けテぶれに取り組もうと思っている方へ
けテぶれに興味を持っていただきありがとうございます。自己学習力とは「スキル」+「マインド」であると考えています。自分で学ぼう!と思っても、学び方がわからなければ充実した学びは得られず長続きしません。逆に学び方に関する知識だけを持っていても、学ぶ価値や楽しさを知らなければ、自ら学びに向かうことはありません。自立した学習者とは「学びの技術」と「学ぶ意欲」の両方を兼ね備えた学習者のことだと言えます。クラスでけテぶれに取り組むときは「学び方」に関する知識を紹介し深め合わせようとする努力とともに、「学ぶことの価値」や「たのしさ」をたくさんたくさん伝えてあげてください。 僕はよくけテぶれの話をするときに「子どもたちを学びの海に下ろす」というたとえ話をします。いつまでも「みんな同じ内容、同じ方法」という船に乗っていては「自分で泳ぐ力」はいつまで経っても身につきません。かといって、今まで船に乗っていた子をいきなり生みに下ろせば、溺れてしまいます。だから、最低限の泳ぎ方(けテぶれ)を伝える。そんな話です。 しかし、手と足をバランス良く動かせば、泳げるよ!という最低限の泳ぎ方だけを教えられて水の中に入れられた子の何人が、水に入った瞬間きちんと泳げるでしょうか。そのくらいの知識でスイスイ泳げてしまう子は確かにいるが、その子はおそらくけテぶれを知らなくても自分で学べた可能性が高い。「自己学習力を高めるための努力」はけテぶれという最低限の学び方に関する知識を得ることからしか始まりませんが、学び方を伝えただけでは結局、できる子はできる、できない子はできないという世界を変えることはできないのです。
学べなかった子が学べるようになるためには、学べない自分を認識し、どこができていてどこができていないのかを調べるためにチャレンジを繰り返し、結果から次の一歩を見出し、苦手にフォーカスした練習方法を考えながら、自分に必要な学びのタネを一つずつ紡ぎ出し、育てていかなければなりません。それは途方もなく辛く大変な道のりであるかのように思えます。しかしそれは、今まで「学ぶこと」の喜び、「できないことができるようになる」ときのワクワク感を忘れてしまった(もしくは体験したことのない)大人の考え方です。子どもたちは学ぶ意欲に満ち溢れています。小さい子ほど、変化を恐れず自分の外側にある価値に対して心を開き、吸収しようとします。そしてトライアンドエラーを心から楽しめます。どうか子どもたちの学びに向かう潜在的なエネルギーを信じてください。まだまだ未熟です。できないことだらけです。努力の過程でうまくいかなかったり、思い通りにならなかったりして、辛い思いをすることもたしかにあります。でも、彼らの心のなかには学びに向かうエネルギーが詰まっている。それを一瞬たりとも疑わないでください。
そのエネルギーを開放させるためには、彼らを学びの海に下ろすしかないのです。「あれはだめ、これをやれ」という雁字搦めの環境では、学びのエネルギーは出どころを失って、やがて自分にそんなエネルギーがあったことすら忘れてしまいます。だからこそ、彼らに「学ぶこと」を任せてあげてください。彼ら思うように学ばせてあげてください。様々なチャレンジを繰り返し、自分ができていること、できていないことを理解する中でこそ、彼らは成長させるべき対象である「自分自身」に出会うことができるのです。真の成長はここからしか始まりません。仮面をかぶって、仮面の模様をいくら器用に変えていっても、「自分自身」と向き合わない限りは真の成長なんてないのです。そんな彼らのトライアンドエラーの価値を心から認めてあげてください。自分自身と向かい合い、チャレンジを繰り返しながら一歩一歩、自分で決めて、自分で歩くことの価値を子どもたちよりも深く深く理解し、語ってあげてください。
子どもたちのエネルギーを信じること、学ぶことを任せること、試行錯誤する姿を認めること。「信じて、任せて、認める」ことで初めて、子どもたちの内側に眠る学びに向かうエネルギーは光を放ち始めます。そこからです。そこからしか、始まらないのです。そういう環境をぜひ用意してあげてください。 たくさんお願いをしました。なぜなら、子どもたちが自立した学習者へと成長するには大人のサポートが必要だからです。けテぶれ本を買えば子供は自ら学ぶようになるなんて、甘いことは一切ありません。「けテぶれ」というコトバを知ることで、自分できることは増えるでしょう。学ぶことにワクワクできることもあるでしょう。しかし、その学びが行き詰まった時、サポートしてやれるのは子どもたちを目の前にしている「あなた」しかいないのです。自立した学習者になるという目的は、子供一人で立ち向かうにはあまりにも遠く、あまりにも大きい。だからこそ徹底的に子どもたちの学ぶ姿を見て、サポートしてやる必要があるのです。子どもたちとともに、「自立した学習者」に向かう学びの海での冒険を楽しんでください。けテぶれ本には冒険に役立つ情報をまとめています。子どもたちと一緒に読み、一緒に歩んでください。
最後に。本に載っているのはあくまでも、子どもたちに自己学習力をはぐくむための「ヒント」です。「答え」ではありません。では「答え」はどこにあるのか。それはあなたと子どもの「間」です。そこにしか答えはないのです。だから、サポーターであるあなたもまた、「けテぶれ」を繰り返し、どういうサポートの仕方が「この子には」適しているのかという思考と試行を1秒たりともやめないでください。今日から始まるのは、子どもたちが自立した学習者へとそだてるというあなたのチャレンジの物語でもあるのです。ぜひ子どもたちと一緒に、「けテぶれ」を楽しんでください。「学ぶこと、考えること」、「自分で決めて自分で進むこと」って本当に楽しいことなのですから(^^)