2019年の履歴
発表履歴
1月1日 正月休み
1月8日 お休み
1月15日 17:30-19:00 安藤温子(国環研)
1月22日 17:30-19:00 小出大(国環研)
1月29日 17:30-19:00 劉旭(筑波大)
2月5日 17:30-19:00 Yongwon Mo(国環研)
2月12日 17:30-19:00 雨谷教弘(国環研)
2月19日 17:30-19:00 清野友規(国環研)
2月26日 17:30-19:00 神宮翔真(筑波大)
3月5日 17:30-19:00 河野なつ美(国環研)
3月12日 17:30-19:00 竹内やよい(国環研)
3月19日 日本生態学会(3/15~19)に合流
3月26日 17:30-19:00 中園悦子(森林総研)
4月2日 17:30-19:00 Truong Van Thinh(筑波大)
4月9日 17:30-19:00 三枝信子(国環研)
4月16日 お休み
4月23日 17:30-19:00 安立美奈子(筑波大)
4月30日 GW休み
5月7日 17:30-19:00 水落裕樹(産総研)
5月14日 17:30-19:00 中田聡史(国環研)
5月21日 17:30-19:00 押尾晴樹(国環研)
5月28日 17:30-19:00 奈佐原顕郎(筑波大)
6月4日 日本リモートセンシング学会(6/4~5)@東京電機大学 鳩山Cに合流
6月11日 17:30-19:00 吉本真由美(農環研)
6月18日 17:30-19:00 野田響(国環研)
6月25日 17:30-19:00 高尾信太郎(国環研)
7月2日 お休み
7月9日 17:30-19:00 板倉健太(東大)
7月16日 お休み
7月23日 17:30-19:00 池上真木彦(国環研)
7月30日 17:30-19:00 清野友規(国環研)
8月6日 17:30-19:00 村上浩(JAXA)
8月13日 お盆休み
8月20日 17:30-19:00 牧誠也(国環研)
8月27日 17:30-19:00 吉田勝彦(国環研)
9月3日 お休み
9月10日 17:30-19:00 吉田崇紘(国環研)
9月17日 17:30-19:00 福島路生(国環研)
9月24日 17:30-19:00@本館1棟3F第2会議室 朴 慧美(東大)
10月1日 17:30-19:00 神山徹(産総研)
10月8日 お休み
10月15日 17:30-19:00 平賀虹矢(茨城大)
10月22日 祝日休み
10月29日 17:30-19:00 佐川龍之(RESTEC)
11月5日 お休み
11月12日 17:30-19:00 笹川大河(筑波大)
11月19日 17:30-19:00 青野光子(国環研)
11月26日 17:30-19:00 市井和仁(千葉大)
12月3日 17:30-19:00 松下文経(筑波大)
12月10日 17:30-19:00 篠原碧(筑波大)&嶌田将貴(筑波大)
12月17日 17:30-19:00 Weng Qihao(Indiana State Univeristy)
12月24日 17:30-19:00 東祐太(木更津高専)&佐久間魁史(木更津高専)
12月31日 年末休み
2019年12月24日
発表者:東祐太(木更津工業高等専門学校 環境建設工学専攻)
タイトル:UAV搭載小型マルチスペクトルセンサの放射量歪に関する基礎検討
概要:UAVに搭載可能な小型軽量マルチスペクトルセンサ(MSS)の一種である,Parrot社製Sequoiaの放射量の歪を把握するため,3種類の屋外実験を実施した.第1の実験では,Sequoiaに付属する標準反射板を用いて,センサ,対象物および太陽の幾何学的位置関係の変動が,標準反射板の反射率の推定値ρ’にどのような影響を与えるかを調査した.第2の実験では,鉛直下向きに固定したSequoiaで標準反射板を一定時間継続観測し,推定値ρ’の時間的な変動を調査した.第3の実験では,硫酸バリウムを用いた自作した白色反射板を平面に配置し,白色反射板の反射率の推定値ρ’の変動に対する,センサ天頂角や周辺減光の影響を調査した.なお,反射率の推定には,市販のソフトウエアAgiSoft社製MetaShape Ver.1.5.1と自作ソフトウエアを用いて,両者の結果を比較した.今回の発表では,反射率の推定値ρ’の見かけの変動に影響を与える諸要因について報告するとともに,その補正手法を考察する.
発表者:佐久間魁史(木更津工業高等専門学校 環境建設工学専攻)
タイトル:UAV空撮画像と深層学習を用いた源流域小河川の倒流木把握
概要:本研究は,河川の瀬や淵の形成に寄与する倒流木の分布を,小型無人航空機(small Unmanned Aerial Vehicle;sUAV)による空撮画像を用いて効率的に推定する画像解析手法の開発を目的とする.sUAV空撮画像の解析には,深層学習の一手法であるConvolutional Neural Network(CNN)を用いた.現時点では,CNNを用いて構築した予測モデルの学習が不十分であり,倒流木だけでなく,何らかの線形構造が含む画像領域をすべて倒流木として誤検出している.そのため,空撮画像の目視判読による倒流木の検出よりも,低い正答率となった.今後は,学習データを精査し,モデルの学習過程の改善を行う必要がある.
