2020年の履歴
発表履歴
1月7日 17:30-19:00 染谷有(国環研)
1月14日 17:30-19:00 高倉潤也(国環研)
1月21日 17:30-19:00 井出玲子(国環研)
1月28日 17:30-19:00 菊島未來(筑波大)
2月4日 17:30-19:00 石橋聖也(筑波大)
2月11日 祝日休み
2月18日 お休み
2月25日 お休み
3月3日 お休み
3月10日 お休み
3月17日 お休み
3月24日 お休み
3月31日 お休み
4月7日 お休み
4月14日 お休み
4月21日 お休み
4月28日 お休み
5月5日 お休み
5月12日 お休み
5月19日 お休み
5月26日 お休み
6月2日 お休み
6月9日 お休み
6月16日 お休み
6月23日 お休み
6月30日 お休み
7月7日 お休み
7月14日 お休み
7月21日 お休み
7月28日 17:30-19:00 塩竈秀夫(国環研)
8月4日 17:30-19:00 立入郁(JAMSTEC)
8月11日 17:30-19:00 深谷肇一(国環研)
8月18日 17:30-19:00 山本雄平(千葉大)
8月25日 お休み
9月1日 17:30-19:00 佐久間東陽(筑波大&国環研)
9月8日 17:30-19:00 土屋健司(国環研)
9月15日 17:30-19:00 吉川沙耶花(茨城大)
9月22日 祝日休み
9月29日 17:30-19:00 志水克人(森林総研)
10月6日 17:30-19:00 PULPADAN Yunusali(国環研)
10月13日 17:30-19:00 岡本遼太郎(筑波大)
10月20日 17:30-19:00 石井順恵(農工大・茨城大・産総研)
10月27日 17:30-19:00 山野博哉(国環研)
11月3日 祝日休み
11月10日 17:30-19:00 大橋春香(森林総研)
11月17日 17:30-19:00 堅田元喜(キヤノングローバル戦略研究所&茨城大学)
11月24日 17:30-19:00 大山智也(筑波大)
12月1日 お休み
12月8日 お休み
12月15日 17:30-19:00 野田響(国環研)
12月22日 お休み
12月29日 年末休み
2020年12月15日
発表者:野田響(国立環境研究所 地球環境研究センター)
タイトル:冷温帯落葉広葉樹林における個葉の葉肉組織の成長と分光特性の季節変動
概要:植生リモートセンシングで観測される植生の分光反射率は,植生の葉群構造と個葉の分光特性(分光反射率・透過率)によって決まる。そして,個葉の分光特性は,葉の解剖学的特性(葉肉組織の構造)と色素をはじめとする葉の生化学的組成により決まる。葉の構造と生化学的組成は,光合成特性を決定する要因でもあることから,個葉の分光特性はリモートセンシングにより植生機能を観測する上での基礎となる。これまでの先行研究で,葉の成長と老化に従って,葉の構造および生化学的組成が季節的に変化することが知られており,個葉の分光特性も合わせて変化するものと考えられる。本研究では,個葉の分光特性の季節変化パターンを明らかにするため,高山サイトの冷温帯落葉広葉樹林において,4年間にわたり,優占樹種であるミズナラとダケカンバについて個葉の分光特性を観測した。さらに,個葉の分光特性と葉の構造および生化学的特性との関係を明らかにするために個葉スケールの放射伝達モデルPROSPECT-5を用いて解析した。葉の成長と老化に従って,反射率・透過率がそれぞれ大きく変化した。これらの変化パターンは,成長期はクロロフィル量の上昇と葉肉組織の発達が同時に起きる一方で,老化期はクロロフィル量の減少のみで葉肉組織の構造はほとんど変化しないことが原因であることが明らかになった。さらに,分光特性からPROSPECT-5で推定した葉肉組織の発達の指標は,ミズナラ陽葉が陰葉よりも葉肉組織が発達していることを示しており,多くの先行研究と一致する結果となった。また,遷移後期種であるミズナラに比べて,先駆種であるダケカンバは展葉直後から葉肉組織がよく発達した葉,すなわち強光条件に適した葉となっており,遷移段階の異なる種間での光利用戦略の差が,2種の葉の分光特性にも反映されていることが明らかになった。
2020年11月24日
発表者:大山智也(筑波大学システム情報系社会工学域)
タイトル:日本における地理的犯罪予測の試み
概要:都市の中で次にどこで犯罪が発生するかを予測する地理的な犯罪予測技術は,2010年前後から米国を中心に流行し,最近ではわが国でも,京都府警や神奈川県警,長野県警などでシステム開発・実用に乗り出す事例が見られている.しかしながら,こうした日本での犯罪予測の試みは,システムベンダーが海外の手法を参考にする形で行われており,学術側からの実証研究の取り組みが不足している状況にある.また,日本のように犯罪が欧米に比べ著しく低頻度である国では,海外と同様の手法が有効とは限らない.今回は,発表者が地理的犯罪予測を国内の身体犯罪(路上での痴漢行為),財産犯罪(車上狙い),知能犯罪(還付金等詐欺)に適用した事例を中心に紹介する.
