【問】卒業研究に関連する参考図書を読んだのですが、具体的な進め方が今ひとつ分かりません。何から手を着ければよいでしょう?
【答】まずはゼミで出される細々とした課題に、きちんと取り組みましょう。そのような細々とした課題群は、基礎力をつけるエクササイズになっています。
ゼミの目的は、卒業研究を遂行し、よりよい卒業論文としてまとめることです[*]。こう書くと、ならばよりよい卒業論文さえ完成すれば問題ない、と言い出す輩もいることでしょう。けれど、「結果だけ出せばよい」と宣うことができるのは、実際、過去にそれなりの結果を出した人だけです。そして、ほとんどすべてのゼミ生が、卒業論文を完成させた経験がないままに、研究室に配属されます。
つまるところ卒業研究とは「研究に携わったこともなく、ましてや論文を書いたことも(または、論文を読んだことすら)ない人に、一定水準以上の研究論文を書かせる」プロジェクトなのです。
換言すると、あるゲームのルールも何も知らない人にゲームさせて、それなりに勝たせるようなものです。基本的に、勝たないかぎりゲームは終わらない……強制コンティニュ(リトライ?)か、ゲームオーバ(リタイア?)か、基本的に二択です。無茶苦茶ですね。でもこれ、いわゆる社会でいう《新人が仕事を覚える》こと、つまり社会人として「その仕事に携わった経験もないのに、一定水準以上の成果を出す」ように要求されることと、類似の構造なのです。
ゲームの比喩を、続けます。先ほど「ルールも何も知らない人にゲームさせて、それなりに勝たせるようなもの」と書きましたが、どうすればゲームに勝てると思いますか? ひたすらゲームを続ける? ネットで攻略法を探す? 上手な人に攻略法を教わる?……さて、ここで視点を替える必要があります。諸君の眼前には、「ルールも何も知らない人にゲームさせて、それなりに勝たせる」=「研究に携わったこともない人に、一定水準以上の論文を書かせる」ことを仕事としている人が、いませんか? その人にきちんと「教えてください」と学ぶ姿勢を示しましたか? まさか、こちらから質問しなくても察してくれるだろう、なんて思いではありませんよね?
*土居も含めたゼミメンバ相互のコミュニケーションが円滑になることが望ましいのは、それが目的だからではなく、あくまで「よりよい卒業論文としてまとめる」目的を達成するための手段として、望ましいからです。