プ譜は、どのような考えにより、生まれたのか
プ譜は、どのような考えにより、生まれたのか
プロジェクトの進め方を表現する方法としては、WBSやタスク表、スケジュール表、工程表といったものがよく知られていて、どうしてそれではダメなのか、と、よく聞かれます。つまり、プロジェクトの状況や目標、行動などを簡潔に言語化・可視化・構造化する方法は、世の中にはたくさんあるのです。
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また、プロジェクト管理の方法として、大きくわけて「ウォーターフォール」「アジャイル」のふたつがよく知られていて、こうしたものがあるのに、なぜわざわざ「プ譜」なんていう、変わったものを使う必要があるのか、と、聞かれることもあります。
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もちろん、そうしたもので、今後の計画を表現しても、まったく差し支えないのです。プ譜の起案者である後藤もまた、それらを使うことに喜びを感じ、数多くの取り組みに活かし、小さいながらも成功をものにすることも多くありました。
しかし、5年、10年とプロジェクト活動に取り組むなかで、どこか、虚しさのようなものを覚えるようになったのです。スケジュールを守り、予算を守り、事前に約束した成果を生み出しても、顧客や同僚、上司など、関わる身近な人たちが、本当には、幸せにはなっていないのではないか、と、そんな疑問がもたげてくるようになったのでした。
プロジェクト活動を遂行するために、プロジェクト管理は欠かせない。ちゃんと管理すれば、ちゃんと進む。にも関わらず、それを繰り返せば繰り返すなかで、いわゆるQCDマネジメントに明け暮れる生活が、虚しくなってしまったのです。
目標を掲げ、関わる相手と約束をして、それを有言実行する。品質・予算・時間を守るために努力と工夫をする。当たり前の話です。しかし、人間はときに不完全で、誤ることも多いものです。最初に掲げた目標や、そのために交わした約束が、いざ、やってみたあとで、違っていたことに、気づくこともあるのです。
一般的なプロジェクト管理の技法の狙いとは、計画における誤りを防ぐこと、実行における間違いを正すことにあります。
そのために、タスクの管理、スケジュールの管理、品質の管理、課題の管理、さらには変更の管理まで、ありとあらゆる側面が、社会的活動としての適切な「管理下」にあることを理想としています。
その「正しさ」は、何度強調しても足りないくらいに、正しいことです。しかし、ときにそれが、「人間が幸せであること」を、どこかに置きざりにしまうことがあるのです。
人間の誤りを、肯定的に受け止め、活かすことのできる、やわらかなプロジェクト進行技法が、あっても良いのではないか。プ譜は、そんな思いから、生まれたのでした。
発表からの歩み
プ譜は、ロングセラー「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」の著者である後藤と前田が考案したものです。
考えたきっかけは、前田さんから私に、プロジェクト計画の時間的な変化を、一枚の紙の上で、どう表現したら良いのかと相談されたことでした。
それに対して、一枚のなかでそれを表現するのは不可能である、そのときそのときの目標や施策、状況を、スナップショットとして表現するしかない、と、答えたのでした。
過去の経緯はアニメーションのように局面が重なっていくし、未来の構想はゲーム木の要領で分岐的に考えることができるだろう、と。
そして、表現するための項目としては、軍学における「獲得目標」「勝利条件」「廟算」といったものが活用できそうではないか、また、それらの関係性をノードとリンクで表現するのは、工学的な形が良さそうだ、と話して、だいたいのイメージを紙に書いたのでした。
彼はそれをフレームワークにすると良いのではないかと提案し、私はそのことについて、良いとも悪いとも判断がつかなかったのですが、後日、フレームワークの試作品と「プ譜」の名前も提案してくれて、廟算の中身の項目を調整し、出来上がっていきました。
理論的なベースとして、プロジェクト工学三原則を整理したものを含めて、初めて発表したのは2017年、docomoイノベーションビレッジでのワークショップ「プロジェクト工学勉強会 プロジェクトはなぜ計画通りに進まないのか」でのことでした。
同年12月、宣伝会議の編集者に見出していただき、書籍化の企画が成立、翌2018年の3月に「予定通り進まないプロジェクトの進め方」刊行となり、その後は
2020年3月に続編である「見通し不安なプロジェクトの切り拓き方(宣伝会議)」刊行
2020年4月に翔泳社から「紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本」刊行
2021年に、プ譜の作成、管理、共有ができるサービス「キックプ譜」をリリース
といった歩みを進めています。
2024年現在、「予定通り進まないプロジェクトの進め方」は5回の増刷の機会に恵まれてきました。関連書籍の刊行部数は3万を数え、研修受講者やファンの数も、数千を超える規模に広がっています。