 土壌環境管理研究領域)
タイトル:土壌特性の空間推定におけるリモートセンシング画像の適用事例
概要:圃場内の土壌特性は、土地履歴や地理的条件に応じて空間的に不均質である。したがって、生産現場では地力や生育の“ムラ”を的確にとらえ、圃場管理に反映させることが必要となる。しかしながら、土壌診断に要する労力および金銭的コストは大きく、面的な土壌特性の把握は農業従事者の負担となる。そのため、農業現場では土壌特性の空間分布を的確かつ低コストで捉えるための技術が求められている。本発表では、ドローン空撮画像および機械学習アルゴリズムを活用した空間的土壌診断技術に関する研究成果を紹介する。
2022年04月26日
発表者:嶌田将貴(東京大学 工学系研究科 社会基盤学専攻 博士課程1年)]
タイトル:Sentinel-1・Sentinel-2衛星データを用いたソーラーパネル検出と浸水・土砂災害リスク評価
概要:再生可能エネルギー需要の高まりによって、太陽光発電は急速な普及を続けている。しかしながら、一部のソーラーパネル設備は洪水や土砂災害に対するリスクを抱えている。これらの発電設備を災害から守り、また被災時に想定される周囲への被害を低減する為には、ソーラーパネルに対する災害リスクを把握し、適切な減災対策を行う事が肝要と考えられる。ソーラーパネルは全国に散在しており、また毎年新規設備が積極的に増設されていることから、広域を高頻度で観測できる衛星リモートセンシングの手法がソーラーパネルの位置と規模の把握に適している。本研究では、多時期に取得されたSentinel-1(SAR衛星)とSentinel-2(光学衛星)のデータを機械学習(ランダムフォレスト法)による分類法と組み合わせたソーラーパネル検出手法を提案し、その検出精度の評価を行った。また、検出されたソーラーパネルにおける土砂災害及び洪水被害リスクをハザードマップを利用して検討した。
2022年03月29日
お休み
2022年03月22日
市井和仁(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)
タイトル:静止気象衛星観測網による陸域生態系モニタリング研究の展開
要旨:2015年から観測を開始した静止気象衛星「ひまわり8号」を皮切りに、世界各国で最新型の静止衛星の観測が開始されている。最新型の静止衛星では従来のものと比較して特に可視・近赤外域では観測波長帯の大幅な増加(単バンドから複数バンド)がなされ、陸域モニタリングへの応用が期待されている。しかしながら、10分に1度といった超高頻度観測、1kmといった空間解像度、従来の極軌道衛星との衛星観測条件の違いなどから、様々な困難がある。今回の発表では、先日採択され、4月より5年間で着手するJSPS研究拠点形成事業(a. 先端拠点形成型)「静止気象衛星観測網による超高時間分解能陸域環境変動モニタリング国際研究拠点」プロジェクトに関しての紹介を行い、千葉大CEReSにおける静止衛星の陸面応用に関する進捗(大気補正・LSTの推定・LAIの推定・GPPの推定など)を報告し、共同研究などの糸口にしたい。
2022年03月15日
入江光輝(宮崎大学工学教育研究部)
タイトル:画像判別技術を用いた河床材料分布の把握の試み
要旨:河川管理の治水及び環境の観点から河床材料空間分布の詳細な把握が求められている.しかし,材料粒径を容積法,面積格子法などで現地で実測する作業の負担は大きく,現状では広大な河道域の中の限られた地点数の調査で済まされることが多い.そこで,本研究では画像認識技術の1つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を適用して河床画像の代表粒径判別を試みた.使用したCNNは転移学習が可能で,UAVで撮影された限られた枚数の河床画像を代表粒径情報と対応させて追加学習させたところ,堆積して陸上にある材料を対象に95%を超える判別精度を得た.次に,水中の河床材を対象として追加して学習を行い、判別制度の評価を試みた.水中の材料の画像では水面の波の状態も重ね合わせて撮影されているため,生じている種々の波を考慮して多様な学習を行わせることでその影響を除外を試みたところ,河床材料のみに着眼した判別を行える可能性が示された.同技術により実河床の広域撮影を行ったところ,出水時のダム通砂による土砂移動や流況に応じた土砂粒径分布を観察することができた.