2019年12月17日
発表者:WENG Qihao(インディアナ州立大学)
タイトル:光学リモートセンシングの新展開
概要:リモートセンシング技術の進歩に伴い、衛星画像の蓄積が増加しつつ、地球上のあらゆる場所において、時系列的分析や環境動態のリアルタイム評価が可能になる。本講演では、(1)衛星画像から有用な情報の抽出方法、(2)時系列の衛星画像を用いた都市化プロセスの特徴付けおよび定量化、(3)都市化による土地利用・被覆の変化が都市部における年内・年間気温の変化傾向に与える影響を、最新の研究例を挙げながら説明する。(スライド:英語,発表言語:英語)
2019年12月10日
発表者:篠原碧(筑波大学流域管理研究室)
タイトル:衛星を用いた開花情報の取得
概要:植物はそれぞれ開花,展葉,落葉などの特徴を有しており,これをフェノロジーとよぶ。植物によってフェノロジーはその時期や様態が様々であり, それらの特徴から樹種分類などの研究に多く用いられている。またフェノロジーは周辺の気象環境に大きく依存するため, 環境変動の評価にも有用である。本研究ではフェノロジーの中で開花に着目し, 樹種分類や環境変動の評価という観点で有用であるかを検証したいと考えている。開花情報の取得には衛星リモートセンシングを用いた。衛星リモートセンシングは広域を一度に観測できる点, 過去のデータへのアクセスが容易である点でフェノロジー関連の研究で多く利用されている。しかしフェノロジーに関する先行研究では展葉・落葉など葉に関するものが多く, 花について行われている研究は少ない。そのためまず本研究では WorldView3,Sentinel2など複数の衛星画像を用い, 開花情報が衛星から取得可能であるかを検討した。今回の発表では実際に衛星を用いて観測された花を紹介し, それぞれの開花時期にみられるスペクトルの変化, 抽出に適しているバンド・条件について考察し, 汎用的な花の抽出は可能であるかを検討する。
発表者:嶌田将貴(筑波大学 生命環境学群 生物資源学類 流域管理研究室)
タイトル:人工衛星画像を用いたアマゾン熱帯雨林における火災痕跡検出
概要:森林火災は地域社会と森林生態系に対して大きな影響を与え、また温室効果ガスの主要な排出源の一つである。これらの問題を考える上で、森林火災の特定及び火災影響領域の検出は重要な課題である。森林火災の影響は広域に渡って生じるため、衛星リモートセンシングはその検出に有効な手段となる。火災痕跡の検出手法として広く用いられている、閾値の設定による手法をアマゾン熱帯雨林の一部とその周辺領域に対して適用した。解像度の火災痕跡検出精度に与える影響について考察するため、解像度の異なる二種類の衛星 (Sentinel-2, GCOM-C) の結果について比較・検討した。
2019年12月3日
発表者:松下文経(筑波大学・生命環境系)
タイトル:リモートセンシングによる湖沼水質および流域環境変化のモニタリング
概要:湖沼における現象の把握および対策法の検討をするためには、時空間解像度の高い水質と流域環境の情報が求められている。一方、環境モニタリング経費は年々減少しているのが現状である。そこで、衛星画像から水質および流域環境の推定を行うための技術開発に期待が寄せられている。本発表は、衛星データから、湖沼の水質を評価するための重要な指標(クロロフィルa濃度、トリプトン濃度、CDOM、透明度など)、および流域の環境変化を表す指標(不浸透面面積、農地率)など、を推定するためのアルゴリズムについて紹介する。
2019年11月26日
発表者:市井和仁(千葉大学 環境リモートセンシング研究センター,国立環境研究所 地球環境研究センター)
タイトル:AsiaFluxなど地上観測ネットワークを利用した広域化研究の進展
概要:AsiaFluxデータなどの地上観測ネットワークデータを利用した広域化研究について、私のグループで行っている研究をいくつか紹介したい。具体的には、AsiaFluxと衛星データ、機械学習を利用したCO2フラックス広域化、ひまわり8号データを利用した30分など高時間分解能CO2フラックスの推定、など、セミナー当日までに得られた進展!?と今後の方針を紹介します。
2019年11月19日
発表者:青野光子(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)
タイトル:植物の環境ストレス応答機構解明について(特にオゾン!)
概要:日本では多くの大気汚染問題(二酸化硫黄、二酸化窒素等)が改善されてきたが、光化学オキシダント(オゾン)については、環境基準達成率が極めて低い(ほぼ0%、ここ20年の最高でも0.6%)。世界的にも汚染の高濃度化、広域化が進んでおり、人間の健康はもとより、樹木や農作物など植物への深刻な悪影響が強く懸念されている。オゾンによる日本のコメの減収率は最大10%とも言われ、また関東地方のブナ林の衰退の原因であることが指摘されているが、当該分野の研究者以外の人々の認識は決して高くない。しかし、今後予想されるグローバルな人口増加に対する食糧確保や気候変動下での環境保全にとって、オゾンの植物に及ぼす影響とそのメカニズムの解明はたいへん重要な研究課題である。我々はオゾンに対する植物の応答機構を解明するために、主としてモデル植物を用い、様々な施設や手法を用いて研究してきた。本セミナーでは、まずhistoryとして、生理・生化学的研究から得られた知見を基にオゾンによる活性酸素生成やその作用による障害の仮説を提案し、遺伝子レベルで検証した「オゾン等大気汚染物質応答に関与する遺伝子の単離と遺伝子操作による耐性植物の作出」について紹介し、次に現在行っているモデル植物の網羅的な遺伝子分析から得られた知見を利用した「分子遺伝学的研究による植物のオゾン耐性機構の解明」について報告したい。なお、オゾンの植物影響に関する研究についての一般向け解説として、環境儀67号を参照されたい。https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/67/02-03.html 2019年11月12日
発表者:笹川大河(筑波大学生命環境学群生物資源学類 流域管理研究室)
タイトル:マルチバンド人工衛星画像を用いた針葉樹の樹種分類
