学習力のABC+1:ルーブリックの使い方(基礎)
学習力のABC+1:ルーブリックの使い方(基礎)
こういう振り返りの視点は、ただ紹介されただけで使えるようになるものでもありません。本質的に自分を振り返るためには、自分の行動を本質的に振り返ろうとする経験が大量に必要です。だから、全授業、全宿題、できるだけ多くのタイミングでこれを使って振り返る機会を設けることをおすすめします。しかし「自己評価」だけでは本当にその子が自分のことを正しく評価できているかわかりませんよね。本当はたくさんの課題があるのに、それらを見落として過大な自己評価をしてしまう場合もありますし、反対に頼もしい成長がたくさんあるのに、自分のマイナス面ばかりを評価してしまう場合もあります。自分で自分を見るためには、他者からみて自分はどう解釈できるか、という情報が必要不可欠なのです。
そこで教師からのフィード・バックが大切になってきます。その時のポイントは教師も子供たちと同じ視点を使ってフィード・バックを行うということです。そのために評価の視点はルーブリックとして可視化し、みんなで共有しているのですね。どういう観点、どういう基準で自分を見られているのかわからない状態でフィード・バックを受けても、その情報を自分の学びに活用することはできません。
自分としてはすごく頑張っているつもりなのに、先生から手を抜いている、と評価されたとき、共通の評価基準がなければ子どもたちはただ、違和感を覚えるだけですよね。逆に自分は手を抜いていたのに、教師から過大に褒められても、先生は何を見ているのだろう?と不信感が募るだけです。学習者と指導者の間で評価の観点を共有するということは、こういうすれ違いをなくすために有効なのです。
その上で教師は、指導者からの評価と、学習者の自己評価は同等の価値である、ということを意識して置かなければなりません。子どもたち自身の自己評価だけでは自分のことを正しく評価できないのと同様に、他者である教師がその子を評価するという他者評価だけでも、その子を正しく評価することはできません。教師からのフィード・バックとはあくまでも「教師である自分からみると、あなたの学習活動はこのように映りましたよ」という情報提供である、という意識が大切だと思います。
その上で子どもたちには、自己評価と他者評価を両輪として、その重なりやズレから、本当の自分を見出そうとさせてやることが必要です。ルーブリックを使った評価ではこのように、学習者と指導者の評価の視点を揃えた上で、子どもたちには指導者からのフィードバックと、自分が行った振り返りの内容を照らし合わせて、自分を見る目を豊かにしていくようなプロセスを経験させてやろうとする意識が必要だと思っています。