2020年11月17日
発表者:堅田元喜(キヤノングローバル戦略研究所 & 茨城大学)
タイトル:霞ヶ浦流域における大気中アンモニアの濃度分布
概要:人間活動に伴う大量の窒素やリンが河川などを通じて湖沼への流入し続けるとアオコなどが発生しやすい富栄養状態になりうるが、この裏では、大気からの反応性の高い窒素化合物(アンモニアなど)の湖沼水面への吸収(沈着)が起こっている。本研究では、霞ヶ浦流域の農地・湖上・森林・市街地を含む36地点で大気中アンモニア濃度の空間・季節変動を調べた。その結果、従来の知見と異なり夏季よりも冬季に湖上で大気中アンモニア濃度が増大することがわかった。流域北部の畜産地帯で発生した大気中アンモニアが北寄りの季節風によって湖上に流されたことが主要因と考えられる。試算によると、アンモニアによる大気から湖沼への年間窒素吸収(沈着)量は河川流入に対して無視できない可能性もあり、さらなるモニタリングと大気ー湖沼相互作用の解明が必要である。参考文献:Kubota, Katata, et al. (2020) Atmos. Environ., 243, 117856. https://www.ibaraki.ac.jp/news/2020/09/10010950.html 2020年11月10日
発表者:大橋春香((国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 野生動物研究領域)
タイトル:将来の土地利用変化と、その変化が生物多様性に及ぼす影響を予測する
概要:現在、土地利用の変化は、地球上の生物多様性損失の最大の原因となっている。世界の人口が 2050 年までに90 億人から 100 億人に達すると推定される中、持続可能な開発を目指すうえで、食糧、水、木材、エネルギー、定住、レクリエーションなどの財やサービスを提供するための土地に対する需要と、生態系を守るために必要な土地との間でバランスを取ることが、重要な課題となると考えられる。その一方で、日本では、2010年以降人口が減少しており、2060年には現在の3分の2の水準にまで減るとされている。人口減少による土地利用の変化は、生態系サービスの質や量の変化をもたらすことから、人の生活にも様々な影響を及ぼすことになる。このような状況下で、将来の土地利用の変化を予測するモデルの開発や、土地利用の予測に基づいた生物多様性への影響評価に関する関心が高まっている。そこで本発表では、①国家スケールで人口減少に伴う将来の土地利用予測を行った事例と、②世界スケールで土地利用変化が及ぼす生物多様性への影響を分析した事例をそれぞれ紹介する。参考文献:Ohashi et al. (2019) Trans. GIS 23 (4), 786-804. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/tgis.12525; Ohashi et al. (2019) Nat. Commun. 10, 5240. https://doi.org/10.1038/s41467-019-13241-y 2020年10月27日
発表者:山野博哉(国立環境研究所)
タイトル:衛星コンステレーションを用いた、サンゴ礁における短期間の現象の検出
概要:サンゴ礁においては、生物や底質の分布の構造が細かいため、高空間分解能での観測が必要とされ、これまでにもIKONOSを始めとした高空間分解能センサーによるマッピングが進んできた。一方で、サンゴ礁においては、産卵や白化など、数日から数週間での短期間で起こる重要な現象があるが、これらの検出と監視は衛星の回帰日数や熱帯域の雲量によりこれまでは非常に困難であった。しかし、最近、Planet Doveを始めとした衛星コンステレーションにより、高空間分解能に加えて、高時間分解能での観測が可能となった。本発表においては、衛星コンステレーションで得られる高時間・高空間分解能のデータを用いて、サンゴ礁において、産卵など短期間で起こる現象を検出した例を紹介する。参考文献:Yamano et al. (2020) RSE, 251, 112058.