概要:我が国の国土面積の10 %以上は主伐期を超えた人口針葉樹林が占める。しかしながら林業従事者は減少しており、このままではこれらの森林資源を無駄にしてしまう。故にこの状況下で森林資源を管理・活用するためにはさらなる効率化が必要であると考えられる。そこで本研究では高解像度かつマルチバンドの人工衛星画像を用いて針葉樹の樹種分類を試みた。針葉樹林の樹種分布を推定し得るのなら、森林資源の管理・活用に大きく寄与できると考えている。分類のアルゴリズムとしてニューラルネットワーク(NN)を用いた。対象地域は筑波大学周辺とし、日本の主な針葉樹種であるスギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツのうち、筑波大学周辺に存在していないカラマツを除いた3樹種に針葉樹を分類した。またNNを解析することで樹種分類に重要な情報や精度が高くなる状況などについて考察した。
2019年11月5日
お休み
2019年10月29日
発表者:佐川龍之(一般財団法人リモート・センシング技術センター 研究開発部)
タイトル:沿岸域のマッピング技術の開発と活用事例
概要:高空間分解能の光学衛星データは水深20m未満程度の沿岸域の情報の効率なマッピングに適している。これまで、沿岸情報をマッピングする技術として、主に藻場と水深情報のマッピングに関する研究開発を行ってきたので、それぞれの技術の概要を紹介する。 藻場は、海草や海藻によって沿岸域に形成される群落で、海洋生物の生息場として重要である。しかしながら、藻場は埋め立てや富栄養化など主に人間活動により世界各地で衰退していることが報告されている。沿岸域の健全な環境を維持して持続可能な開発を行っていくには、藻場を管理して保全や回復を行う必要があるが、そのためには、藻場の分布や変化を正確把握する技術が不可欠である。そこで、リモートセンシングにより効率的に藻場をマッピングする技術を開発し、国内外のプロジェクトで実際に藻場のマッピングを行ってきた。 浅海域の水深情報は、航海の安全上重要であり、津波シミュレーションにおいても入力データの一部として必要である。既存の測量方法として、船舶からの音響測深や航空レーザー測深があるが、船舶や航空機がアクセスできる海域である必要があり、コストも大きいため、必ずしも十分なデータがない。衛星画像から水深情報を取得する技術はSDB(Satellite Derived Bathymetry)と呼ばれ、浅海域の水深情報の把握に適しており、近年光学衛星の空間分解能向上に伴い各国水路機関が注目している。そこで、SDBの実用化に向けた検証や新たな技術を取り入れた精度向上のための研究開発を行ってきた。 藻場とSDBでは目的が大きく異なるが、共に光学衛星のデータを解析に用いていることから、今後JAXAで打ち上げが計画されている先進光学衛星など、従来よりも高性能な光学衛星データの活用により、解析精度の向上や実利用の促進が期待される分野である。
2019年10月22日
祝日のためお休み
2019年10月15日
発表者:平賀虹矢(茨城大学農学部)
タイトル:機械学習を利用した植物形状生成の検討
概要:近年機械学習を利用した画像分類や物体検知が様々行われその精度の高さが注目されている。機械学習には生成モデルも存在し敵対的生成ネットワーク(GAN)はデータセットを利用して学習させた生成器を利用してデータセットと類似するデータを出力するネットワークとして注目されている。GANには数百の派生系が存在し、異なる画像間の補間・要素の入入れ替え、生成された人の顔の表情を変化させるなど生成画像の性質を変化させることが可能である。生成や補完、性質を変化させた結果の評価は概ね主観に沿ったものであるが植物の生理をモデルに反映させることで生育シミュレーションにも応用できると考えている。当日はこうした技術の紹介とGANを用いた生成結果・課題・今後の展望について議論をしたい。
2019年10月8日
モデレータ不在のためお休み
2019年10月1日
発表者:神山 徹(産業技術総合研究所 人工知能研究センター)
タイトル:広がる月校正の利用 ~地球観測衛星からはやぶさ2まで~
概要:リモートセンシングによる計測においてセンサが出力するデータ精度が担保されていることは、計測の信頼性や、その後の解析の正確性を議論する際に最も基本的な要素である。特に衛星搭載の光学センサは打ち上げ時の衝撃や軌道上での過酷な環境のため、その性能、特にセンサ感度が時間とともに大きく変化していってしまうことが知られており、可能な限り正確に、かつ継続してその感度変化を把握し補正することがデータの信頼性確保に重要である。近年、この課題に対して「月」を用いた月校正という手法に世界中で注目が集まっている。月は100万年という単位で明るさの特性が安定しており、他の校正手法に比べ圧倒的に(相対的な)校正精度が高いこと、また天然の校正光源として低コストに利用できる点で利点がある。本発表では打ち上げ後のデータ校正がなぜ必要かについて紹介・議論を行ったのち、産総研の月校正の取り組みとして大型衛星での実施事例・低コストな校正手法として小型衛星への適応・小惑星探査機「はやぶさ2」に用いられた結果の紹介を行い、リモートセンシングを支える技術としての月校正の利用の広がりを紹介したい。
2019年9月24日
発表者:朴 慧美(東京大学生産技術研究所)
タイトル:グローバル火災エミッションを考慮した泥炭地からの二酸化炭素収支推定
概要:泥炭地は有機土壌に富んだ湿地であり陸域の森林に固定された炭素を貯蔵する機能を持っているとされ重要である.特に熱帯泥炭地はインドネシアに多く分布しているが,人間活動による火災や伐採の運送のための水路の建設により泥炭地が劣化している現状である.特に泥炭火災は土壌中の有機物の燃焼につながるため他の森林火災より気候への負担が多く懸念される.そこで本研究は熱帯泥炭地の環境を保持する一番重要な地下水位を衛星データから推定しフラックスタワーで観測された土壌呼吸量および生態系呼吸量を推定した.衛星の光合成有効日射を用いているMODISの総一次生産量(GPP)を使い呼吸量と光合成の間の収支(Net CO2 Exchange, NEE)を計算している.さらに火災による二酸化炭素放出量をMODISのFire Radiative Powerプロダクトを用いて推定し人間活動によるCO2放出量を考慮している.地下水位や衛星データからのGPP、また呼吸量はフラックスタワーのデータで検証し,火災のエミッションはGlobal Fire Emissions Database(GFED)と比較した.
