サービスサイエンス
概要
サービスサイエンス (放送大学教材) 岡田 幸彦、 原 辰徳 | 2023/3/20
これは、近年稀に見る快著であった
一旦の感想
本書の意義は、サービスサイエンスの「地軸(北極と南極、みたいなもの)」を示したことなのではないか
サービス1.0的な極
受益者が受動的
私作る人、あなた使う人、の世界観
この極における成功の原理は「優れたサービスにより顧客満足を作り出し、高い収益を獲得しよう」
例:客室乗務員
サービス2.0的な極
受益者が能動的
私作る人、あなたも作る人
この極における成功の原理は「参加者が能動的に価値を引き出す状況を作り出そう」
例:観光
これらは新旧ではなく陰陽なんだ、と理解した方が適切な気がする
つまり
昔から2.0的なサービスはあったし(例 将棋)
これからも1.0的なサービスはあり続ける(例 発電所)
それだけでなく
将棋は将棋でも、1.0的なプレースタイルもある(接待将棋)
発電所がいかに1.0の極北とはいえ、電力の用途がないと活用されない
もちろん、時代の趨勢として、いま現在の研究対象としてはやはり、2.0的なものが、熱い
いま、新価値創造をするうえで、この視点を持たないわけにはいかない
最大の論点
2.0的なサービスの良し悪しとは「いかに自発的な行動を生み出しているか」の一点に収束する
だとすれば
問題は、価値創造はあくまで参加者の認知系に働きかける必要がある、ということ
だとすれば
情報の存在ではなく不在にこそ、その契機が生まれる、という見方が生まれる
だとすると
問題は、いかに足し算するかでなく
いかに引き算するかなんだ
という結論に帰着する
より大胆に発想して
自発的な行動の動機とは、常に「謎解き(問題解決)」であり
満足度は「ストレス解消度合いの大きさ」に比例する
と、考えてみたい
こういうふうに問題設定をすれば、優れたサービスデザインの定式化に一歩近づけるような気がする
1.0的なサービスの満足度が最大化される臨界点とは「前景化されそうでされない、ギリギリ寸前の問題に、先んじて答えを出してもらう」瞬間にあり
2.0的なそれは「独力ではギリギリ解けなさそうな問題を、自ら見つけ、自ら答えを出すことができた喜び」なのではないか
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こういうふうに考えると、そもそもプロジェクト状況自体が、2.0的なサービスの場そのものなのである
問題が難しすぎたり、どう問題設定したらいいかがわからなかったり、問題が解けなかった場合のペナルティが厳し過ぎたりした場合に、プロジェクトは苦痛をもたらす
プ譜やキックプ譜の使命とは、プロジェクトという、ともすれば苦痛に満ちがちな場に、問題解決の喜びをもたらすことなのではないか
そして、問題解決とは、正しく問題を設定しなければ成就しないのである
そして、正しい問題設定の仕方には、マニュアルも正解も、存在しないのである
自分でできた、自分でもできた!という感激こそが、人を勇気づける。
より多くの人に、そのきっかけを提供することが、究極のゴールなのではないか。