PDA博物館・初代館長インタビュー
11月19日(金)から21日(日)に秋葉原オノデンにて、PDA博物館が開催される。いまや大流行のスマートフォンの前身ともいえる PDA(Personal Digital Assistant)。開催を目前に、主催者である有限会社マイカ代表の井上真花.iconにインタビュー。
―なぜPDA博物館を開催されるのでしょうか?
もともと私がこの業界に入ったきっかけは、1995年に出会ったHP100LXというPDAでした。それからモバイルライターになり、2001年にマイカという会社を起業した後、PDAコンソーシアムという団体を立ち上げるなど全力でPDAを支援してきました。昨年から今年にかけて、スマートフォンが話題になっていますが、私にはこのスマートフォンの中にもPDAのDNAが息づいているように思います。そこで、このことを多くの方に知っていただきたいと思い、今回PDA博物館というイベントを企画してみました。
…というのが表向きの理由ですが、本当のところは、私がふざけて自分が所有しているPDAを重ねて写真を撮影し、「PDAミルフィーユ」という名前でTwitterに投稿したところ、大変多くの方からリプライをいただき、その中で「なんでそんなにたくさんPDAを持っているんですか」と質問され、「PDA博物館を運営しているからです」と答えたことが、きっかけでした。それからほどなく、伊藤栄一郎さん(TRAINというソフトの作者)からたくさんのWindowsCE機が届きました。中には「PDA博物館に寄贈します」とあり、この文章をみて「もうあとには引けない!」と決意した次第です。
―PDA提供者やユーザーの反響はいかがですか?
あまりの反響の大きさに、日々驚いています。PDA博物館の展示会をやると告知したその日から、多くの方からお問い合わせがあり、全国からPDAが届き始めました。今、うちの事務所にあるPDAは、全部で160台強(10/27現在)。まだまだ増える可能性があり、最終的には200台を超えることが予想されます。今では、一度ですべてのPDAを展示するのは難しいのではないかと思い始めています。
―PDAがスマートフォンに及ぼした影響はどのようなものでしょうか?
今、私はiPhoneを使っていますが、使えば使うほど、「これこそジョン・スカリーが語っていた理想のPDAではないか」という思いが強くなります。スカリーがいった「PDA」とは、個人に関する情報が全てその中にあり、必要に応じていつでも取り出せるもの…たとえばユーザーが「おなかすいた」と思ったら、すぐにその近くにあるラーメン屋をリストアップし、「どれにしますか?」と表示するというようなものだったと記憶しています。まさにそういったことが、今、iPhoneで実現していますよね。つまり今のスマートフォンのコンセプトは、かつてPDAユーザーが思い描いていた理想のPDAそのものだったのではないかと。
―井上さんが一番印象に残っているPDAはどれでしょうか?
なんといっても、HP100LXです。厳密にいうと、これがPDAなのかどうかは疑問ですが…。しかし、コンセプト的にはPDAだったといって問題ないと思います。HP100LXは、手のひらにのる小さいDOS/Cマシンでして、私は当時、住所やメモ、読書記録や家計簿などのデータベース、予定表、 NIFTYのフォーラムログなど、自分にとって必要なデータを全てこの中に詰め込んでいました。また、公衆電話を使ってNIFTYにアクセスするなど、ネット上の情報もこれで取り出していました。当時は、これさえあればできないことはないと信じていました。
―いま井上さんご自身はどのスマートフォンを使っていらっしゃいますか?その使用感はPDAとくらべていかがですか?
iPhone4を使っています。前にも書いたように、これこそまさにスカリーが描いた理想のPDAだと感じています。一日PCを起動しなくても、なんでもこれで出来てしまうという安心感、便利さは、かつてのPDAにはなかったものだと思います。しかし、入力という面で考えると、十分とはいえません。文字変換は得意ではありませんし、フリック入力は確かに便利ですが、ハードウェアキーボードがないのは私にとっては少々マイナスです。Tungsten Cやザウルス、HP100/200LXを愛用していた頃は、もっと頻繁に外でテキストを入力していたように思います。また、PDAには必要なデータがすべて保存されていましたので、ネットがなくても困ることはありませんでしたね。逆にiPhoneの場合、電波が届かないところだと何も使えないという不安があります。ネットに情報を預けるのは確かに便利ですが、いつも電波を気にしていなければならないという点で、心の底から安心することはできませんね。
―PDA博物館の見どころを教えてください。
今ではもう目にすることのできないクラシックPDAや、これまであまり知られていなかったレアな端末、びっくりするような改造物など、珍しいもの、貴重なものがいろいろ揃っています。なにより、200台ものPDAを一堂に会し、それぞれを比較できるような機会は、今後あまりないと思います。また、期間中は多くのPDAユーザーが会場に集まると思います。会場にはユーザー交流スペースも設置する予定ですので、集まったユーザー同士でPDAの懐かしい話に花を咲かせることができるでしょう。20日(土)午後には、秋葉原のUDXビル4階で、著名モバイラーを集めたパネルディスカッションを開きます。誰もが知っているあの人やこの人が登場し、当時の裏話や隠れたエピソードなど楽しくお話する予定ですので、この貴重な機会をお見逃しなく!
―会場にお越しになるお客様にメッセージをお願いします。
ずっと秋葉原でPDAのでっかいお祭りをやりたい!と思っていました。皆様のおかげで、ようやくそれが実現できるようになりました。せっかくのお祭りですから、とことん楽しみたいと思います。専用サイトを立ち上げたり、端末の資料Wikiを準備したり、電子書籍版のカタログを制作したり……スタッフ一同、文化祭のノリで盛り上がっております。どうぞ、一緒に楽しんで下さいね。ご来場を心よりお待ちしております。
(DEV's 取材記事/ 2010年11月)
https://gyazo.com/fa8f271748f3b299803f0c7f0fd71d4dhttps://gyazo.com/fe80769ff0dfdd5eb6fba8c0d5f973b2