2022年03月08日
TE RIGELE(筑波大学生命環境科学研究科持続環境専攻)
タイトル:Monitoring of Drought Dynamics in the Mongolian Plateau using Remote Sensing Data
要旨:Droughts are perceived as one of the most common and devastating natural hazards that often lead to significant social, economic, and ecological impacts. Located in the central arid and semi-aridclimate zone, the Mongolian Plateau has been suffering from increasing drought occurrence due to its high sensitivity to climatic changes and fragile environmental systems. Since droughts are complex disasters that normally develop slowly, last for long duration and are difficult to predict, there have been many research carried out in different aspects, using different source of data for drought monitoring. The modern drought monitoring can be traced back to 1895. Before the launch of satellites in 1950s, drought can only be monitored by meteorological ground data. Nowadays, remote sensing observations have been used for drought monitoring from a climatological viewpoint due to the its advantages of macroscope, near-real-time observations, consistent long-term datasets, and improved spatial resolution. In order to easily understand drought through its impacts, drought is classified as meteorological, agricultural, hydrological and socio-economic drought. However, traditional remote sensing drought monitoring models mainly monitor single factors such as vegetation index or soil moisture, which cannot fully reflect the information about drought. In this study, agriculture drought, meteorological drought and hydrological drought are detected by using the Normalized Difference Vegetation Index (NDVI), the Standardized Precipitation Evapotranspiration Index (SPEI), and combination of Standardized Soil Moisture index (SSI) with Standardized Runoff index (SRI), respectively. Previous research showed that drought exhibited significant increasing trends for all three climatic regions which are bareland, grassland and forest in the Mongolian Plateau from 1980 to 2015. In order to mitigate such problems, the Chinese government and non-governmental organizations (NGOs) implemented a series of nationwide ecological recovery programs since the late 1990s. As a result, many research indicated that vegetation greenness showed an upward trend in vast area of grassland and agricultural regions in Mongolian Plateau in the recent several decades. However, drought in the Mongolian Plateau intensified in recent four decades, and the drought in Mongolia has been more serious than in Inner Mongolia. In this study, both meteorological and satellite data are utilized for drought monitoring. For satellite data, data continuity is fundamental to the development of reliable records for drought applications. However, one of the major limitations of many of the currently available satellite observations is their short length of record. Hence, in this study a newly launched satellite data is used as a successor and complement for drought monitoring. In December 2017, JAXA launched a polar-orbit satellite for climate studies named "Global Change Observation Mission-Climate (GCOM-C)" which carries a multi-spectral optical sensor Second-generation Global Imager (SGLI). SGLI aboard GCOM-C is designed as the successor to the Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer (MODIS) aboard the Terra and Aqua remote-sensing satellites for both land science and applications and add to the medium-resolution, long-term data record. Hence, a series of of intercomparison are conducted before application in this study. The intercomparison of SGLI NDVI and land surface temperature (LST) with those of Landsat 8, MODIS, Visible Infrared Imaging Radiometer Suite (VIIRS), Project for On-Board Autonomy (PROBA-V) from 2018-2020 showed that SGLI NDVI and LST are highly correlated (R2 from 0.75 to 0.96). After the preprocessing of the datasets, statistical methods including Sen’s slope and abrupt detection method are employed to detect the duration, severity, trend, and mutation points of drought occurrence using different meteorological indices, soil moisture data, and remote sensing-based vegetation indices. As a result, during the 39 years period, different drought indicators show varied sensitivity and interaction to drought occurrence in different land cover categories. An abrupt change of NDVI, SPEI, SSI were detected in 2011, 1999, and 1996, respectively in the entire Mongolian Plateau. Before year 1999, the climate was relatively humid and turned more arid after year 1999, which can be reflected by remarkably increased frequency and intensity of drought. NDVI is significantly increasing after 2011 due to the conservation programs and it matches the results of most of the previous studies. SSI decreased after 1996 refers to the shortages of soil moisture in the root zone and it is contributed by both arid climate and water extraction from the soil due to the large area of planting of trees.