2020年10月20日
発表者:石井順恵(東京農工大学(茨城大学)連合農学研究科 農業環境工学専攻&産業技術総合研究所 地質調査総合センター)
タイトル:ラフ集合理論を用いた新しい土地被覆分類手法の開発
概要:土地被覆分類図は、土地利用変化の検出、自然災害の監視、気候変動の現状把握等、様々な目的での利用が期待される。一方で、分類クラスの定義の難しさ、分類手法の不完全性、教師・検証データの作成労力の大きさ、ミクセルの取り扱いの難しさなど土地被覆分類における解決されていない課題も多くおり、土地被覆分類図の精度は実利用には不十分であることも多い。こういった問題を解決するために土地被覆分類に関する研究を様々な観点から進めてきた。今回は、ラフ集合理論を用いた新しい土地被覆分類手法の開発について紹介する。発表では、ラフ集合理論の概要について紹介し、他の分類手法との違いについて議論する。
2020年10月13日
発表者:岡本遼太郎(筑波大学生物学学位プログラム博士前期課程一年)
タイトル:地上定点カメラ・手持ちカメラを用いた高山帯リモートセンシング技術の開発
概要:高山生態系は気候変動に対して極めて脆弱であるが、直接の調査が難しく、リモートセンシングが生態系の物理・生物環境の変化を観測する手法として重要である。従来生態系のリモートセンシングは主として衛星画像や航空写真、ドローン写真など、被写体を上から撮影する手法によって行われてきた。しかしながら衛星画像は地上解像度が低く、航空写真・ドローン写真は反復撮影を行うコストが大きい。山小屋設置の定点カメラや登山者の手持ちカメラなどによって地上から高山の風景を撮影した写真はインターネット上のデジタル写真やフィルムのものまで膨大に存在するが、オルソ化の困難さ故に生態系の定量的な解析に用いられた例が極めて少ない。本発表では、現在開発中の手持ちカメラ自動オルソ化ソフトウェアのアルゴリズムについて、実装に用いたR/Pythonパッケージや構想中の応用も含めて紹介する。
2020年10月06日
発表者:Pulpadan YUNUSALI(National Institute for Environmental Studies)
タイトル:Assessing the potential of MODIS Red reflectance (Rrs 645) for long term estimation of suspended sediment concentration in oceanic waters
概要:Bio-optical algorithms for remote estimation of suspended sediment concentration (SSC) in oceanic waters exploit mostly the upwelling radiation in the red region of the electro-magnetic spectrum. The NASA's Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer (MODIS) on the satellite Aqua (MODISA) since its inception in 2002 has been providing high quality geophysical data products at scales unattainable using traditional sampling. The Level-3 MODIS daily remote sensing reflectance product at 4 km resolution, and their monthly binned data offers interesting characteristics on the global trends in reflectance in the past 18 years. It has been observed that there is a statistically significant negative trends (p < 0.01) in Rrs 645 that corresponds to the red region during the observation period (2002 – 2020). However, with the MODIS sensor aging and reaching maturity, it is important to evaluate the quality of reflectance data from the instrument. This presentation therefore aims to critically assess the relationship between Rrs 645 and SSC, and associating the substantial decreasing trends in red reflectance with global patterns of sedimentation.