2019年9月17日
発表者:福島路生(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)
タイトル:Fish migrations and the effects of dams in Japan and Asia
概要:ダム、堰、落差工など河川を横断する様々な工作物が魚類をはじめ水生生物の移動障害を引き起こし、生活史を全うできないサケ、マス、アユなどの個体群が地域的に絶滅してきた。問題は日本だけにとどまらない。内水面の漁業生産が世界一のメコン川流域では、急速に進められるダム開発が食の安全保障を脅かしている。ダムによる流域分断の影響を、北海道とメコン川で解析した事例を紹介する。また現在進めている絶滅危惧淡水魚イトウの回遊行動に関する研究についてもお話ししたい。
2019年9月10日
発表者:吉田崇紘(国立環境研究所 地球環境研究センター)
タイトル:都市暑熱ストレスの空間統計分析
概要:地球温暖化の進行に伴い都市暑熱リスクへの対応は喫緊の課題となっている。しかしながら、暑熱環境は場所ごとに大きく異なり、また人々は都市空間を移動するため、個人の熱ストレスを把握することは必ずしも容易ではない。本研究では、個人レベルでの暑熱リスク評価に向けた第一歩として、航空機から観測された地表面温度データと携帯端末から取得された人流GPSデータを用いて、東京区部で流動する人々の暑熱リスクを定量化する。具体的には空間クラスタリング手法を用いて人流のホットスポットと、個人レベルの累積暑熱リスクの統計解析を行う。
2019年9月3日
モデレータ不在のためお休み
2019年8月27日
発表者:吉田勝彦(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 生物多様性保全計画研究室)
タイトル:生態系進化モデルを用いて外来種駆除後の生態系変化を予測する
概要:世界の様々な場所で外来種駆除などの自然再生事業が行われている。生態系は複数の生物種、環境要素が関係する複雑なシステムであるため、事業がうまくいかなかったり(例えばネズミの駆除の失敗Amos et al., 2016など)、思わぬ副作用が発生したりする危険も考えられる(外来ヤギ駆除後に別の外来種ギンネムの増加Osawa et al. 2018)。そのような事態を避けるためには、事業の効果や望まない副作用の有無などを事前に予測することが望ましく、その方法の一つにコンピュータシミュレーションがあり、気候変動予測や天気予報など、様々な分野で用いられている。生態系の回復事業に関してもその試みが近年始まっている(e.g. Raymond et al. 2011, Bode et al. 2015)。これらの研究は、Lotka-Volterra方程式を基盤とし、対象となる生態系の相互作用ネットワークをコンピュータの中に再現して操作実験を行っている。しかし相互作用ネットワークの形だけ似せればそれで良いのだろうか?生態系にはそれぞれ固有の進化の歴史があり、それに応じた生態系が成立している。例えば海洋島の生態系は外界から隔離されて進化するので、固有種率が高く、主要な分類群のいくつかが欠けた生態系が成立している場合が多い(e.g. Carloquist 1974)。つまり、個々の生態系が経験した進化過程を再現してこそ、それぞれの生態系を正しく再現でき、正しい操作実験が行えるのではないだろうか?そこで本研究では、Yoshida et al. (in revision)の物質循環モデルを利用し、海洋島の生態系を進化過程から再現するモデルを新たに開発した。このモデルを用いて海洋島の生態系の原始状態を再現した上で外来生物を侵入させ、一定期間後に駆除するシミュレーションを行った。本発表では、そのシミュレーションの結果を紹介した上で、さらに以前進化過程を含まないモデルで行った同様のシミュレーションの結果と比較し、両モデルの長所短所を議論する。
2019年8月20日
発表者:牧誠也(国立環境研究所 社会環境システム研究センター)
タイトル:深層学習法による逐次モニタリングエネルギーデータを用いた予測モデル・省エネ提案法・面展開法の開発と検討
概要:Society5.0ではIoT(Internet of Things)により、様々な人・モノのつながりにより情報を共有し、新たな価値・課題の克服を目指している。その中で、人工知能(AI)の活用による課題の克服が期待されている。現在、社会センターではインドネシア及び福島県新地町を対象にIoTの一種となるエネルギー消費量逐次モニタリングシステムを複数の業種の建物・工場に設置し、データの収集・解析を行っている。本勉強会では、IoTを活用したデータ収集及びエネルギー消費量データの解析のほか、AIの中でも予測モデルの構築法として期待される深層学習法によるモデルの構築法を説明し、本プロジェクトで開発の検討を行っているモニタリングデータの面展開法についての紹介を行う。また、深層学習法を活用したモニタリングデータのプロセス連結による省エネ提案法についても紹介を行う。
2019年8月13日
お盆のためお休み
2019年8月6日
発表者:村上浩(JAXA)
タイトル:GCOM-C(しきさい)による観測について
概要:2018年1月から観測を開始した気候変動観測衛星GCOM-C「しきさい」搭載の多波長光学放射計(SGLI)は,陸域や沿岸や雪氷の細かな分布を捉えられる250m解像度や,陸域のエアロゾルを高精度に観測できる近紫外波長や偏光観測機能などの特長を持っている.観測開始から約1.5年の間にも,カリフォルニアの火災によるエアロゾル,全球の植生の季節変化,沿岸の海面水温や海色,オホーツク海の海氷などの詳細な分布が観測されている.今回の発表では、いくつかの地球環境観測の事例を紹介すると共に、公開されているHDFデータから画像を作成する流れを紹介する。
2019年7月30日
発表者:清野友規(国立環境研究所 地球環境研究センター 衛星観測研究室)
タイトル:気候変動下のモンゴルにおける光化学反射指数PRIと太陽光励起クロロフィル蛍光SIFの経時変化
概要:陸域植生による光合成は炭素循環において重要な役割を果たすが、その推定精度向上には植物のストレス状態(光利用効率:LUE)の把握が課題となっている。衛星観測によって検知できる光化学反射指数PRIと太陽光励起クロロフィル蛍光SIFは、葉面積・クロロフィル量との相関が高い従来の植生指数(NDVI等)とは異なり、LUEおよび光合成のエネルギー分配に関する情報をもたらし得る指標として注目されている。葉が吸収した光エネルギーの内、光合成に利用されなかった一部は熱として散逸し、また別の一部は蛍光として再放出される。このエネルギー分配に関する情報は、原理的にはPRIとSIFの組み合わせによって推定できるが、季節変化を含む長期的な時間スケールや群落スケールにおける両指標の適切な活用方法は明らかでない。本発表では、気温上昇・降水パターンの変化が顕著なモンゴル周辺地域(2009〜2018年)を対象としたGOSATによるSIFとTerra/Aqua MODISによるPRIの経時変化および両指標に対する気象条件の影響などの初期結果を報告し、課題と今後の方針について議論する。
2019年7月23日
発表者:池上真木彦(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 生態リスク評価・対策研究室)
タイトル:身近な生き物の分布変化をフェノロジーデータから読み解くー気象庁生物季節観測からみたアキアカネの長期変動―
概要:秋の風物詩として童謡にも唄われるほど身近な存在であったアキアカネだが、近年急激にその数を減らしていると言われている。そしてアキアカネ個体数の減少が始まったとされる時期が、ネオニコチノイドなど新型の浸透移行性殺虫剤が普及した時期と重なることより、これらの農薬による負の影響が疑われてきた。しかし、アキアカネ個体数減少を示す経年的なデータはごく限られており、野外における農薬による個体数減少は未だ仮説の域を出ない。その傍らで、アキアカネは秋を代表する生物の一つとしてその生物季節が気象庁によって観測されてきた。生物季節観測は、生物の営みが何時起こったかを記録するものであり、個体数を記録した物ではない。しかしながら、観測地点の増減や個体数減少からくる観測日の遅延などを通じて対象とする生物の分布と個体数の変遷を全国規模で追える可能性を秘めている。そこでアキアカネや他の指標種の生物季節を解析した結果、アキアカネをはじめとして幾つかの種が各地で減少していること、高度成長期(1960年代)にも大幅な減少が起こった可能性があることが確認できた。その上で農薬や土地利用の変化がアキアカネをはじめとする身近な生物の分布消長に与える影響の評価を紹介したい。