2022年03月01日 ※18:00-19:00
土居秀幸(兵庫県立大学大学院情報科学研究科)
タイトル:COVID-19による世界的ロックダウンがSDGs達成に及ぼす潜在的な影響の評価
要旨:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは世界的なロックダウンを引き起こし、人の移動や活動の制限は社会や環境に大きな影響を及ぼしています。その影響は量的なものもあれば質的なものもあり、また、すぐに、あるいは持続的に長引く可能性もある。本研究では、リモートセンシングデータや人流データを用いて、世界的なロックダウンが大気中の二酸化窒素(NO2)排出と人の移動に及ぼす影響を検討しました。また、持続的開発目標(SDGs)の達成に向けたロックダウンの即時効果(ロックダウン中)および持続的効果(ロックダウン後)を評価しました。その結果、人の移動とNO2排出量が大幅に減少し、多くのSDGsがロックダウンにより即時的・持続的に影響を受けることが明らかになりました。特に、経済問題や生態系の保全など、4つの目標で即時的なマイナスの影響が観測されました。また、ロックダウンの持続的な影響は、経済の回復により、即時的な影響から反転する可能性が高いことが示されました。
2022年02月22日
小畑建太(愛知県立大)
タイトル:静止衛星と極軌道衛星間におけるNDVI変換アルゴリズムの開発と評価
要旨:静止衛星は極軌道衛星に比べて高い時間分解能で陸域植生を観測可能である。近年注目されている新世代の静止衛星と従来の極軌道衛星を統合的に用いることで、より広範囲・高頻度・長期の植生観測が期待できる。しかし、軌道やセンサの違いからデータプロダクト(例えば正規化植生指数(NDVI))には系統的な差が生じるため、一貫した観測が容易でない。そこで本研究では静止衛星と極軌道衛星間に生じるNDVIの系統的な差を低減するため、静止衛星により観測されたNDVIを極軌道衛星のNDVIへ変換する基礎的なアルゴリズムを開発した。ひまわり8号AHIとAqua MODISの同時観測データを利用して開発したアルゴリズムの評価を行い、NDVIにおける系統的な差の低減を確認した。本発表では以上の内容と静止衛星時系列データに対するアルゴリズムの応用可能性検討状況も含めて紹介する予定である。 参考文献:https://doi.org/10.3390/rs13204085 2022年02月15日
澤田洋平(東京大学大学院工学系研究科)
タイトル:可視域とマイクロ波領域の衛星観測の融合による陸域生態系監視
要旨:陸域生態系の中長期的な変化を多角的に捉えることは重要である。AMSR-E/AMSR2 に代表される受動型マイクロ波放射計による低周波マイクロ波輝度温度観測は陸域の植物水分量に感度があり、可視域の植生観測とは独立した情報が得られる。そのため、マイクロ波領域の植生指標であるVegetation Optical Depth (VOD)と可視域の植生指標を組み合わせることで、陸域生態系動態をより詳細に理解できることが期待できる。しかし、陸面の土壌水分や地表面粗度の影響を取り払い植生水分量の情報のみをマイクロ波観測から取り出すのは必ずしも容易ではない。本発表ではまず長期の現地観測を用いてマイクロ波輝度温度の植生動態に対する振る舞いについて包括的に議論する。その上で、既存の可視域の衛星観測植生指標とVODを組み合わせて陸域生態系の変化をとらえる手法について紹介する。本発表で紹介する知見は以下の4点である:(1) VODと植生水分量の間には植物種に大きく依らない線形な関係がある、(2) 既存のVODは植生水分量と地表面粗度の区別がついていない、(3) 可視域の葉面積指標(Leaf Area Index: LAI)を用いることでVODから地表面粗度の影響を除くことができる、(4) LAIとVODの線形回帰の傾きからキャノピーの鉛直構造をある程度類推できる。