2020年09月29日
発表者:志水克人(森林総合研究所 森林管理研究領域 資源解析研究室)
タイトル:全球/地域森林変化データを用いた毎年の森林撹乱推定の精度評価
概要:森林撹乱は林分構造や生物多様性、炭素蓄積などに影響を与えることから、地域の森林管理においてはその時間的・空間的な把握が求められる。衛星画像を利用して森林撹乱を推定する手法は、大別すると対象地域で森林変化推定アルゴリズムを実行し推定する手法と、全球で推定された既存の森林変化データを利用する手法の2つがある。どちらを利用するかは森林変化推定に必要な費用・手間と精度のトレードオフによる。しかし、これまで全球/地域森林変化データから推定される森林撹乱の時系列的な精度について検討した例はなく、どのような条件でどちらを利用すべきか明らかではない。本研究では、九州本島を対象に2001-2017年の毎年の森林撹乱をHansenらの全球森林変化データおよび変化推定アルゴリズムで作成した地域森林変化データから推定し、その精度を評価した。発表では、精度評価の手法と結果について紹介し、どのような条件で全球/地域森林変化データを利用すべきかを考察する。
2020年09月22日
祝日のためお休み
2020年09月15日
発表者:吉川沙耶花(茨城大学 地球・地域環境共創機構)
タイトル:ブラジルアマゾンの森林破壊とその要因
概要:地球の気候や水資源への影響が大きいアマゾンの熱帯林伐採は、少しずつ緩やかになってきているが、未だ留まるには至っていない。森林伐採の要因として、主に未舗装道路を含む道路建設や河川が重要な輸送手段となって人々の森林へのアクセスが可能となることで、森林が違法に大量伐採され、その後大規模牧場へと利用される。数年後、その土地のほとんどが放棄されるため大豆などの大規模農場へと変貌をとげる。大規模な開発の一方で、近年は土地なし農民による森林伐採及び農地開発も大きな脅威となりつつある。森林破壊とその要因を現地観測(土地なし農民による違法占拠地など)、リモートセンシング技術、GISを駆使することで明らかとしてきた研究について紹介する。
2020年09月08日
発表者:土屋健司(国立環境研究所)
タイトル:水圏環境におけるバクテリア生産速度測定法の開発と琵琶湖における実測例
概要:水圏環境中においてバクテリアは溶存態有機物の懸濁態化や微生物ループの駆動などを通して物質循環に寄与しており,バクテリアの生産生態を把握することは生物地球化学循環を理解する上で重要である.バクテリアの生産速度測定はこれまで放射性同位体を用いた手法が一般的に用いられてきたが,屋外での放射性同位体の使用が強く制限されている国・地域においてはバクテリア生産速度測定の障壁となってきた.そこで我々は安定同位体を用い,任意の場所で安全に使用できるバクテリア生産速度測定法の開発を行ってきた.今回の発表では測定法の紹介と共に,琵琶湖におけるバクテリア生産速度の実測を通して明らかになった30年間の長期変動について紹介する.
2020年09月01日
発表者:佐久間東陽(筑波大学大学院 システム情報工学研究科 & 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)
タイトル:衛星コンステレーションを用いた小規模農地帯におけるサトウキビ等の作物・作型分類
概要:沖縄県では,サトウキビが基幹産業の一つである一方で,降雨時に農地から流出する赤土が河川・沿岸域生態系を劣化させており,喫緊の社会問題となっている。農地における作物・作型の分布把握は,農業生産計画と環境保全対策を立てる際に重要である。通常,衛星観測による農地分類では,植生指標によって作成される作物・作型毎の生育の季節変化情報が重要なキーとなる。しかし,従来の衛星観測システムでは,熱帯・亜熱帯の頻繁な雲被覆,小規模かつ時間変動が大きい農地帯では,その情報を捉えることは困難であった。近年整備された同一センサを搭載した大量の小型衛星による衛星コンステレーションは,高い時空間分解能での観測を実現し,この問題を解決する可能性を有する。そこで本発表では,衛星コンステレーションを用いた沖縄県久米島を対象に,主にサトウキビからなる小規模農地帯の作物・作型分類の事例を紹介する。
2020年08月25日
お休み
2020年08月18日
発表者:山本雄平(千葉大学 環境リモートセンシング研究センター)
タイトル:静止気象衛星ひまわり8号を用いた猛暑時における地表面温度の高頻度解析
概要:2018年の7月中旬から8月初旬にかけて、日本や朝鮮半島周辺は記録的な猛暑に見舞われた。この猛暑の形成要因や特徴に関しては、大気循環場の視点から様々な議論がなされており、地球温暖化に伴ってその発生頻度も増加するとの報告もある。その一方で、猛暑時の陸面環境(地表面温度や植生活性度)の広域的な把握も、都市の暑熱環境悪化や森林・農地の水ストレスなどの観点から重要である。本研究では、静止軌道衛星ひまわり8号の熱赤外観測データを用いて、2018年の猛暑時における地表面温度環境を調べた。セミナーでは、解析によって明らかとなった地表面温度アノマリの特性について紹介するとともに、次世代の静止軌道衛星がもつ「高頻度性」が陸面(特に植生面)の熱環境解析においてどのような新情報を提供しうるかについても紹介する。
