算数の幹についての文章
ポイントは「自己コントロール感」
宿題の面白くなさの原因の1つには「作業的でやらされ感満載な内容」にあると考えています。よって、宿題を面白くしようと思えばその逆の「創造的で自分でやっている感満載の宿題」を目指せばいいということになります。
ありがたいことにいま全国に広がっている「けテぶれ」という実践は「自分にあった学び方を模索する」というテーマのもと、計画テスト分析練習のサイクルを回すという宿題の在り方です。これは一つの「創造的で自分でやっている感満載の宿題」のアイディアと言えると思っています。けテぶれに関する情報はネットや本にたくさん載っているので、ここではけテぶれとは違うアプローチを紹介します。
学習効果と負担軽減の2つを同時に狙う
日々算数プリントを宿題に出しているという学級は多いのではないでしょうか。しかし毎日毎日、宿題用のプリントを印刷するは結構面倒じゃないですか?やるべきことに追われているとついつい忘れてしまったり、終わりの会の最中に思い出して、急いで印刷をしにいって子どもたちからブーイングが出たり…。少なくとも僕の新任時代はそんなことを繰り返していました。
さらに、なぜ子どもたちからブーイングが出るかといえば、課される算数プリントが面白くないから、ですよね。教師にとっても面倒くさい、子どもたちにとっても面白くない。これをなんとか変える方法はないか。そう考えて作り出したのがこの「算数科の幹」という学習プリントです。学習の効果については後述しますが、これを使えば宿題プリントはこの用紙を大量に印刷しておくだけで済みます。これは大きな負担軽減になりますよね。
授業と宿題を接続する
子どもたちはプリントの左上の「式」に数式を書き込むことから始めます。その後は、式を簡単な言葉に翻訳し、その言葉の内容を絵図化し、具体的な情報を付け加えて、文章化します。そして右のページではそのお話に出てくる数字のどこかを隠して、文章問題化します。「宿題」はここまでです。
それを学校に持ってきて、算数の授業で友達と交換するのです。このプリントを二つ折りにして、文章問題の方を向ければ、シンプルな文章問題プリントになります。先生がどこかの問題集からコピーしてきた問題よりも、友だちが作った問題の方が解きたくなりますよね。さらに、裏を見れば、絵図付きの解答が載っているので自分で答え合わせまでできてしまいます。プリントを交換して、解いて、答え合わせをして返す。慣れてくれば10分以内で完了します。
低中学年で四則演算を新たに習う時なんかに「算数の幹」を宿題にすれば、授業で習った式の意味を意識して、文章問題をつくり、学校に来れば友だちが作った文章問題を解くという授業と宿題を接続したサイクルができます。授業中に演習問題が速く終わってしまった子用の発展問題としても使用できます。
何を反復させるかに意識的になる
毎日の宿題で計算問題だけはたくさんこなし、できるようになる子が多いです。しかしそのような単純な計算練習だけでは、その算式が現実のどのような場面を表しているのかを理解することはできません。確かに学校の授業では数式の意味についての授業はなされるでしょうが、家に帰って宿題をするときにも、その授業内容を意識しながら、計算ドリルに取り組んでいる児童は稀有でしょう。大抵の子どもたちは、「計算ドリルを終わらせること」を目的に、ただ作業的に計算をしているだけではないでしょうか。その結果算数の力は計算能力に偏り、意味理解が抜け落ちることで文章問題の苦手意識を作っているのではないでしょうか。
反復的な計算練習がダメだと言っているわけではありません。速くて正確な最低限の計算能力は算数的な思考をするために必要ですし、その能力の獲得には大量の練習が必要です。僕の主張はこれ「だけ」ではいけないのではないか、という主張です。
「算数科の幹」では、数式の意味をまず短文で表し、その分が表す内容を絵図化し、その絵図が表す情景を文章化するわけですから、数式の意味に意識を向けさせることができますし、その何処かを「?」とし、文章問題の制作過程まで体験できます。そして学校に来て友達と交換すれば、今度は「数式」から「お話」まで変換したのとは逆方向に、「お話」の中から数学的な意味を取り出し、「絵図化」し、絵図を数式化するという流れを体験できます。
このように、数学的な意味に着目して複数の表現形式に翻訳していくような活動を毎日行うことによって、子どもたちに式の意味を深く理解する機会を提供することができると考えています。
更に、多くの子が文章問題に苦手意識を持つ原因には「経験料の不足」もあると思います。計算ドリルの宿題には計算問題に対して文章問題の掲載数は少ないです。算数プリントを配るにしても、毎日異なる問題を見つけてくるのはかなり難しいでしょう。その点、算数科の幹では、学校に来れば毎日新たな文章問題を1問解く事ができますし、宿題では文章問題を自分で作る、という経験も毎日積むことができます。
文章問題の苦手意識の克服という目的に対して、文章問題を解く機会と自分で作る機会を毎日設定する、というのは有効なアプローチではないでしょうか。
ゆるく楽しむ
慣れてくると子どもたちは、本当に楽しそうに取り組むようになります。やらなければ怒られる、ではなく、やると楽しい。宿題に対してそう捉えられるようになると、自然と学びも深まっていくのではないでしょうか。