研究室プロジェクトマップ
table: プロジェクトマップ
音楽系 ← (ストリートピアノ系) → まちづくり系
公 イ 荒川ブライズマーケット 赤羽ストリートピアノ 宿場町まるしぇ・岩淵
開 ベ 荒川パンマルシェ 王子テラス 全學寺イベント
ン 三ノ輪マルチカラードピアノ 三ノ輪ストリートピアノ
ト 宮前Park芝開き 東大宮ストリートピアノ
三河島ハロウィン 赤羽ビーンズピアノ(期間限定)
常 メルビーイング(月1) メルビーイング(月1)
設 看護師みか(アマネ) 地域ボードゲーム(月1)
仁科亭ご飯の会(寺ピ派生)
街中スナック全国展開(週5)
岩淵パブリックピアノ(月8)
赤羽メッツピアノ(毎日)
限 JPM(月1)@十条アマネ おとなり大学(月1)
定 テラピアプレ(月1)@十条アマネ 仁科ハウス
公 王子REGIE
開 co-toiro iwabuchi
正光寺
ポスト材木屋(山縣家)
3本柱からなる音楽まちづくり事業
1. ライブ事業
荒川区、北区界隈におけるイベント等でのアーティスト派遣などのライブ事業。赤羽ストリートピアノで出会った腕利きのさまざまなミュージシャンたちがさまざまな地域イベントで活躍できる場をマッチングする役割を担う。
JPMは赤羽ストリートピアノ等のストリートピアノで出会ったセミプロのピアニストたちと定期的(月1)に練習会を行うことで交流を深め、地域イベントでのライブ出演をしやすくるするもの。Jujo/Johoku/Japan/Jazz Piano Metteingの意味。
テラピアプレは主に寺ピアノ参加者が気軽に参加できる定期的な練習会(月1)。狙いとしては寺ピアノ後に早めの夕食をとりながら交流し、さらにお酒を飲みながらピアノやセッションを十条のミュージカンテアマネで行うことで、セッションを通じた研鑽だけでなく、寺ピアノを担ってくれるスタッフを育てる。寺ピアノコミュニティは開かれていながらも強い絆を作ることを意図している。
2. ストリートピアノ事業
常設の赤羽メッツピアノ、準常設の岩淵パブリックピアノ(寺ピアノ)、祝祭イベントの赤羽ララピアノ(狭義赤羽ストピ)の三層からなる赤羽ストリートピアノを中心として、王子、三ノ輪、東大宮などでもストリートピアノを行う。誰でも弾けるオープンな場。
3. コミュニティ事業
主にマルシェ事業。ライブ事業やストリートピアノ事業とも同時開催することができるが、キッチンカーや雑貨屋の手配などを主とする。コトイロ岩淵における宿場町まるしぇの運営・協力を主とする。アフターコロナを見据えて2022年は再起動しそう。元々、武藤研究室での最初のプロジェクトはマルシェを織戸さんと一緒にやることからはじまった。
当研究室における音楽まちづくりの概要
赤羽周辺の城北・埼玉南部エリアの特徴
当研究室における中長期的な方針は、城北埼南エリアにおける新しい文化を創ることに貢献することです。長期的な目標としては、東京北部(城北エリア)から埼玉南部にいたる文化的なアイデンティティを醸成することです。
渋谷・恵比寿・六本木・銀座・新橋など東京の南側は、遠く横浜や湘南まで続く華やかな文化があります。東京の西側には新宿・下北沢・高円寺・吉祥寺等の文人的な文化があります(大学も多く、作家、芸術家といった文化人が好んで居住)。東京の東側には、上野、浅草、東を江戸時代から続く職人文化があります。
一方、東京の北側は基本的には住宅街ですが、西側のような文化人的な文化はあまり聞いたこともなければ、南側のような華やかさもありません。すこし似ているとすれば東側ですが、それでも日本橋、浅草などの伝統的な江戸の文化があるわけでもありません。城北エリアは荒川を挟んではいますが、埼玉と地続きであり(ただし足立区は荒川・墨田川の北側)、よく池袋が埼玉県民の都といわれるように、埼玉南部と城北は、いわば都心から最も近い郊外としての性格を色濃く有します。
それゆえに城北エリアは、都心のベッドタウンとして、それほど個性的な情報を発信することはなく、イメージの薄いエリアに甘んじてきました。これはサッカーを除けば、浦和・大宮なども同様です。唯一の例外が赤羽で清野さんの『東京都北区赤羽』や飲み屋の聖地となった赤羽一番街ですが、バブル崩壊以来に長く続く平成大不況下での「センベロ」(千円でベロベロに酔えるの意味)的なものであり、じつは上野や新橋とそう変わるところはありません。むしろ赤羽は、規模のうえでは上野や新橋や大阪の天満などにかないません。そして老朽化や防災の観点から、赤羽一番街はもうここ数年のうちに再開発により、今の姿をとどめることはできなくなります。
一番街が飲み屋街として生まれ変わる以前は赤羽はシャッター街であり、年々利用客が落ちる右肩下がりの街だったことはあまり知られていません。一番街がなくなれば、今日の赤羽の存在感は消えてなくなり、同時に、池袋、北千住と並ぶ城北の中心地としての魅力は相対的に低下してしまうでしょう(赤羽や王子といった北区の街が池袋の先進性には学ぶものはきわめて多いです)。赤羽はじつはかなり危機的な状況にあります。(すでに駅前再開発によって赤羽も十条もタワーマンションが建設されることが決まっており、有名な十条銀座も、赤羽一番街もなんらかの影響があります。)
