早とちり問題
概要
人間には想像力があり、部分的な情報から全体を推論することができる
また、相手の表現から内心を想像することもできる
これらは大変に素晴らしい能力だが、だいたいにおいてエラーばかり引き起こしている
例
甲ー乙ー丙 の直列型業務委託関係における三者間調整の場合
甲からちょっとした要望が乙に相談されると
たいてい、中間エージェントである乙はそれを拡大解釈する
例えば
甲 企業人事部
乙 研修プロバイダ
丙 講師
甲→乙「あ、そういえば当日、傍聴で何人か同席してもいいですか」
乙(きっと追加フィーなしで受講人数を増やしたいんだな…)
乙ー丙「個別のワークショップには参加しない聴講生が参加しても問題ないですか?」
丙「参加者の属性が変わるとプログラム変更の必要性が発生するかもしれません。誰がどんな目的で聴講したいのですか?」
乙(まいったな、ややこしい話になりそうだ、研修のカスタマイズ費用を請求したいのだろう)
乙→甲「プログラム変更の必要があり、講師が直接打ち合わせしたいと言っております」
甲「来期の研修企画のために、事務局の上司がオブザーブしたいだけなんだけど」
問題は、乙の早とちりである
依頼者からリクエストが発生した際に、適切に趣旨や目的を確認すれば、余計な連絡や検討の手間は発生しないのに
勝手に推論し、しかもわざわざ自分に不利な状況を想定している
こうしたことは、そこかしこで起きている
解決策は単純である
依頼者は、背景、趣旨、目的を伝えよう
受任者は、背景、趣旨、目的を確認しよう
ただ、人間はおっちょこちょいなので、つい、そこを飛ばしてしまうのである
この「つい」を飛ばさないための対策が発明できたら、ノーベルプロジェクト賞ものである
プロジェクト標準的なよくある対策としては、依頼書のフォーマット改善などがある
フォーマットも悪くないが、だいたいにおいて、形骸化する
そもそも、フォーマットを使わないコミュニケーションには役にたたない
これは認知バイアスの問題である
上の例でいえば、乙はお金の話ばかりを気にしている
座組上、そこが自身の利害のフォーカルポイントだからだ
過去、当該顧客で費用やライセンスの件で何度か揉めたことがあったりすると
バイアスは強化され続ける
例えばプ譜の効用とは
自分のバイアスを可視化し、他者間で共有、調整するものである
わざわざプ譜を書く、という状況に持ち込むことができれば、著効する
ただ、その状況に持ち込むこと自体がそれなりに時間コストを要請する
もっと簡易的に、いつでもパッと、バイアスを外す方法があれば良いのだけれども、それは引き続き模索が必要である