2019年7月16日
モデレータ不在のためお休み
2019年7月9日
発表者:板倉健太(東京大学大学院 農学生命科学研究科)
タイトル:機械学習や3次元点群処理技術が切り拓く植物計測の技術革新
概要:近年の気候変動や世界的な人口増加を背景に、詳細な気候変動モニタリングや緑の保全、AIと協働した農業展開は人類が取り組むべき最優先課題だ。そこでは、植物の生育・分布状況やその他の状態をセンシングするための優秀な「目」が必要である。その課題で扱う複雑かつ多様に変化する対象に対し、機械学習や深層学習、3次元点群処理は親和性が高い。発表者は3次元センサー(lidar)等のセンサー情報と機械学習などの情報工学的手法と融合させ、自動的な樹木の認識や樹木情報の取得、農場レベルでの植物の画像解析などを行ってきた。そこでは、単一の手法・アルゴリズムでは対応できない問題を多く含み、対象に合わせて手法を最適化させる必要がある。特に、3次元点群処理手法と深層学習等の統合は取得可能な情報量や対象の認識精度を大きく飛躍させる。本取り組みにより、これまで多大な労力を要していた植物のモニタリングでの労力やコストを大幅に削減できる可能性がある。
2019年7月2日
モデレータ不在のためお休み
2019年6月25日
発表者:高尾信太郎(国立環境研究所 地球環境研究センター 大気・海洋モニタリング推進室)
タイトル:海色衛星による基礎生産および植物プランクトン分類群の推定
概要:海洋における純基礎生産力や植物プランクトン群集の違いは海洋表層から中深層への有機炭素輸送フラックスに影響を及ぼすため、その分布を広域かつ連続的に把握することは全球規模の炭素循環を理解する上で重要である。本発表では、海色衛星を用いた海洋純基礎生産力の推定に必要なパラメータの代表例であるクロロフィルa濃度(植物プランクトン現存量指標)の測定原理を始め、既存の基礎生産推定モデルの種類、海色衛星画像データから推定できる生物地球化学パラメータが温暖化などの気候変動に関する研究にどう応用されているのかについて紹介する。
2019年6月18日
発表者:野田響(国立環境研究所 地球環境研究センター)
タイトル:太陽光励起クロロフィル蛍光の季節変動
概要:近年,植生の二酸化炭素吸収機能のリモートセンシング研究において,太陽光励起クロロフィル蛍光(SIF)を利用した研究例が増えている。本発表では,主にGOSAT衛星データから得られた日本の冷温帯落葉広葉樹林,温帯常緑針葉樹林のSIFの季節変動パターンについて紹介するとともに,これらの変動と個葉/群落スケールのフェノロジーの関係について議論する。
2019年6月11日
発表者:吉本真由美(農研機構 農業環境変動研究センター 気候変動対応研究領域 作物温暖化応答ユニット)
タイトル:気候変動下のコメ生産の影響評価における群落微気象プロセスの重要性
概要:温暖化や異常高温によるコメ生産への負の影響が懸念されている。特に、高温不稔など高温障害は、出穂期や登熟期など特定の生育ステージにおける高温が減収や品質低下をもたらす。気候変動下のコメ生産の影響評価においては、その入手しやすさから、気象観測所等の一般的な気温データを参照することが多い。しかしフィールド条件においては、群落内外の熱環境にギャップがあり、一般的な気温データをそのまま適用すると、影響評価にエラー(uncertainties)を生じる。本発表では、開放系高CO2(FACE)実験や水田微気象モニタリングネットワーク(MINCERnet)など、観測や微気象プロセスモデルを用いてギャップによるエラーを克服する試みを紹介する。
2019年6月4日
日本リモートセンシング学会(6/4~5)@東京電機大学 鳩山Cに合流
2019年5月28日
発表者:奈佐原顕郎(筑波大学生命環境系)
タイトル:降水レーダーによる広域植生長期変動モニタリング
概要:JAXA/NASAは, 1997年以来, TRMM/PRおよびGPM/DPRという2つの衛星搭載降水レーダーによって、全球の低~中緯度をくまなく継続的に観測している。その主目的はもちろん降水観測だが、得られたデータのほとんどは実は無降水時のものであり、それらは地表面(および海表面)の状態を反映している。それらを用いて, 広域の陸域植生の動態を抽出したい。というのも, 広域陸域植生の動態は普通は衛星搭載光学センサーによる植生指標(NDVIなど)を用いて行われるが、それは雲の影響を受けやすく、また、太陽高度や衛星観測方位の影響(BRDF効果)も受けやすく、系統的なノイズが乗りがちである。光学センサー以外には、衛星搭載合成開口レーダーやマイクロ波放射計による観測もあるが、前者は長期継続的なデータがまだ無く、後者は解像度が数10 kmと荒い。ところが、上述の降雨レーダーは長期連続で比較的良い分解能(5 km)のデータが揃っている。これは光学センサーによる植生指標とは独立のアプローチであり、それを裏付けるもしくは否定するような重要なシグナルを提供してくれる可能性がある。
2019年5月21日
発表者:押尾晴樹(国立環境研究所 地球環境研究センター 衛星観測研究室)
タイトル:GOSATによる太陽光誘起クロロフィル蛍光の観測
概要:Satellite remote sensing of solar induced chlorophyll fluorescence (SIF) has attracted attention as a method for improving the estimation accuracy of photosynthetic production of the terrestrial vegetation in recent years. The Greenhouse gases Observing SATellite (GOSAT) has an ability to observe both SIF and the concentrations of CO2 and CH4 and thus is expected to contribute to understanding of the global carbon budget. Evaluating artifact signals is effective to infer the instrument status and important to retrieve SIF from satellite measurements. Here we investigate the criteria for identifying vegetation-free areas to evaluate the artifact signal and its correction method, while comparing the derived SIF with the Orbiting Carbon Observatory-2 (OCO-2) SIF at multiple spatial scales (footprint to global). GOSAT SIF that was most consistent with OCO-2 SIF was obtained when the artifact signal was evaluated from bare soil over the globe, with a bias of about 0.1 mW m-2 nm-1 sr-1. Our results support the consistency among the present satellite SIF data, which is important to utilize the SIFs. Temporal variation of the artifact signal for 9 years suggests that the radiometric sensitivity of the GOSAT spectrometer changed after switching the optics path selector in January 2015.