赤羽ストリートピアノの特質
このような状況のなかで、赤羽や城北エリアに新しい文化を作り出すべく、当研究室では赤羽に三層からなるストリートピアノの仕組み(イベントとしての赤羽ストピ/コミュニティとしての寺ピアノ/練習可能な常設メッツピアノ)を実装してきました。他の地域との違いは、このストリートピアノ事業が、たとえばシェアハウスでのイベントやマルシェ等の地域イベントと連携し、多世代の交流および人と人の繋がりを作ろうとしているところです。寺ピアノやメッツピアノに来てくれた演奏者たちがシェアハウスのタコヤキパーティに来てくれたり、寺ピアノ後に飲み屋やピアノラウンジ(ミュージカンテあまね)で懇親会をすることは日常的になってきており、これによって寺ピアノ・メッツピアノを起点としたコミュニティが作られてきています。(コロナ禍だと難しい側面は多々ありますが。)
つまり、赤羽ストリートピアノやその関連のストリートピアノは、音楽ライブだけでなく、地域コミュニティや他のまちづくりイベントとの結びつきが強いということです。ピアノ奏者同士だけでなく、また、音楽関係者同士だけでなく、たいていは他に仕事や趣味をもっているピアノ奏者が音楽だけでなく他の側面でも地域の人びとと繋がることができる、というのが赤羽ストリートピアノの特質だと考えています。じっさい、正光寺の寺ピアノでは、けん玉、紙飛行機、バドミントン、お茶を飲みながらの会話などの共同作業を通じて、奏者と非奏者の境界は曖昧なものとなり、より多面的で豊かな交流(コミュニケーション)が実現しています。ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の醸成に寄与する形でストリートピアノを機能させている、といってもよいでしょう。
赤羽ストリートピアノの文化的成果
赤羽ストリートピアノ(ララガーデンイベント・寺ピアノ・常設メッツピアノ)の文化的な成果としては、第1に「看護師みか」さんが十条のミュージックラウンジあまねマスターの関周(せき・あまね)さんによってアマゾンミュージックやi-Tunesなどで配信されたことがあげられます。アマゾンミュージックのジャズ・フュージョン部門で配信1曲目と2曲目がともにベストセラーになりました。これはストリートピアノを起点とした文化的な情報発信が大きな成功を収めたことを意味します。
第2に、ストリートピアノ・イベントで演奏してくれているピアニスト、ヴァイオリニスト、フルーティストなど腕利きのアマチュア・ミュージシャンたちを荒川区や北区など城北地域の他のイベントでライブを行ってもらい、地域文化にさらに貢献してもらっていることです。三ノ輪におけるマルクカラードピアノイベント、宮前Park芝開きイベント、三河島商店街ハロウィンイベント、十条シカの家文化祭などがこれにあたります。
第3に、ハラミちゃんやけいちゃんなど、多くの著名なYouTuberが赤羽ストリートピアノ・イベントや寺ピアノを訪れ、地域の人びとを勇気づけたこともあります。著名人による演奏は演奏そのものの素晴らしさだけでなく、著名人が来てくれたことによる地域のシビックプライドの向上に貢献します。特に、このシビックプライドは、行政でも企業でもない、地域住民ボランティアによる手作りのイベントであるだけに、特に大きなものです。
赤羽ストリートピアノの福祉的成果
つぎに、赤羽ストリートピアノの福祉的な成果としては、第1に、寺ピアノやメッツピアノを通じて、日常的な多世代交流が実現していることです。コロナ禍なので、あまり大きく広報はできないため、寺ピアノのある正光寺に多くの高齢者が来ているわけではないですが、KさんとOさんという高齢者の方が聴き手として日常的にいらっしゃいます。また、人通りの多いメッツピアノでは、しばしば高齢者が子供や若い演奏者に拍手を送ったり、声をかけたりしており、多世代交流が日常的に実現しています。
第2に、演奏者として寺ピアノによく来られていたこの地域に住む40代独身女性のSさんが247houseで調理をし、月に1度の夕食会(「仁科亭ご飯の会」)を行うなど、ストリートピアノを超えたコミュニティづくりが生まれつつあることです。これはシェアハウスとの連携という他にはないストリートピアノの試みです。
2018年から2021年まで3年間の歩み
活動の歩みから。2018年からの宿場町まるしぇ、2019年からのイベントとして赤羽ストリートピアノがはじまった(6月と12月)。2020年と2021年にはコロナ禍に悩みながらも、寺ピアノ・イベントを2020年2月に、10月に常設化(週2開催)、2021年4月には常設メッツピアノを設置。2021年には三層のストリートピアノを赤羽で展開することができた。これはおそらく世界的にも稀なストリートピアノの構成だろう。
2022年の課題