生成AI徒然~2024年現在の現場から~
ビービットメルマガ
一時期は「UXとAI」のテーマを激推ししていたが、最近はあんまり言わなくなった
某日のヘッドラインは以下の通り
プロダクトの受容性を正しく見極め、失敗のリスクを最小化するプロセス
データドリブンで着実に成果をあげる、UX改善の具体的なステップ
DX推進におけるプロダクトマネージャーの役割と成功の鍵
⇒UXの本質論に回帰した印象、良いことだと思う
糸井重里氏
「話題にならなくなってからが、本当の普及期」と、某日の「今日のダーリン」にて
⇒同意
某松尾研発AI学生ベンチャー群
AI導入支援サービスのメール営業、フォーム営業が非常に活発で、複数の会社が、判で押したように似たような新規開拓作業を推進している(営業メールがよくくる)
サービス内容はRAG、研修、教育あたり
実際に会ってお金も払ってディスカッションしてみたこともあるが、知識・スキルレベルはあくまで「用途開発」特化で、ビジネスターゲットは、かなり後進的な企業、経営者という印象
⇒先端的な技術的知見に触れている賢い人達が、非常に古典的なことをやっているのが興味深い
Linkedinを見ていると
「AI導入支援サービス提供者」が、毎日毎日、ひっきりなしにDMを送ってくる
⇒必ずしも先端的な技術的知見に触れているわけではない普通の人達が、同じことをやっているのも興味深い
某コンサルタント
AI脅威論を強く意識
コンサル業などの、助言する仕事はAIに奪われるとの危機感
理由:大抵のことはAIが教えてくれるし、人間よりもAIの方が敷居が低い
⇒理由については同意
某テック人材のシニアな方
chatGPTが大好き
ちょっとした資料や原稿の素材、たたき台を作るのに積極活用
ちょっとした情報を調べるのも、googleよりもchatGPT
⇒概ね同意しつつ、自分はそこまで使わない
人材業界の事業部長層
漠然とした「人間のやる作業の自動化」に対する漠然とした期待感
IT開発の知見や肌感覚がないため、なんだかよくわからないPoCをやっては迷走、ということも多い
某大手企業所属人材開発部門の上級職員
生成AIを使ったPM教育ができないか、ということを考え、発言する人に複数遭遇した
あんまり深くは考えられていない印象
某ビジネススクールの企画職
とにかく集客に成功するための、講座のタイトル作り、企画作りに必死のパッチで、AIにもかなり頼っている
成果につながっているかは、外から見ているかぎり、疑問符
佐藤天彦九段(プロ棋士)
現時点での生成AIについては、高速道路理論の範疇を超えないとの見方
棋士全般
指定局面の評価値と候補手を見て、そこから理由を考える、という勉強法が確立している
同時に、いくらAI最善でも、人間は絶対指さない、という明確な線引きもある
アンチ事前研究戦略とか、そのあたりの周辺事情もおもしろい
⇒これが棋譜の品質向上にどう役立つのか、引き続き興味深い
海外のプロチェス
肛門にヴァイブレータを仕込み、モールス信号でカンニングした、みたいなびっくりする話をときどき聞く
⇒ファクトチェックはしてないけど、なんかまぁありそうな気はする
いつもお世話になっている美容師さん
美容師業界でも、AI使う派と使わない派に分かれているとのこと
仕上がりイメージとして、昔は雑誌だったが、最近は、AI生成画像を持ってくるお客さんが増えたとのこと
押井守氏
(映像制作者として)「デジタル技術は魔法の杖じゃない。むしろ膨大な手作業の集積を要求される」
(表現者として)「AIへの恐怖感、AI脅威論は、人類の願望の裏返し。映画作りにおいては、それをどう活かすかがテーマ」「表現手法として、ゲームは完全に映画を超えた」
小島秀夫氏
2016年の時点で、久夛良木さんとの対談で「近い将来、生成AIを使って模擬人格をネットに遺せるようになる」と楽しそうに話していたが・・
2024年時点で、某ポッドキャストで、「3Dキャラクタに、髪の毛を植えるのは、AIではできない」と(ちょっと楽しそうに)ボヤいていた
久夛良木氏
某講演にて、NVIDIAはプレステ事業で変態的基盤開発をしたメンバーのスピンオフ、との話をしていた
近年の生成AIの「呪文を唱えただけでどうこうする」という風潮には強い疑義
足回りがわかってないやつは、ダメだ、と
一方、計算基盤によるリアルタイム演算処理の機能は、まだまだこれから飛躍的に進化していくとの見方
2030年頃が、ひとつ大きな山場になるとの話、これは非常に興味深い
まつもとゆきひろ氏の某所での講演から(某講演録をもとに若干補足)
AIでできることは、プログラマーにとっても楽しいこと
