けテぶれシートに対する評価のコツ
けテぶれシートに対する評価のコツ
即時評価
授業が終われば子どもたちは「けテぶれシート」を提出します。指導者はそのシート全てに目を通し、翌日に返却すること心がけます。教師からのフィードバックは、自分の実体験の記憶と共に受け取ることで、深く理解することができます。「実体験の記憶」が消えてしまってから、フィード・バックをしても、子どもたちはただそれを「言葉」としてしか受け取れないため、教育効果が半減どころか殆どなくなってしまいます。だから、けテぶれシートの翌日返却は徹底したいところです。
もちろんこれはけテぶれシートにある記述に対するフィード・バックであり、授業の最後には、クラスの学びの姿を具体的な例とともに評価することを毎回繰り返します。即時評価という意味では、学習終了直後が最もいいタイミングです。例:今日の学びでは〇〇さんの動きが素晴らしかったです。〇〇さんはまず…次に…最後に…という動きをしました。この中で△△という力が培われたはずです。また、一緒に行動した〇〇さんにもいい影響を及ぼしましたね。とてもすばらしい!(拍手)
明瞭評価
フィードバックの効果を高めるもう一つのポイントはその評価の“具体性”です。ただ漫然と同じスタンプが押されたシートが返ってきても、子どもたちは嬉しくないし、そこから自分の学習行動を向上させる情報を得られません。かと言って、1枚1枚に教師が励ましの言葉を書くのは非常に効果的である反面、大きな労力がかかります。けテぶれシートを活用する教科を増やそうと思うと全授業のシートの全員分の記述にコメントを入れるのは不可能です。
そこで僕は、観点を決めて、マークで評価していくという方法をとっています。マークは2種類。シートにある記述の中でいい記述に線を引き、サインを書くという「くずぴーサイン」と、部分評価に加えて、全体としてとてもいい考察ができていれば大きく「S」と書いて花丸をする「Sサイン」の2つです。
こうすれば、返ってきたシートを見てどこが良かったのか、子どもたちはすぐに分かります。評価の基準はもちろん「学習力のABC+1ルーブリック」です。よって、もう少し丁寧にサインを入れようと思えば、学習力のAに当たる記述にはA、Bに当たる記述にはB、と書いていく方法もあります。どこまでやるかは手間とコストをバランスにかけて調節してもらえればいいと思います。
僕は今の所、2種類のサインで全員分のシートに部分評価と全体評価をし、特に際立っていた子にコメントを入れて、翌日の朝の会で、数枚をピックアップして、何がどのように良かったのかを解説した後、すべてのシートを全員に返却する、ということにしています。
ポジティブ評価
最後に、最も大切なのはシートの記述の「いいところ」を徹底的に取り上げるという姿勢です。フィード・バックの目的は「今の自分を知る」ことです。でも今の自分は自分の視点だけではなかなかみることができません。もしくは、「行動」は自覚していてもその「価値」には無自覚な場合が多くあります。例えば「今日は〇〇さんと△△という学び方をした」と書くことはできても、それが学習を進める上でどのような効果を発揮しているのかについて自覚的でない場合が多く在るということです。ここに気づかせてやるのが、教師の大きな役割です。だから、けテぶれシートは子どもたちの記述にポジティブな価値をどんどん見出していく、ということが有効です。「学び方を学ぶ」というプロセスは、教師が価値ある情報を与えるばかりではなく、もうすでに子どもたちが持っているもの、やっていることの価値に気づかせてあげるというアプローチも大切なのです。「客観的に正しい方法」と、「主観的個人的にこれがいい!と思える方法」が噛み合うことで、子どもたち一人ひとりの中にその子にあった学び方が育っていきます。