紹介する論文:Sawada, Y., H. Tsutsui, T. Koike, M. Rasmy, R. Seto, and H. Fujii (2016), A Field Verification of an Algorithm for Retrieving Vegetation Water Content from Passive Microwave Observations, IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, 54, 2082-2095. Sawada, Y., H. Tsutsui, and T. Koike (2017), Ground Truth of Passive Microwave Radiative Transfer on Vegetated Land Surfaces, Remote Sensing, 9, 655 Sawada, Y., T. Koike, K. Aida, K. Toride, and J. P. Walker (2017), Fusing Microwave and Optical Satellite Observations to Simultaneously Retrieve Surface Soil Moisture, Vegetation Water Content, and Surface Soil Roughness, IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, 55, 6195-6206 Nara, H. and Y. Sawada (2021), Global change in terrestrial ecosystem detected by fusion of microwave and optical satellite observations, Remote Sensing, 13, 3756
2022年02月08日
小出大(国立環境研究所 気候変動適応センター)
タイトル:散布能力と競争を介した樹木種における更新場所の寒冷化
2022年02月01日
鈴木和良(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)
タイトル:シベリア北東部に位置するコリマ川の流量変動に対する永久凍土融解の影響
要旨:永久凍土の温暖化に伴い、シベリア北東部のコリマ川の観測流量は1930年代から2000年にかけて減少しているが、そのメカニズムはよくわかっていない。コリマ川の水文変化を理解するためには、活動層厚の変化を把握するとともに、長期的な水文気象要素を解析することが重要である。本研究では、水文・生物地球化学結合モデル(CHANGE)を用いてコリマ川流域の活動層厚と水文気象要素のシミュレーションを行い、それらの結果を衛星データや観測データで検証を行った上で、1979年から2012年までの水文変化を明らかにした。永久凍土の温暖化による活動層厚の増加は、夏季降水量の増加に反して夏季流出量を抑制した。この結果は、陸水貯留量アノマリー(TWSA)の増加が蒸発散量の増加に寄与し、植物の土壌水分ストレスを軽減した可能性を示唆している。また、TWSAを介して降水量と蒸発散量の間には2年のタイムラグがあることが確認された。この結果は、永久凍土域における土壌の凍結融解プロセスが有意な気候メモリー効果をもたらすことを示唆する。本研究で得られた成果は、北極域の将来変化の理解と適応策の策定に有益であると考えられる。
2022年01月25日
発表者:林健太郎(農研機構農業環境研究部門&地球研)
タイトル:日本の窒素収支算定の課題と期待
概要:窒素は,タンパク質や核酸塩基などの生体分子の必須元素として我々の生存に欠かせない.ただし,大気を満たす窒素分子(N2)はきわめて安定で,一部の微生物を除いて直接に利用できない.植物や動物が窒素を手に入れるには,N2ではない窒素,「反応性窒素」(reactive nitrogen)が必要である.ゆえに窒素は作物の生産に欠かせない肥料であり,家畜を養う飼料の生産にも肥料が必要である.我々は飲食物に含まれるタンパク質を通じて窒素を摂取する.20世紀初期にN2からアンモニアを人工合成する技術が確立して以降,人類は反応性窒素を望むだけ作り出すことが可能となった.肥料として食料増産に大きく貢献してきたほか,爆薬や樹脂といった工業原料としても活用され,人類に大きな便益を与えてきた.一方,人類が利用する反応性窒素の大半が環境へと排出されている.化石燃料の燃焼によっても窒素酸化物などの反応性窒素が大気へと排出されている.環境に排出された反応性窒素は,各々の化学種の物性に応じて地球温暖化,成層圏オゾン破壊,大気汚染,水質汚染,富栄養化,酸性化といった多様な影響を引き起こし,人の健康および生態系の健全性(多様性や機能)に脅威をもたらしている.この便益と脅威のトレードオフを窒素問題と称する.窒素問題の解決には,人間活動に起因する環境への反応性窒素の排出を減らしていく必要がある.