2019年5月14日
発表者:中田聡史(国立環境研究所 地域環境研究センター 海洋環境研究室)
タイトル:高解像度衛星から観る沿岸海洋に分布した河川出水と生物生産
概要:2010年以降、可視画像を収集できる衛星の高解像化に伴って、沿岸海域においても様々な衛星プロダクトが得られるようになった。本講演では、新しく開発した海面塩分プロダクトやクロロフィルaの高解像衛星画像から、河川出水によって沿岸海域に形成されるプリュームとそれが生物生産に与える影響ついて紹介する。
2019年5月7日
発表者:水落裕樹(産業技術総合研究所)
タイトル:複数衛星データの統合利用技術を用いた森林消失自動検知システムの開発
概要:大規模な森林減少がつづく熱帯地域では、現地踏査の困難さから、人工衛星データによる森林の自動監視が欠かせない。光学衛星センサを用いる古典的な森林消失監視では、曇天時に地表が見えなくなるため、頻繁に雲に覆われる熱帯地域では観測のリアルタイム性に欠けるという課題がある。一方で、高解像度かつ雲を透過して地表観測が可能な能動型マイクロ波衛星センサは、スペックルと呼ばれるノイズが生じることや、伐採後に積み上げられた材木と未伐採の立木の区別がつけづらいことなどから、森林消失の検知精度が必ずしも十分でない。そこで本研究では、能動型マイクロ波センサと中分解能光学センサを組み合わせてお互いの弱点を補うことで、曇天地域でも高いリアルタイム性と精度をもつ森林消失自動検知システムを提案する。データ蓄積の豊富なLandsatデータと、データ蓄積の限定的なASTER、PALSAR-2でそれぞれ異なる手法により森林消失シグナルを抽出し、これをベイズ的土地被覆アップデート法(BULC)により統合することで、時系列に整合した高頻度の森林消失マップを作成した。本発表ではアルゴリズムの概要と、統合の初期結果について報告する。
2019年4月30日
GWのためお休み
2019年4月23日
発表者:安立美奈子(筑波大学・生命環境系)
タイトル:冷温帯アカマツ林における土壌呼吸および樹液流束速度の観測
概要:生態系の炭素循環において土壌呼吸量は、光合成生産量の次に大きな炭素の流れであるため、長年多くの生態系において研究が進められてきた。土壌呼吸量の半分近くを占めると言われる根の呼吸は、地温だけでなく樹木の光合成や水分生理と深く関係すると考えられる。本研究では、土壌呼吸速度と植物の生理活性に関係性があるかを検証するために、冷温帯のアカマツ林の樹液流束速度と土壌呼吸速度の日変動および季節変動と環境要因との関係を解明することを目的とした。本発表では、2018年度のデータを解析した結果を報告する。
2019年4月16日
モデレータ不在のためお休み
2019年4月9日
発表者:三枝信子(国立環境研究所 地球環境研究センター)
タイトル:パリ協定への貢献に向けた地球システムモニタリング・予測へ向けた研究の展望
概要:地球温暖化の進行を抑えるため、人間が出す温室効果ガスの排出を減らす必要があります。「パリ協定」は今世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指す国際的協定ですが、その達成は容易ではありません。世界各地で観測される温室効果ガスの濃度、エネルギー消費などの統計データ、大気の流れを再現する数値計算モデルなどを組み合わせ、温室効果ガスの人為的な排出や自然の吸収をとらえようとする最近の研究を紹介します。
2019年4月2日
発表者:Truong Van Thinh(Graduate School of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba)
タイトル:Forest / Non-forest mapping for Vietnam Using PALSAR-2 time series images
概要:Vietnam is a tropical country where the forest cover accounted for 40 % of the total land area. Mapping forest / non-forest (FNF) in Vietnam is extremely needed to many purposes such as climate studies, land use/land cover assessment, and land use management. The development of Synthetic Aperture Radar (SAR) technology has facilitated forest / non-forest mapping since this technology allows to observe earth surface regardless day or night. This study aims to establish forest / non-forest maps for Vietnam from 2015-2018 by exploiting ScanSAR images from PALSAR-2 sensor which aboard the ALOS-2 satellite of JAXA. By creating FNF maps for Vietnam, the study expects to assess the changes in forest cover and to analyze the reasons for these changes. In this study, the kernel density estimation (KDE) algorithm will be employed for land cover classification. A classification software named SACLASS which was developed by JAXA and University of Tsukuba will be used to make annual land cover maps for Vietnam from 2015 to 2018, then the forest / non-forest maps will be created based on these land cover maps.
