単元間の接続、教科間の接続が容易になる
上記のような表れは比較的学習意欲や学力の高い児童に現れた態度であったが、そうでない子どもたちにもポジティブな影響があった。QNKSを用いた自力読解で単元全体の要約文を書くという活動は小学校段階の児童にとってはかなり認知不可が高い活動になる。よって初めのうちはうまくできなかったり、友達の助けを多く借りる必要があったり、最終的に満足に書き上げられず、単元の学習に入ってしまったりすることがある。しかし、QNKSという概念は特定の教科、単元に特化したものではなく、「文章を読む」という活動が発生する場合ならばいつでも使えるというような汎用的な概念であるため、導入時の単元でうまくできなかったら、なぜうまくできなかったのかを分析し「次の単元では、もっと〇〇に気をつけてやってみよう」というような再チャレンジの機会を用意に得ることができる。
この構造は何かを向上させようとするためには当たり前の構造であるが、現在の学校教育においてこの構造を備えているような教育課程は殆ど見られない。多くの教育課程ではある技術や知識は、ある単元、ある時間に設定され、そこで一度指導が行われれば、それっきりである場合がほとんどである。その単元やその時間でうまくできなかったことを次の単元でまた挑戦する、といった努力の積み上げをデザインするという発想がないのだ。
QNKSという概念はこの問題を解決しうる。しかも昨今のカリキュラム・マネジメントという名のもとで行われる教育課程の再編集といった大掛かりなことは必要ない。単元、教科を横断しうる“概念”を導入することで、教科横断的な学びは実現し、教科や単元を横断しながらあらゆる場面をQNKSという概念で切り取ろうとすることで、「文章理解過程」を自分のものとして使えるようになっていく。これを社会で生きて働く知識技能と言って、何か差し支えることがあるだろうか。