2020年08月11日
発表者:深谷肇一(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)
タイトル:環境DNA分析に基づく個体数の推定
概要:環境中に遊離したDNA断片の分析(環境DNA分析)は、生物の生息状況を効率的に把握するための新しい手法として、近年広く応用されるようになった。生物の数や量を計測するという目的に環境DNA分析を用いる試みも数多くなされている。しかし、一般的に野外では環境DNAの時空間分布を決める過程が複雑であることから、定量的な応用にはまだ多くの課題が残されているのが現状である。本講演では、(1)生物からのDNAの放出、(2)水中でのDNAの移動、および(3)DNAの分解を明示的に考慮した、環境DNA濃度の計測に基づく個体数推定の枠組みと、舞鶴湾のマアジを対象とした実例を紹介する。環境水の分析から水生生物の数や量を正確に把握できるようになれば、水域生態系の非侵襲的な定量モニタリングが可能となるかもしれない。それを実現する上で解決すべき課題を考察する。
2020年08月04日
発表者:立入 郁(海洋研究開発機構 地球環境部門 環境変動予測研究センター 地球システムモデル開発応用グループ)
タイトル:CO2排出停止後の全球平均気温変化:モデル比較実験の結果から
概要:ゼロエミッション・コミットメント(ZEC)は、CO2排出停止後の全球平均気温変化であり、温度目標達成のために許容される炭素排出量を計算する上で重要である。ZECモデル相互比較プロジェクト(ZECMIP)は、ZECの大きさやメカニズム理解を目的として企図された。ZECMIPには合計18の地球システムモデル(中程度の複雑性のモデルを含む)が参加した。大気中のCO2濃度が(CO2排出量が1000PgCとなるまで)指数関数的に増加し、その後は排出量をゼロとして大気中のCO2濃度を変化させる実験を必須実験とし、累積排出量を変えたり、滑らかにゼロエミッションへ移行する理想化された排出経路を用いるものをオプション実験とした。1000PgC実験におけるCO2排出停止後50年後のZECは-0.36~0.29℃(平均±標準偏差は-0.07℃±0.19℃、中央値は-0.05℃)であり、これまでのモデル実験や単純な理論と整合する。但し、排出停止後の振る舞いはモデルにより異なり、数十~数千年にわたって温度化上昇するものもあれば、大幅な気温低下を伴うものもあった。また、海洋・陸域炭素吸収がCO2排出停止後の海洋熱吸収の減少による気温上昇を打ち消すことが示された。
2020年07月28日
発表者:塩竈秀夫(国立環境研究所 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室)
タイトル:2015年熱帯アジア森林火災への過去の温暖化の影響と将来変化
概要:2015年、熱帯アジアでは干ばつに伴う大規模な熱帯林火災が発生し、膨大な量のCO2が排出され、また深刻な大気汚染がもたらされた。この干ばつ、火災および火災に伴う大規模排出には、過去の人間活動による温暖化の影響があるのだろうか? また将来の気候変動によってどのような変化がもたらされるだろうか? 我々は、気候モデルMIROC5を用いた大規模アンサンブル実験を実施することで、過去の温暖化によって2015年の観測値よりも大きな干ばつの発生確率が統計的有意に増加していたことを示した。将来に関しては、たとえパリ協定の気候安定化目標(1.5℃/2℃目標)が達成されたとしても、干ばつ、森林火災、火災に伴うCO2排出量とPM2.5排出量が現在より統計的有意に増加することを予測した。これらの影響を低減するためには、火災を防ぐ森林管理の強化などの適応策が必要になる。また現在の各国の温室効果ガス削減約束を合わせても3℃温暖化してしまうと指摘されている。その場合、パリ協定の目標が達成されたケースに比べて、干ばつ、火災、火災に伴うCO2とPM2.5の排出が悪化することもわかった。言い換えると、この差はパリ協定の目標を達成するために追加の温室効果ガス削減を行うことのメリットを示している。
2020年02月04日
発表者:石橋聖也(筑波大学 生物資源科学専攻 博士前期課程2年)
タイトル:Sentinel-1&2とpix2pixディープラーニングを用いた, タイ東北における毎月のNDVI地図作成
