勝利条件の発見学
繰り返しになるが、勝利条件は、「発見するもの」である
その発見の方法が定式化できるのかどうかについては、議論が必要である
できるとしたら、それはプロジェクトではなくルーチンワークに属することになる(かもしれない)
獲得目標と勝利条件の二元性
獲得目標は、任意に設定されるものである
その状況、その動機において、適切な獲得目標を設定できるかはさておき
何をターゲットにするかは、その主体者の意思による
勝利条件とは、一義的には、それが達成されたかどうかの判定基準である
例「◯◯事業の立ち上げ」の達成基準
マーケットシェア?
上市すればいい?
売り上げ目標?
利益?
何をもって、達成したとするのかは、本来であれば、それは、獲得目標に対する必要十分条件である
しかし、未知の取り組みであるプロジェクトにおいて、事前にそれを定義することは極めて困難である
では、それは原理的に不可能なのか?
経験上、不可能ではないと考える
つまり、廟算八要素と獲得目標を元にして、論理的に導出することは実に可能な話ではないかと思われる
言ってしまえば、廟算と獲得目標が適切な認識に基づいていたら、むしろそれは容易い(=ルーチンワーク)である
廟算と獲得目標が、確信の持てない状況、つまり、確率的な認識状態(=プロジェクト状況)であったとしても、もしかしたら、可能なのかもしれない
考えたいのは、以下の手順である
各項目についての確信度合いを記述し、それらにもとづきシナリオ分析を行う
絶対に避けるべき最悪の場合を想定する
なぜその獲得目標なのかの動機を明確にする
過去の類似した状況をもとにアナロジー推論を行う
つまり、
不確定な度合いについてメタ認知を行う
その上で、
その不確定性を最小化すること
リスクを最小化すること
成功可能性を高めること
の、3つの条件を課すことで、設計解を導くという発想は、あり得ると考える
おそらく、こうした手順での演算は可能であるし、そもそもエキスパートは一瞬のうちにこれらを無意識のうちに考えていると思われる
それを普通は言語化しないし、しようとも思わない
経験と勘、つまり、まさに暗黙知というやつである
ちなみに、パターンランゲージなんかも、このあたりの領域を意識していると思うんだけど、全然汎用性がないと思う
ある領域の経験が多く、高い視点、広い視野でものごとを捉えている人は、未知の課題に対しても、適切な推論を働かせる確率が高い
もちろん、やってみて、学習し、素早く軌道修正する、という戦略も、有効ではある
それにしたところで、最初に立案する仮説としての勝利条件の質によって、その反復的な学習・達成プロセスのあり方が全く異なることは、容易に想像される
「この場合は、仮説立案よりも、まず試行し、状況を動かすことで認知度を改善すべきだ」といったような、さらにメタな視点での仮説立案も含めて、エキスパートは巧みな推論を行う、ということもある
よく言われる、成功体験が発想の制約となる現象や、表層的なノウハウの応用が結果に結びつかない現象についても、上記のモデルで明快に説明できそうな気がする
整理とまとめ
上記の考察により、プロジェクトの定義について、更新できるかもしれないと思ったので、一旦、備忘的に記す
プロジェクトとは、
所与の条件と獲得すべき目標についての認識が、明らかに確率的だと認知されている
よって、その達成判定基準が一意的な命題として収束しない
達成プロセスが試行と学習を必然的に含む状況
なんだ、「ルーチンワークじゃなければプロジェクト」「やってみなくちゃわからない」を小難しく言い換えただけじゃないか、と、言うかもしれないが、そんなことはない
こうやって定義することで、勝利条件を導出するための思考・試行過程をアルゴリズムとして記述することが可能になる。つまり、プログラミングが可能になる
要するに、各項目についての認識確率の最適化問題である、と、実に数学的に、美しく表現することができる
おそらくこの発想は、プロジェクトAIの雛形となるはずである
演算をCPUにさせずに、思考過程だけを再現するのであれば、ワークシート型のテンプレートと、いくつかの条件分岐で実現できそうな気もする
つまり、プロジェクトを命題の集合であるとモデル化しなおす
おそらく、いまの各項目をもう少し細分化したり、構造化しておくことも必要
あるいは、そのプロジェクト世界におけるオントロジーやクラスの定義も必要
逆に言うと、それらを初期設定してしまえば、必要な命題は自動で導出できる
そして、各命題に属性として真偽確率を与える
次に、シナリオ分析のロジックを加えて、それを評価関数とする
最後に、最小化したい変数を決めると、命題としての勝利条件か導出される
UX的に良いものを作るのは大変だろうし、市場性の具現化となると、さらに難しいかもだけど
でも多分、このアイデアは、この領域における最先端であることは、間違いない気がするので、ちょっと大事に考えたい
獲得目標、勝利条件、中間目的、施策、廟算八要素の関係性を、もう一度再考する
勝利条件とは、獲得目標の「達成判定基準」である
何がどうなっていたら、その獲得目標が実現していたと判定されるか、である
それは、「その獲得目標が達成されたらどんな効果が得られるか」ではない
これは実に表裏一体で極めて微妙な話だが、だからこそ、その前後関係や因果関係は厳密に意識されるべきである
中間目的は、勝利条件を「噛み砕いたもの」である
実は、廟算八要素こそが勝利条件を決める
プロジェクトとって既知であるのは獲得目標しかない
勝利条件は求めたい未知数である
廟算八要素は、制約条件である
プロジェクトの終了とはなにか
獲得目標の確定と勝利条件の収束である
開始時において
獲得目標は、任意であるが、不確かである
勝利条件は、必然であるが、未知である
所与の条件に対して、施策を通じて働きかけ、学習変容し、全ての命題の真偽値を1にしていく
プロジェクトとは、そうした過程のことを言う