AIができないことは、プログラマーにとって楽しくないこと(デバッグ、品質等)
テストは面倒。仕様とコードとテストと3回同じことを書いている
IT/デジタルにおいて、建築と違い、物理的制約がないことは、実はデメリットの面が大きい
設計時に制限されることがないがゆえに、設計解が収束しない
仕様が正しいとは何か?ということに、まだまだ答は出ていない
特に地方の中小企業経営者の一般的な肌感覚
AI以前に、デジタルもITも苦手、なんかよくわからない、怖い
地方の中小企業経営における代表的な一例
工程管理: 作業スケジュールや進捗状況が可視化されておらず、在庫管理にも悪影響
勤怠管理: タイムカードを手作業で集計し、給与計算ソフトに入力する非効率なプロセス
売上データの一元化: 店舗レジとオンラインショップ間でデータが連携していないため、リアルタイム分析が難しい
属人化の弊害: 特定のスタッフしか対応できない業務が多く、全体的な効率性を欠いている
(「業務の改善」サイトより引用)
⇒背景に「人が足りない」「作業が属人化」の2大問題とのこと。AI以前の問題が山積み^^;
拡大指向ベンチャーのセールスパーソン
AI?ようわからんけど、作らせてるし、売ってるよ!
AI?うちめっちゃ詳しいよ、ビッグウェーブ、乗るよ、バンバン行くよ!
典型的JTCシゴデキ幹部
AI?もっとちゃんと使わせろ!
もっとちゃんと効率化しろ!
目標達成しろ!利益を持ってこい!
海外アーティスト向けのプリンティングサービス企業代表
スタッフに日英翻訳を使わせている
相互の文化やコンテキストに関する理解が浅いと、どうもやっぱり変な訳になりがちなのが悩み
プ譜の周辺から
その点、perplexityは、かなり素晴らしい
google:Cosenseの記事をちゃんと1位表示してくれて、ハイライトも適切(AI作文はしたりしなかったり)
自分自身の肌感覚
「テキスト的な成果物」の場合
作りたいの要件が定まっていている場合、想像を超えて素晴らしい出力をしてくれるのは間違いない
本当は、画像出力も同じなんだろうけれど、画像は、自分にとってはかなり難しい
画像そのものの要件定義ができないし、出力した画像を活かすためのアートディレクションも難しい
音楽の生成コンテンツは、見聞きしている範囲だと、AI臭さは結構まだまだ強い
プログラミングの補助ツールとしては、大きなメリットがたくさんある
自分ではやっていないが、たぶん、他言語習得にあたっても、近い使い方が結構できるのだと思う
ある程度規模感のあるIT開発クライアントワークで、かなり使えそうなイメージはあるが、、
こちらは意外とあんまりうまくいっていない印象
某グローバルカンパニーにPMO組織との関わりを持って思ったこと
意思決定の中枢に近づけば近づくほど「時間」と「情報」の取引が過酷になる
人間同士の交渉が超ハイスピードで繰り広げられる現場では、やはり、AIが入り込む余地が少ない
まっとうに仕事をする人は、最後の最後は、一次情報をちゃんと確認するし、自分の労力を割いて作りもする
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総括
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改めて、こうして見てみると、製造、納品に近い人であればあるほど、AIへの期待値は適正に近づく傾向がある。
生成AIに関する議論で、自分の視点から最も正鵠を射ているのは、まつもとゆきひろ氏である。
つまり、現時点では、こういうことだと思う。
そもそも要件がわからない、見えていない、握れない→全然向いていない
厳しいクオリティコントロールが必要な、人間に対して納品する成果物の製造を代行させる→向いていない
要件は見えているが、自分の能力・キャパシティを超えている場合に、素案や素材作りをお願いする→向いている
AI万能論を唱える人は、かなりバイアスがかかっている印象。
自分の支持するものの良い面だけを見たがる傾向があるように思う。
(見ていてちょっと危うさを感じる)
AI脅威論を唱える人は、もしかしたら、自分は仕事においてオリジナリティを発揮できない、という危機感ゆえなのかもしれない。しかし、彼ら彼女らはみな口を揃えて、仕事がなくなるなくなるというけれど、「知的労働者」のやっている仕事の大部分は、ブルシット・ジョブである。そして、「戦争を抑止する」「気候変動に対応する」というマクロな話から、「目の前で苦しんでいる人の力になる」という等身大の話まで、手付かずの仕事は、まだまだ無数にある。