概要:タイの東北地域において、農業は主産業である。当該地域では天水に頼った農業が行われており、気候や土壌も農業に不向きな側面がある。資源の最適利用や問題検出を行うために、地表面状態の通年観測が必要であり、それには光学衛星センサーによる観測が有用である。しかし、当地域の雨季において雲のために光学衛星センサーはほとんど観測ができない。本研究では、雲に左右されずに観測ができる合成開口レーダーのデータを用い、光学センサーによって得られるものと同等の情報を得ることを目的とした。Sentinel-2(光学衛星)から得られるNDVI (正規化差分植生指標)のデータを参照目標とし、Sentinel-1(合成開口レーダー)のデータを入力とするpix2pix(深層学習)によって、雨季も含めた通年の月ごとのNDVIの値を推定する手法を開発した。作成された毎月のNDVIマップは、検証写真との比較およびK-分割交差検証法で精度が検証された。検証写真を取得するために、対象地域内の25地点において、毎月の検証写真取得が行われた。検証写真との目視による比較では、植生変化とNDVI変化について相関が確認された。K-分割交差検証において、Sentinel-2から直接計算されたNDVIマップと当該手法により作成されたNDVIマップ間のRMSEは0.097であった。
2020年01月28日
発表者:菊島未来(筑波大学大学院 環境科学専攻)
タイトル:落葉樹林を対象とした定点撮影カメラと分光放射計による植物季節の観測
概要:人工衛星搭載センサが観測する分光特性を元に、展葉・紅葉・落葉といった群落フェノロジーを把握する研究が今まで行われてきた。しかし、センサの観測解像度が不十分な場合、複数の群落や樹種が混在する地域のフェノロジーは観測しきれていないことが報告されている。そのため、観測対象域全体の分光特性の観測に樹種の混在がどのような影響を及ぼすかの検討が必要である。今回は、岐阜県高山市の冷温帯落葉広葉樹林に設置された定点撮影カメラと分光放射計を用いて、その影響の検討を行った。本発表では、その検討の結果と考察について紹介する。
2020年01月21日
発表者:井手玲子(国立環境研究所 地球環境研究センター)
タイトル:立山室堂における融雪期の高解像度残雪分布モデル
概要:厳しい環境条件に適応した高山生態系は気候変動に対して最も脆弱な系である。多雪を特徴とする日本の高山帯においては、積雪や消雪時期が生物の活動時期を決定する重要な要因であり、数m~数10mのオーダーで高山植物が多様な群落を形成している。そのため、将来的な気候変動下での消雪時期を高解像度で予測することが求められているが、山岳域では気象観測が困難であり、消雪の時間的・空間的な変動には不明な点が多い。そこで、地球環境研究センターでは2011年から山小屋などに定点自動撮影カメラを設置して高頻度かつ高解像度で積雪・消雪と植生のモニタリングを行っている。本研究では、立山室堂の定点カメラの画像解析から画素ごとの消雪日を特定し、デジタル標高地形図(5m DEM)上に投影変換(オルソ化)することにより消雪日マップを作成した。さらに機械学習を用いて微地形因子と残雪の空間分布との関係を解明するとともに、消雪速度と気象条件との関係を示した。今回の発表では、立山室堂における残雪の時空間分布を1日毎に5m解像度で推定する統計モデルについて紹介する。
2020年01月14日
発表者:高倉潤也(国立環境研究所 社会環境システム研究センター 広域影響・対策モデル研究室)
タイトル:気候変動による労働現場における暑熱ストレス影響の全球規模での推計と適応策の検討
概要:気候変動の進行に伴い、屋外やエアコンが利用できない屋内で労働に従事する労働者は、より強い暑熱ストレスに曝される。これは、熱中症のリスクの増大や労働生産性の低下をもたらす。本研究では、気候変動による暑熱ストレスの増大が労働現場に与える影響を、暑熱ストレスの指標であるWBGTに基づき推計すると共に、経済モデルを用いて経済的影響について全球規模での分析を行った。加えて、気候変動に対する適応策についての検討も実施した。今回の発表では、本研究の内容に加えて、全球規模での気候変動影響研究で用いられる各種の社会経済シナリオやモデルについても紹介する。
2020年01月07日
発表者:染谷 有(国立環境研究所 地球環境研究センター 衛星観測研究室)
タイトル:衛星観測によって得られた中国でのCO2, CH4とNH3の関係
概要:近年、人工衛星によるアンモニアプロダクトが公開され、それらのデータを用いた広域的なアンモニアの挙動についての研究が盛んに行われている。GOSATは近赤外(SWIR)バンドと熱赤外(TIR)域の高波数分解能スペクトルデータを同時に観測でき、CO2, CH4のカラム量とアンモニア濃度を同一視野内で観測できる唯一の衛星である。本研究では、GOSATのTIRバンドからアンモニアの鉛直積算量を推定し、SWIR L2プロダクトとの関係を調べた。その結果、CO2-NH3、CH4-NH3の関係に中国北部の春季に正の相関、夏季に中国東部で負の相関が見られることがわかった。