2019年3月26日
発表者:中園悦子(森林総合研究所)
タイトル:空中写真のススメ~PhotoScanの試行錯誤
概要:空中写真を用いて現地に行く前に、白神岳のブナの変化を検出する。ずれても構わない、ある程度は目視判読で何とかする、という前提でPhotoScanでオルソ画像を作成した際の試行錯誤について発表する。
2019年3月19日
日本生態学会(3/15~19)に合流
2019年3月12日
発表者:竹内やよい(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 生物多様性評価・予測研究室)
タイトル:低高度リモセン技術を用いた林冠3D構造の復元手法と生物多様性指標の開発
概要:本研究では、安価で簡便な近接リモセン技術を活用し、林冠モニタリング手法と林冠状態複雑性と生物多様性を示す指標を開発することを目的とした。マレーシア・パソ保護林内の6haプロットを対象として、2016,2017,2018年度にドローンを用いて空撮及び森林調査を行った。林冠構造を構築するために用いるドローンの飛行条件(高度・オーバーラップ率・カメラ撮影条件・地上基準点の設置)などを設定した。得られた写真を用いて、Structure from Motion(SfM)技術による林冠3D構造の復元を行った。2016,2017年の林冠高モデルを構築し、林冠構造指標(林冠高平均・最大値・ギャップ率、3D/2D比)を得た。林冠構造の解析により、各年林冠高の平均は30-33m、最大57m, 7-9%(樹高<15m)のギャップ率であった。また、1年間で2%程度ギャップが増加していた。さらに、樹木種多様性指標との林冠構造指標の相関を検定するため、空間自己相関を考慮した条件付き自己回帰モデルをベイズ統計解析した。結果、樹高の指標が高い区域ほど種多様性が高くなることが分かった。
2019年3月5日
発表者:河野なつ美(国立環境研究所 地域環境研究センター 大気環境モデリング研究室)
タイトル:Weather Modelling of Urban Heat Island in Megacities Using Distributed Urban Parameters Derived from Global Datasets
概要:The urban heat island (UHI) phenomenon is characterized by warmer air temperatures in urban areas compared to the surrounding countryside. According to the United States Environmental Protection Agency, the direct impacts of UHI includes increased energy consumption, elevated emissions of air pollutants and greenhouse gases, compromised human health and comfort, and impaired water quality. Modifications to climate such as local thunderstorms are also linked with the occurrence of UHI. Weather models such as Weather Research and Forecasting model coupled with single-layer Urban Canopy model (WRF-UCM) are powerful tools to investigate UHI. The model requires urban parameters as inputs. Traditionally, urban parameters are uniformly assumed in the WRF-UCM but this leads to unrealistic urban representation. Distributed urban parameters calculated from real building distribution can also be incorporated into the model to consider urban effects together with improvement in their parameterization. The problem is that distributed building information is not readily available for most megacities such as those belonging to developing countries. Furthermore, detailed study of UHI in developing megacities still remains a challenge due to the lack in reliable meteorological observation data. In this study, we addressed the issue of urban representation by using a simplified method derived from globally available data. (発表は日本語で行います)
2019年2月26日
発表者:神宮翔真(筑波大学 生命環境科学研究科 国際地縁技術開発科学専攻)
タイトル:牛久自然観察の森を事例とした農用林から公園緑地化した林野における景観の変遷
概要:本研究は,農用林から公園緑地への利用目的の変化による影響を受けた森林において,その景観の変化を明らかとした。農用林がレクリエーション利用のために再活用された「牛久自然観察の森」に着目し,空中写真・地形図などを用いた時空間的な分析,関係者への聞き取り調査,および文献調査を実施した。その結果,2つの森林それぞれにおける「多様な」景観が,全く異なる起源であることを明らかとした。農用林では,周期的な伐採や林床植生の採集など,モザイク状の土地利用により,ある植生の様々な成長段階にもとづく多様な景観が生まれた。これとは対照的に,自然観察の森での多様な景観は,来訪者への様々な自然体験をもたらすことを目的とした,様々な植生群落を形成する管理によって形成されていた。管理者の意図する体験のために整備された森林景観のひとつには,過去の農用林時代に見られた景観の再現が含まれており,それが管理努力のかなりの割合を占めていた。しかし,その管理には,景観維持にとって重要であるにもかかわらず,伐採は含まれていなかった。これらの結果は,里山の現代的活用においては,伝統的とされる景観の再生は大きな負担であり,特に伐採の実施が難しい現状を表している。
2019年2月19日
発表者:清野友規(国立環境研究所 地球環境研究センター 衛星観測研究室)
タイトル:地上リモートセンシングによる実大スケール建物外表面の対流熱伝達率分布の計測
概要:本研究では、空調エネルギー消費量やヒートアイランド現象に重大な影響を与えるパラメータである建物外壁面の対流熱伝達率(CHTC)について、その時空間分布を遠隔計測する手法を提案する。提案手法は、水の吸収波長帯を用いた3Dレーザースキャナーと濾紙蒸発法を組み合わせ、熱・物質輸送の相似性からCHTCを推定するものである。我々は都市郊外での実大スケール建物(約3×3×6m)を対象とした冬季屋外実験(強制対流条件、Re≈6×10^5、測定距離約6.3m)を行った。得られたCHTC推定値の時空間分布は、風の乱れが強い都市環境を想定した既往研究の風洞実験結果と整合的であった。提案手法を誤差評価した結果、レーザー反射強度を蒸発量に変換する計算過程での、パルスの出力変動に由来するランダム誤差、およびそのランダム誤差がCHTC推定値に与える影響を決める環境要因である飽差が、最大の誤差要因と分かった。提案手法は、数分~数10分程度の時間スケールでの屋外風速の変化とCHTCの関係を議論する上で有効と考えられる。
2019年2月12日
発表者:雨谷教弘(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 生物多様性保全計画研究室)
タイトル:高山帯における空間情報を用いた植生変化の定量化と拡大部分の特徴
概要:近年の気候変動の影響によって、高山帯での植生変化が示唆されている。日本の高山帯の変化の特徴として、高山帯でも大きなバイオマスをもつハイマツとササの分布拡大がある。ハイマツとササは、その高いバイオマスから土壌栄養状態の改変や、高い背丈による被圧など、他の高山植物に対して大きな影響を持つことが示唆されている。一方、ハイマツとササは航空写真や高解像度衛星画像から判読が可能である。そこで北海道大雪山(五色ヶ原)で1977年・2009年の航空写真と2017年の高解像度衛星画像(WV2)を用いた3時期の被覆率(50ha)、40年間(1977-2017)の広域(約200㎢;北部・中部大雪)の被覆率の変化の定量化を行った。その結果、ハイマツとササの加速度的な増加、並びに生育環境に対する拡大の選好性が認められた。更に本州(立山)のハイマツとササの分布変化も大雪山の分布拡大率と近似していたことから、他山域でも拡大が予測され、全国の高山植生変化の基礎的な情報として、ハイマツとササの定量的な分布変化の把握が求められる。
2019年2月5日
発表者:Yongwon Mo(国立環境研究所 気候変動適応センター)
タイトル:Influences of planning unit characteristics in landscapes dominated by different land-Cover types on systematic conservation planning
概要:The shape and size of planning units (PU characteristics) at the initial stage of regional systematic conservation planning (SCP) can strongly affect the final portfolio. In previous studies, the influence of PU characteristics has typically been considered for single study sites that include single to multiple natural land cover types. The impacts of PU characteristics in areas dominated by something other than natural land cover types have not been examined, yet the majority of landscapes contain some extent of human land use. We identified the influence of PU characteristics for areas dominated by a combination of land use and land cover types by using MARXAN software and excluding the impacts of boundary length. We show that the magnitude of the influence of PU characteristics differs depending on the dominant land-cover type. Areas dominated by forest were less sensitive to PU characteristics, whereas areas dominated by agricultural land cover were the most sensitive. In areas dominated by urban land cover, the increase of sensitivity to PU characteristics was more apparent than in the other areas. Therefore, when establishing regional conservation plans, setting the initial conditions considering the dominating land-cover type is necessary.
