分科会「低次元方向の〈私〉の置き移し論と高次元方向の多様体の弁証法」
実(みのる)さんによる発表。
2024年8月11日(日)23:30~27:00オンライン(discord上)開催
ふかくさ「永井均の根源的な私=〈私〉は例えば左右について、向かい合う相手=自分以外の他人に対して、押し付け(=相手の左右が自分のそれと一致しない)と置き写し(自分にとっての左右と同じように相手にも左右があると認める)との二つの態度があるという。この発表ではこの「相手にとっては……」を真球上の二次元動物や一次元動物に対して、我々三次元動物から空間概念を延長しようというもの。しかし、〈私〉の問題とこれらの延長の話とは独立あるいは外在的な関係しか持たないように思われた。なぜならば、幾何学的な空間概念を使用している時点で〈私〉あるいは根源的な感性としての〈空間〉は喪失されているからである」
Syun'iti Honda.icon「3次元空間に住む我々に対して、2次元球面や1次元球面に住む生き物の認識の考察を通して、第1節では高次元の世界に住む生き物が、その立場を1次元までのより低次元の生き物に「置き移す」ことで、その認識を理解することは可能だとし、第2節では、世界の次元的有限性と無限性について、ある空間が局所的には無限に広がっているように見えながらも、より高次元の全体としては有限な広がりを持つという弁証法によって止揚を試みる、という内容だったと理解しています。
発表者は永井均さんの〈私〉の置き移しを次元に拡張する形の導入をとっていましたが、カントの現象(≒その次元での世界認識)と物自体(≒より高次元の世界)の階層性と遷移という枠組みで発表全体と捉えるとしっくりきました。」