有効な対策を立案し,その効果を評価するには,人間セクターのどこからどのような形態の窒素がどの環境媒体にどれだけ排出されるのか,これらを積算した窒素収支はどうなっているのかを国・地域単位で把握することが重要である.温室効果ガスの排出インベントリと同様である.今回は,窒素問題とはそもそも何かを概説した上で,2000~2015年の日本の窒素収支の特徴を解説し,リモセン技術への期待や今後の研究展望について参加者と自由に議論できることを楽しみにしている.参考資料:Hayashi et al. (2021) Japanese nitrogen budgets from 2000 to 2015: Decreasing trend of reactive nitrogen loss to the environment and challenge of further reducing nitrogen waste. Environ. Pollut., 286, 117559. https://doi.org/10.1016/j.envpol.2021.117559 林ほか (編著) (2021) 図説 窒素と環境の科学-人と自然のつながりと持続可能な窒素利用-. 朝倉書店. https://www.asakura.co.jp/detail.php?book_code=18057 2022年01月18日
発表者:木下陽平(筑波大学システム情報系)
タイトル:日本におけるGNSS観測との比較によるL-Band InSAR可降水量測定の誤差評価
概要:合成開口レーダ干渉法(Interferometric synthetic aperture radar, InSAR)は2時期のSAR観測により一般に地表面変位の面的分布をミリメートルからセンチメートルの精度で検出できる技術であるものの, GNSS(Global Navigation Satellite System)と同様に大気遅延効果を受けることから天頂遅延量や可降水量といった大気水蒸気の情報も高い水平分解能で観測することができる. InSAR可降水量観測の精度はいくつかの先行研究によって評価されてきたが, これまで誤差評価の対象とされてきたのはC-band SARによって得られたInSARデータのみである. InSARは各周波数帯で干渉性やノイズ特性(電離層遅延など)が異なることから, 気象予測におけるデータ同化やInSARの気象学的応用を実現するためには, 周波数帯毎にInSARデータによる水蒸気観測の誤差評価を行う必要がある. 本研究では, L-band ALOS-2のSM1モード観測データによるInSARを用いて可降水量観測の誤差評価を行った. 比較にはGNSSの天頂遅延量に対する観測誤差や先行研究で得られたGNSSおよびラジオゾンデ観測の絶対誤差推定値を用い, 誤差伝播の法則から, 各SAR観測時の可降水量に対する誤差(標準偏差)を計算した. 参考:松沢啓太&木下陽平(2021)https://www.mdpi.com/2072-4292/13/23/4866 2022年01月11日
発表者:横田裕輔(東京大学生産技術研究所)
タイトル:UAVの海洋計測への利用
概要:海洋・海底計測において,コスト・時間の側面から最大のボトルネックは船舶の使用である.例えば,遠洋における漁獲に関する情報や気象・海象に関する情報,遠洋における海底地震災害に関する事前情報はリアルタイムかつ安価に時々刻々と得られることが望ましいが,船舶を使用する限り,これらの空間情報を時間方向に高密度化することは不可能である.近年は衛星観測とブイ観測の複合によって海洋学的情報の高度化は進められたが,未だ多くの領域,分野の計測について,海洋観測プラットフォームの高度化は進んでいない.船舶を第1世代,ブイを第2世代と呼ぶ時,次の第3世代の海洋観測プラットフォームは,多くの科学的情報を飛躍的に高度化する可能性がある.本発表では,近海について近年実施しているUAVの海洋計測の実証試験について紹介する.また,大型UAVによる遠洋計測の可能性についても合わせて紹介する.参考文献:Yokota Y & Matsuda T (2021) Underwater Communication Using UAVs to Realize High-Speed AUV Deployment. Remote Sens. 2021, 13, 4173. https://doi.org/10.3390/rs13204173