2019年1月29日
発表者:劉旭(筑波大学大学院 システム情報工学研究科 社会工学専攻 緑地環境研究室)
タイトル:もし311が発生したのが真夏だったらー震災後の帰宅行動と熱環境上のリスクに関する研究ー
概要:2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し、震災直後には短時間で大勢の人が駅に押し寄せ、駅周辺では大きな混乱が生じた。一方で、近年地球温暖化や都市化によるヒートアイランド現象が発生し、都市の熱環境悪化が深刻化している。ヒートアイランド現象や地球温暖化が進む中で、もし東日本大震災のような災害が真夏に発生し、当時と同じく駅付近での大混雑が発生したら、多数の人が熱中症になる恐れがある。震災で鉄道やバスなどの各輸送機関が麻痺して適切な治療を受けられない時に、大変危険な状況になると考えられる。従って、人口密度の高い地域の熱中症リスクを評価し、事前に対策を講じる必要性があるといえる。そこで、本発表では災害の二次災害を防ぐために、震災後帰宅行動中の熱中症リスク評価の方法、手順及び結果について紹介する。手順としては、まず熱環境のシミュレーションを行うことより、対象地の熱環境を解明する。次に現地の状況に基づいて人の帰宅行動をシミュレーションを用いて予測評価することにより、混雑時の群衆行動を把握する。そして、熱環境と帰宅行動の状況を合わせて熱中症リスクの評価を行い、その結果を踏まえ、現存する都市の緑の計画手法について提案を行う。分析結果から、熱中症リスクが非常に高くなる状況が観測されるとともに,熱環境上のリスクが高い場所が抽出された。さらにリスクが高い場所の熱環境の特性、現存の緑と群衆の状況を分析した結果、現存する都市の緑地が熱中症リスクの低減に貢献していないことが示された。熱中症リスクの高い場所のシミュレーション結果からは、民有地の緑化は行われているが、人が立ち入れないことと、熱中症リスクを緩和するのに役立つ木陰を提供してないことが明らかになった。最後にこれらの知見を踏まえて、既存の緑地の改修の方向性を検討した。
2019年1月22日
発表者:小出 大(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター センター長室)
タイトル:MODISを用いた白神ブナ林の紅葉解析とその将来予測
概要:紅葉は観光資源として重要な生態系サービスとなっている一方、展葉期間との関係から陸上植生の炭素蓄積機能にも関係する重要な観測対象と言える。春先の展葉は早まる傾向が殆どであるのに対し、秋の紅葉や落葉は地域によって早まる報告も遅くなる報告もあるなど、観測と解析の拡充が必要とされている。そこで本発表では白神山地世界自然遺産地域におけるブナ林の紅葉を衛星から観測し、気候値との対応関係を解析して将来予測を行なった事例を紹介する。Terra・Aqua衛星に搭載されたMODISセンサーのデータを用いて解析を行なった。衛星から観測した晩夏から冬季にかけてのVARI指数の変化を、寒さの積算値を使ったdouble logistic関数でモデル化し、さらに場所による紅葉期間と最大VARI値の違いをグリッド毎の5-10月平気気温を用いて表現した。将来予測の結果、MIROC5のRCP8.5シナリオでは1ヶ月ほど紅葉時期が遅くなる傾向が示された。年による気候値のばらつきによっても最大20日ほど紅葉のピーク日は変化したが、計算したシナリオではこの年々変動を上回る変化が予測された。
2019年1月15日
発表者:安藤温子(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 環境ゲノム科学研究推進室)
タイトル:Historical and Recent Impacts on Genetic Structure of an Island Rabbit
概要:Population fragmentation can reduce genetic diversity and increase the extinction risk of island endemic mammals, especially those with low dispersal ability. However, the intra-island genetic structure and demographic history of mammals have not yet been well evaluated, especially on small geographic scales.We performed a genetic analysis of isolated island populations of the Amami rabbit (Pentalagus furnessi) on Tokunoshima Island using mitochondrial D-loop region sequences and 8 nuclear microsatellite markers. Using data from fecal samples, we detected 2 genetic groups that corresponded with the northern and southern forested areas of the island based on the mitochondrial and nuclear genomes. We detected some admixture between the 2 groups in the nuclear genomes but did not detect gene flow between the 2 groups in the mitochondrial genomes. Although genetic diversity was higher in the southern population than in the northern population, the fixation index showed higher levels of inbreeding in the southern area with a signal of a recent bottleneck. We inferred the divergence time between the northern and southern groups (4,320 years ago) using approximate Bayesian computations. These genetic structure patterns may have been generated by a combination of the demographic history of the species in relation to the geology of the island, human activitis in the stone age, deforestation due to sugar plantations (beginning approximately 300 years ago), and recent human activities. This study highlights the importance of considering genetic structure in relation to complex factors within a single-island habitat for appropriate genetic management of endemic mammals on islands. (発表は日本語で行います)
2019年1月8日
モデレータ不在のため、お休みとします。
2019年1月1日
お正月のため、お休みとします。