つー:出会い
2005年初夏
モナー板某所の廃虚となったとあるスレ(地域)。
その日は、雨が降っていた。
その雨の中、俺は歩いていた。
どこを見ても目に映るのはAAたちの死体と、廃墟となった住居ばかり。
…かつて賑わっていたはずらしかったモナー板は…
少なくとも俺が物心ついた頃にはすでに、死体ばかりが転がる街と化していた。
しばらく町並みだった場所を歩いていると塀の前でうずくまっている一人のAAを見つけた。
そいつの前で足を止めるやいなや、そいつは口を開け…
「…わたしをころしにきたの?」
…そいつは俺を「虐荒らしの仲間」と認識してたのだろうか。
「誰が頃すかよ…そんなのは気の狂った奴らのすることだ。」
「…あなたから血の匂いがするの…。」
「まあ、そりゃそうだろうな。お前の仲間を頃し回ってた奴らに、同じ痛みを味わせてやってたからな。」
「…………。」
当時から俺は削除人として戦っていた。
ずっと死体に囲まれて育ってきたことに嫌気が差していた俺は
「虐荒らし」たちを一人残らず頃すことで、かつてあったとされる「穏やかな日々」が訪れる…そう信じていた。
…しかし、それはついに戻らなかった。
そこにあったのは、かつてより数を増したAAたちの死体と…
…誰もいなくなり、廃墟となった数々のスレばかりだった。
「…行く宛はないのか?」
「…そんなもの、ないわ。家族も友達も…みんな頃されちゃった。生き残ったのは…わたしだけ。」
「(ため息)…そっか。」
「…………。」
俺も同じだった。
ずっと死体に囲まれて過ごし、"生きている"仲間なんていなかった。
…こいつと同じ、「孤独」を生きてきた。
だから、だったのかな…。
「…それなら…俺がお前の面倒を見るよ。」
「…えっ…?」
「…お前のその歳で…仲間のところに行くなんざまだ早い…ほら、行くぞ。」
立ち上がる気がないそいつを、俺は半ば無理やり引っ張り出した。
最初は引っ張られるままだったそいつは少しずつ歩みを合わせるように俺に寄り添う。
「…なんで…」
「…うん?」
「…なんでわたしを助けるの?わたしは…」
「2ちゃんで嫌われてる『しぃ』族…か?…誰がそんなことを決めたんだろうな。」
「…………。」
「…誰かの価値観のためだけに、氏んでいい生命なんて、あっちゃいけねぇんだよ…本当は。」
「…うん。」
唯一の生存者であったそいつを連れて俺たちはこのスレを離れた。
スレから出るときには、いつしか雨も止んでいた。
…これは、俺としぃが初めて出会った日…。
----