仕切りベンチ
西川徹くんの卒論「川崎市中原区における仕切り付き公園ベンチの基礎的調査研究」が明らかにした成果をベースに、しばしば地域調査などの入門エクササイズとして、これまでも学生へ情報提供してきました。
広く参加可能な調査方法論の開発としても、興味深い卒論でした。
埋もれさせるには惜しいので、研究室サイトで要点を紹介します。
なおベンチの写真と一覧表は、全て西川徹くんの調べたものです。
対象と方法
調査対象は、川崎市中原区の公園に設けられた仕切り付きベンチ。 調査方法は、実際に公園を訪問し、ベンチを数え、仕切りベンチがあればその形態をチェックした。
(根気さえあれば)誰しも可能な調査方法を徹底することで、日常的な意匠の発見に努めた。
調査結果
調査する過程で、ひとまず仕切りを以下の4タイプに分類した。
ブロック・タイプ
https://gyazo.com/b74c3d3afcd57c0085cd2c5f3668a9dd
あたかもブロックが置かれた形状。
加工はおそらく一番容易。極論すれば木っ端で可能。
ガンマ・タイプ
https://gyazo.com/1f59d7c4660ffdccdbfef72175b3a948
ギリシャ文字のガンマ(Γ)から。
座面と背もたれ部分とを接続すると、この形状になる。
ブロック・タイプに比べ、加工はやや難易度が上がる。
デルタ・タイプ
https://gyazo.com/2a9a575f79426deff92c5991a45ac5ba
ギリシャ文字のデルタ(Δただし逆さま)から。
座面にのみ接続すると、この形状になる。
既存のベンチに後付けするだけでなく、当初からデザインされたモノもある。
アーチ・タイプ
https://gyazo.com/0a9336b322e8a28d3f44b309b4d022c5
座面から生えたようなアーチ状。
本格的加工が必要。基本的には最初からデザイン加工されたモノ。
まとめ
仕切りベンチがあったのは、全98公園中、28公園。
以下の「川崎市中原区の仕切りベンチがある公園一覧」表を参照。
https://gyazo.com/ea8f941329352dbf7ea4019af528c370
なお最左列「番号」は、調査者が仮に付した、調査対象公園の通し番号。
仕切りベンチの多寡は、地区で偏りがあるらしい。
以下の「地区別の公園数と仕切りベンチ」表が示すように、大戸地区だけ、仕切りベンチ率(区の総公園数に対する、仕切りベンチがある公園数)が低い。大戸地区にはかなりの公園数があるので、大戸地区の存在が、仕切りベンチ率の全体平均値を下げているとすら言える。
https://gyazo.com/ca87b6905de073be22d5e28ec48817d5
大戸地区は、中原区としたら中心から外れているが、駅がないわけではなく、
公共施設からの距離が関係ないかと、比較検討を試みた。
川崎市中原区役所(小杉地区)からの距離別一覧表
https://gyazo.com/a9ca58bafc8a86f69902d041139c2158
区役所からの距離は、仕切りベンチ率に影響を与えないと思われる。
武蔵小杉駅(小杉地区・丸子地区)からの距離別一覧表
https://gyazo.com/9e487b7457c95ab32dbcc9edd2afde7f
武蔵小杉駅からの距離は、仕切りベンチ率に影響を与えていると思われる。
下に示す武蔵中原駅のそれと比較すると、明瞭になる。
武蔵中原駅(大戸地区)からの距離別一覧表
https://gyazo.com/5a960f16a1d502ee0e14be674aedbcba
武蔵中原駅からの距離は、仕切りベンチ率に影響を与えていると思われる。
上に示した武蔵小杉駅からの距離とは逆の意味である。
「役所に近いから」「駅に近いから」と、単純な指標で仕切りベンチが分布しているわけではない。それだけは明確にいえる。
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