しぃ:夜な夜な響く悲鳴
2005年春
とあるスレの地下。
わたしはそこで暮らしていた。
何日かに一回は地下から出て顔を見られないようにローブを羽織り、食べ物を買い揃えたらまた地下へと戻る。
…そしてその後は毎日のように、どこからともなく、誰かの悲鳴が私の耳に入ってくる。
この世界では、私達が「しぃ族」である。
…ただそれだけのために頃されていく世界だった。
「やめて…もう、やめて…。」
どれだけ願っても、悲鳴が聞こえてこない夜はなかった。
そんな日々が何日、何ヶ月、何年続いたのかは覚えてない。
ただ、ある日を境に悲鳴はぱったりと止んだ。
悲鳴どころか、話し声一つ聞こえなくなった。
悲鳴が止んで数日。
備蓄の食料が尽きたわたしは、またローブを羽織って外に出る。
わたしの目に映ったのは、廃虚となった町並みだった。
生きてるAAは、どこを見回しても見当たらない。
AAの姿を見つけても、どれも死体ばかりだった。
「虐荒らし」はいなくなった。
…だけど、住民たちもみんないなくなった。
わたしひとりだけ、生き残ってしまった。
そこにはもう家族も、友達も、誰もいない。
今のうちのこのスレ(地域)を出て、遠くへ行けばきっと、
しぃ族でも虐げられないところがあるかもしれない
…そんなことを考えることができないぐらいに、いつしかわたしの心は壊れていた。
「どこへ行っても、きっと見つかったら頃される。わたしに、安息の地はない。」
そんな絶望だけが頭を支配していた。
…その時だった、のちに私の相方となる人と出会ったのは…。
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